【キャラ分析】『いもいも』の氷室舞と『エヴァ』のアスカの比較人間学
本記事では、『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』(以下、『いもいも』)のキャラクター、特にサブヒロイン「氷室舞」について分析します。
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本記事は、「徹底解説!『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』」の第5回です。第1回はこちらからご覧ください。
また、『いもいも』のあらすじを図解した第2回はこちらからご覧いただけます。
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『いもいも』は「古いタイプのハーレムもの」?
三葉「『いもいも』のキャラについてあーだこーだと考えていたんですよ」
清水「ええ」
三葉「そうしたらちょっと面白いことに気づきまして」
清水「ほぉ、一体何ですか?」
三葉「ええ、まずは女性キャラの一覧を作ってみたのでご覧ください」
清水「ふむ。ハーレムものらしく華やかですね」
三葉「『いもいも』にはこの8人の女性キャラが登場するわけですが……みんなグイグイ来るタイプなんですよね」
清水「ああ、確かに」
三葉「祐に対する態度がとにかく『積極的』で『攻め』!」
清水「ふーむ」
三葉「神坂姉妹の姉・秋乃は初登場時こそおしとやかで、例外的に大人びたキャラ、貞女タイプかなぁなんて思っていたのですが、これがとんでもない。祐の作品に感銘を受けると『祐の愛弟子』を自称するようになり、あまつさえ『私は弟子として厳しい指導を受ける覚悟がある。縄で縛られたり、鞭で打たれたり……』なぞと口走っていましたし」
清水「なるほど」
三葉「あれはね、大人しそうな顔をしていますが、実は他のどのキャラよりもド変態というパターンですよ。間違いありません」
清水「いや、それは知りませんが……」
三葉「でね、もう1つ全ての女性キャラに共通していることがありまして……」
清水「ほぉ、何でしょう?」
三葉「ズバリ、『性的に奔放』、『露出狂じみている』ということです」
清水「うーむ……」
三葉「登場するたびになぜか入浴中で、やたら肌色率の高い篠崎。また、名前からして色々アレなアヘ顔Wピース。彼女たちは当然として、一見良識的に見える桜にしても祐の前で突然下着姿になっちゃいますし」
清水「あー、確かに」
三葉「まぁ強いていえば、メインヒロインの涼花、彼女は比較的『奥手』というか『控えめ』というか『常識的』なキャラなのですが……」
清水「ふむ」
三葉「ところがどっこい、物語が進むに連れて涼花もどんどん『積極的・攻め』かつ『性的に奔放・露出狂』に近づいていくんですよね」
清水「うーむ……涼花は祐のことが大好きですからね。舞や桜といった強力なサブヒロインが祐にアピールするのを見て、負けじとアグレッシブになっていくんでしょうねぇ……」
三葉「これが恋の力ってやつですか」
清水「まぁ、そうですかね」
三葉「恋は人を解放的にするわけですね」
清水「まぁね……」
三葉「で、ここまでの議論を整理したのが以下の図です」
清水「ふーむ……右上がやたらめったら混み合っていますねぇ……これはつまり、女性キャラがかぶりまくっているということですよね」
三葉「カニバリを恐れぬ姿は大変潔いと思うのですが……『大人しく、慎ましやかなキャラ』が1人も登場しないのは大変興味深いことだと思うんですよ」
清水「ふーむ……なるほど。確かに、これだけ似たような女性キャラばかりが登場するのは昨今珍しいですね」
三葉「ですよね」
清水「原作者、制作者のみなさんが各キャラの差別化を意識しているからだと思いますが、最近のハーレム作品では『積極的なヒロインから、控えめなヒロインまで』、あるいは『性的に開けっ広げなヒロインから、慎み深いヒロインまで』、バリエーション豊かに登場するのが一般的です」
三葉「ふむ」
清水「但し……一昔前は、比較的似たようなヒロインばかりが登場するハーレムものも少なくなかったと記憶しています」
三葉「へぇ、そうんですか」
清水「ええ。今ほどヒロイン同士の差異が明確ではなかったといいますか」
三葉「そういう意味では、『いもいも』は『古いタイプのハーレムもの』といえるのかもしれませんね」
清水「確かに『古臭い』ともいえるのですが、『様々なキャラが登場するのが当然』となった現代においては、寧ろ『独自性があって面白い』と感じますね」
三葉「なるほどねぇ。そうすると……本作の真逆、ヒロインが全員陰気で引っ込み思案、指先がチョンと触れただけで心臓麻痺を起こすようなハーレムものも面白いかもしれませんね」
清水「うーむ……面白いかどうかはわかりませんが……ユニークなことは間違いないでしょうねぇ。但し、話はちっとも進まないと思いますが……」
【みんな大好き】さぁ、「舞」について語ろうぜ!
