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叱られた

ようやく病院に行き、気になっていた症状についてドクターに伝える。

わきの下の気になる奴。

ボコボコしていて、しかもものすごい速さで大きくなっている。

もうこれはあれやな。あかんやつやな。

そう覚悟して、化学療法のドクターに伝えると、

「もしよろしかったら、一度見せていただいてもいいですか。」
とおっしゃるので、お見せした。

ドクターと、もう一人ちょっとえらいさんのドクターと、あきらかにがっつり研修中って感じの人と、三人で押し合いへし合いしながら、わたしのわきをのぞきこむ。

そして、三人ともがしばし無言。

なんか、言ってくれんかなあ。

沈黙の後には、乳腺外科のドクターに送り込まれた。

急な診察だったけど、あっという間に呼び出しアプリが、大きな声で診察室に入るように知らせてくれる。

すぐにエコーとなる。

「ふんふん。なるほど。なるほど。なるほどですね。」

ドクターが「なるほど」を連発した後にしてくれた説明によると、あんなに覚悟をしていた再再発ではなさそうだと。
ただし、なぜこんなものができているのかがわからないので、検査をしてみようと。
そこからは、検査の方法についての話となる。
検査方法の選択に、随分と迷っていたドクター。

でも、わたしは、再再発じゃなかったのか・・・という現実に、拍子抜けはなはだしく、ドクターの話も半分くらいしか聞いていない。

まあなんにせよ、まだしばらくは、今の生活が続けられるんやなと。

仕事もやめる覚悟だったのが、まだ続けることになるんやな。

孫のことも、まだしばらく抱っこできるんやな。

そう思ったら、一気に虚脱感におそわれる。


と、ここまでの経過を友人に報告する。

あんなに覚悟をしていたのに、まったく拍子抜けやったわ~。
一応検査は受けるけど、再再発の可能性は低いんやって~~。
膝カックンやわ~~。

そんな内容をラインで送った。

すると、友人からすぐに返信が届いた。

「また、身体のことで、覚悟決めなあかんくらいの不安を抱えてたんやね。
それやのに、家族のことなど、いろんなことを背負おうとして、自分は身体のことで不安になっているのに、そのことは、誰にも伝えてなかった?自分のことは後回し?」

「わきの下の不気味なものの原因は、ストレス以外のなにものでもないと思うなあ。
免疫が働きすぎて、サイン出したんかも。
ちょっと無理しすぎちゃいますか。いくら私らでも、働かせすぎたらまいりますわ。私らしゃべられへんから、不気味なものを作ってサインだしましょか。ここまでビビらせないと、わかってくれへんやろ。」

と、「はたらく細胞」風な表現で、誰にも伝えずにいたことを叱られた。
さすが看護師でもあるその友人。
身体のことも、心のことも、そして私のこともわかっている。

そして、しっかり叱ってる。
怒ってるじゃなく、叱ってる。

もっと家族のことを信頼してもいいんとちゃうか。
もっとまわりの力を借りてもいいんとちゃうか。
家族の立場からしたら、あまりにも悲しいで。


ほんで、最後に、

わたしらの世代の課題かもしれんけど、
なにかあれば、お互いに相談しよな。
というか、吐き出して楽になるのであれば、そうしよ。

使い古された言葉やけど、一度しかない人生。
真に迫ってきたいまやからこそ、毎日を大切に幸せに過ごしたいね。

と、あった。


叱りながらも、「言うてえなあ。言うてや~。」って気持ちが、ぐいぐいと伝わってきた。

ありがとうな。

ほんでごめんよ。

ホンマ、逆の立場やったら、やっぱり寂しいよな。

かと言って、次から何でも言うなんてこと、おそらくできへんのがわたしなんやけど、でも、言うてくれた言葉は忘れへんからな。



ずっと行きたかったパン屋さんに開店前から押しかけて、店内でイートイン。
駐車場もないし、ちょっと遠いからと敬遠していたけど、でも、ずっと行きたかったお店。
自分で自分へのお疲れさんてことで、思いきって行ってきた。

美味しそうなパンを使ったサンドイッチ。
夫とそれぞれ違う種類のものを注文する。

お店の人が、
「シェアされますか。それなら、半分にカットしますよ。」
と声をかけてくれた。

夫の顔を見ると、口は「お」の形になっている。
たぶん「おねがいします。」やろな。

そうはさせへんで。
ここまで一人で悶々としてきてん。
このサンドイッチも、1人で最後まで食べきるんやからな。

「いえ。そのままで。一人でがっつりといただきます。」

夫の寂しそうな目が、めっちゃ面白かった。

いつか、私の口の形が「お」になって、シェアをする日はくるんかなあ。


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