
コスパ タイパ 竹生島
友人から、初詣の写真が送られてきた。
琵琶湖の湖中にある 竹生島宝厳寺。
そこに行くには、湖岸の港から、30分ほど船に乗らなくてはならない。
湖岸から見えてはいるが、決して近いわけではない。
考えてみたら、よくそんな場所に、お寺を開こうなんて思ったもんやなあ。
滋賀県に住んでいながら、まだ一度も竹生島には行ったことがない私。
どれどれ、どんなところなんや?
なんでも、聖武天皇の夢枕に立った天照大神が
「江州の湖中に小島がある。
その島は、弁財天の聖地であるから、寺院を建立せよ。
すれば、国家泰平、五穀豊穣、万民豊楽となるであろう。」
とお告げをされたらしい。
それを受けて、聖武天皇は、僧行基を勅使としてつかわし、堂塔を開基させたのが始まりらしい。(竹生島のHPを参考にさせていただきました。)
その後も、天皇の行幸は続き、豊臣秀吉とも強い関係を持ち、桃山時代の影響を受けた遺構が移築されているらしい。
なるほど、そんな歴史があったんか。
湖中にある島といだけでも、かなり興味深く、しかも船で乗り込むとなると、私としては、うずうずしまくる。
おもしろそうじゃないか。
ならば、さっさと行けよって話だが、滋賀県に引っ越して四半世紀以上が過ぎるのに、いまだに上陸経験ゼロ。
それには、理由があるのである。
ちゃんとした理由があるのである。
そう。
あれ。
「カワウ」である。
竹生島は、カワウの全国レベルで最大規模の繁殖地であるらしい。
「カワウ」と「自然」と「人」との共存をどうはかっていくのかという問題は、出没数が増えた現代の熊同様に、考えていかなくてはならないんやと思うけど、
私としては、ただただ、「カワウ」のフンが怖いのである。
そもそも、カワウのフン害は、森林破壊につながる、大きな問題の一つである。
集団で営巣する鳥らしいので、そりゃあ、フンの量もすごいんやろうと思われる。
もちろん、フンがいっぱいというのも嫌である。
でも、もっと嫌なのは、フンが頭に落ちるかもしれないという恐怖。
それが、ものすごく怖いのである。
まだ、かわいらしかった(ほんとは、ちっとも可愛くなくて、ちょっとひねてた感じやってんけど。)高校生の時に、自転車で信号待ちをしていると、いきなり頭に衝撃を受けたことがあった。
何かを投げつけられたのかと思い、あたりをキョロキョロしても、誰もいない。
うんと離れたとことに、同じクラスの男子が、こっちを見て立っていた。
あいつか?
私に、何か投げつけたんか?
授業中に、隣の席で、あまりにもまぬけなことを言うので、めっちゃバカにして笑い飛ばしたのを、恨んでたんかなあ。
あの時、結局、先生に怒られたんは、あいつだけやったしなあ。
でも、そんなことしそうにないよなあ。
げんに、今も、なんとなく目が合ってるし。
物をぶつけた相手を、そんな目で見いへんやろうしなあ。
いったいなんなん?
そう思いながら、何気に髪の毛に手をやると、何かがべちょりとついてきた。
べちょり。
べちょべちょり。
手を見ると、ドロッとした、黄色のような白のような灰色のような、いろんな色がマーブリングされた、あんかけうどんのあんのようなものが、ついている。
なんなんや?
これ?
しばし、ぼーぜん。
そんな私の前を、2羽のつばめが、スーイスーイとカーブを描きながら飛んでいく。
ようやく、気がつく。
こいつらやな。
こいつらが犯人やな。
そして、このあんかけうどんのあんは、こいつらのフンやねんな。
なんやて~~~。
なにしてくれるんや~~~~。
少し前に読んだ小説に、雨戸の戸袋にツバメが巣をつくり、そのせいで、ダニが家の中に持ち込まれ、家族中が大変なことになったというシーンが描かれていた。
妙に、そのシーンが心の中に残っていて、ツバメにはダニがついているということが、大きくインプットされていた私。
てことは、このフンの中にも、ダニが???(フンの中にもダニがいるのかどうかは、確認したことないねんけど。)
私の髪の毛にも、ダニが???
そこから、私の身体中にもダニが???
もう、そう思い出すと、絶叫しか出てこない。
いや。
絶叫はしなかった。
さっきの男子が、こちらに近づいてきていたから。
なんとか、彼に気づかれずに、この場を立ち去りたい。
そうでなければ、今度は、私がダニだらけ女として、バカにされ、大笑いされることになる。
急げいそげ。
自転車のペダルに足をかけた私は、全速力の立ちこぎで家に戻り、風呂に飛び込んだ。
頭を、ごしごしガシガシ洗いまくった。
シャンプーのポンプを、何回も押しまくった。
身体も、あかすり?かと思うほど、こすりまくった。
おかげで、ダニによる被害を被ることはなかった。
という、たった一度の、そんなかわいい思い出が、いつまでもトラウマとなって残っている。
公園でお弁当をねらうトンビに対しては、果敢に戦いを挑むのだが、フンを落とされるかもしれないという思いがチラッとでもよぎると、もうあかんのである。
いきなり、弱腰になる。
そして、トンビに食べ物を奪われてしまう。
そんな私が、竹生島に行くのは、ありったけの勇気をかき集めても難しい。
「カワウ」の繁殖の時期とずらして、入島すればよいのやけど、それすらも二の足を踏んでしまうのである。
もしかしたら、一羽くらい、どこかに残ってるかもしれへん・・・。
そんなわけないのに・・・。
「カワウ」にとっても、竹生島にとっても、滋賀県にとっても、大事な「カワウ」の問題やのに、こんなしょうもない理由で、ガタガタ言って申し訳ない。
それにしても、である。
天照大神のお告げであったとしても、豊臣秀吉が権力ではばをきかしてたとしても、湖の中にある島に、建造物を造るだなんて、なんてすごいことを、昔の人々は実現してきたのやろうか。
いちいち、船で物資を運ばなくてはならない。
しかも、こんもりとした島なので、平地ではない。
そのうえ、大事な建造物であるから、ぞんざいに扱うこともできない。
悪条件しかない。
それでも、必要やと思ったら、実現してしまうんやなあ。
いやいや。それはないですよ。
む~り~。
なんて、誰も言ったりせえへんかったんやなあ。
そんなこと、思いもしいへんかったんやろうなあ。
コスパ とか、タイパ とか言ってる現代の様子を知ったら、いにしえの人々は、なんて思うんやろう。
ばっかやろ~~。
手間を惜しむんやない~~~。
そう言わはるやろか。
ついつい効率を求めてしまいがちな日々を反省するためにも、一度、意を決して竹生島に足を踏み入れんとあかんなあ。
帽子と傘は必須。