三葉「続いて、サブヒロインの1人『氷室舞』についてディスカッションさせてください」
清水「『舞』ですか」
三葉「ええ。いえね、私、三度の飯より気の強い女性キャラが好きでして、本作では舞が一番のお気に入りなんですよ」
清水「ああ、そうですか」
三葉「したがって、もうね、ディスカッションしたいテーマが山ほどあるんですよ」
清水「……お伺いしましょう」
▶ 基本プロファイル
三葉「まずは基本プロファイルを確認しましょう」
清水「『好きなもの』が勝利、『嫌いなもの』が敗北というのが、負けん気の強い舞らしいですね」
三葉「ええ、まったく!最高ですね!」
清水「……テンション高いですねぇ」
三葉「そりゃあ大好きな舞の話ですからね!」
清水「……身長の高さも目を引きますね」
三葉「ええ!文部科学省の『学校保健統計調査』(2018年)によると、15歳女子の平均身長は157.1cm。また、厚生労働省の『国民健康・栄養調査』(2017年)によると、日本の成人女性の平均身長は154.1cm。したがって、舞は相対的に高身長だということがわかります」
清水「……気合を入れて調べてきましたね」
三葉「舞の話ですから!」
清水「……そうそう。『大きい』といえば、胸もなかなかボリュームがあったと記憶しています」
三葉「そうですね。彼女の胸の大きさは1話目から大変目立っていましたが……」
清水「……?」
三葉「いえね、率直に申し上げて……私、違和感を覚えております」
清水「『違和感』ですか?」
三葉「ええ。と申しますのも……勝ち気なキャラの胸のサイズは中~小程度であるべきだと思うんですよ」
清水「ほぉ。なぜでしょうね」
三葉「うーむ……『とらドラ!』の逢坂大河然り、『とある』シリーズの御坂美琴然り、勝ち気なキャラは往々にして胸が小さいからか……いや、それとも単に私にロリコン的な嗜癖があるからか……申し訳ありません。このテーマは一旦保留とさせてください。『勝ち気なキャラの胸はなぜ小さい方がよいのか』……非常に重要な論点ですので、じっくり検討してまいります」
清水「いや……そんなに重要な論点とは思えませんが……」
三葉「清水さんはどう思われました?私同様に違和感をお持ちになりましたか?それともスッと受け入れられましたか?」
清水「いやぁ……まぁ、私は特にどうとも思いませんでしたね」
三葉「……?」
清水「いえね、胸のサイズなんて大した問題ではありませんよ」
三葉「ほぉ……『大きくてもよい。小さくてもよい。そこにあればよい』と、こういうわけですか?」
清水「いやいや。そもそもね、女性を胸のサイズで語るなんて失礼な話ですよ。胸の大小なんかよりも大切なものがありますからね」
三葉「おおっ!何やら妙に高潔ぶったことを言い始めましたね……その『胸のサイズよりも大切なもの』というのは、『心の美しさ』とか『人としての気高さ』とか……」
清水「いえ、顔です」
三葉「……全然高潔ではありませんでしたね」
▶ 珠玉の名言集
三葉「続きまして、舞の名言集です」
清水「『名言集』ですか……」
三葉「舞というキャラの素晴らしさを何とかしてみなさんにもご理解いただきたいと思いまして。それなら彼女の名言を見ていただくのが早いとかな、と」
清水「……なるほど」
三葉「それでは発表いたしましょう!『舞、珠玉の名言!ベスト3!!』」
清水「相変わらずテンション高いですねぇ……」
三葉「まずは1つ目!」
三葉「うーむ……腹にズンと響く名言ですねぇ……」
清水「……」
三葉「これは3話のセリフですね。アヘ顔Wピースが露出度の高いコスプレを披露。祐が驚愕。そして……それに負けじと舞もコスプレ!『いや、どう見ても恥ずかしがってるだろ!』と誰もがツッコまざるを得ないほど顔を真っ赤にしながらも、この強気の言葉。最高ですね!」
清水「……」
三葉「続いて2つ目はこちら!」
三葉「出ました!5話の名言!」
清水「……」
三葉「アヘ顔Wピースに対抗して露出したものの……さすがに胸を露わにするのは恥ずかしかった様子。顔を真っ赤にして『こっ、こっち見んな……』。『いやいや、お前が自分で露出したんだろ!』とツッコミたくなる名シーンですね。マジで最高!天孫降臨!」
清水「……」
三葉「そして3つ目は……こちら!」
三葉「来た!9話の名言!これぞ究極!これぞ至高!」
清水「……」
三葉「もうね、お前、どんだけ祐のことが好きなんだよ、と。それでも『桜ばっかりズルい!』と嫉妬したり、『私も祐と一緒にいたい……』と泣き言を並べたりしないのが舞の舞たる由縁!嫉妬でも泣き言でもなく……『泊めなさいよ!』。これぞ舞!私たちのヒロイン・舞!舞よ永遠に!」
清水「……」
三葉「とまぁね、清水さんが先ほどから白い目で見ているので賞賛はこれくらいにして話を進めますが……いずれも実に素晴らしいセリフですね」
清水「うーむ……勝ち気な女性キャラが好きな視聴者を萌えさせるべく計算されたセリフって感じがしますが……」
三葉「いや、そんな身も蓋もないことを……」
清水「もしくは、エロゲーに出てくる勝ち気なキャラのテンプレ的なセリフっぽいというか……」
三葉「……」
清水「……」
【本題】舞は、『エヴァ』のアスカと何が違うのか?
三葉「さて、それではいよいよ本題、舞の性格について議論してまいりましょう」
清水「承知しました」
三葉「清水さん、舞の性格を一言でいうならば……」
清水「『勝ち気』でしょうか」
三葉「まさに!『勝ち気』、すなわち負けず嫌いということになるでしょう」
清水「まぁ、『ツンデレ』といってもよいのですが……昨今、『ツンデレ』という概念は非常に拡大解釈されており、最早何を指しているのかさっぱりわからなくなっていますからねぇ」
三葉「そうですね。無用の混乱を招きかねないので、今回は『ツンデレ』という言葉は使わないことにしましょう」
清水「そうですね」
三葉「で、そんな勝ち気な舞ですが……清水さんにもう1つ質問です。ズバリ、アニメ界を代表する『勝ち気なキャラ』といえば……」
清水「知名度の高いところでいえば、『エヴァンゲリオン』の惣流・アスカ・ラングレーでしょう」
三葉「ですよね!」
清水「ええ」
三葉「勝ち気界のレジェンド!マスター・オブ・勝ち気!」
清水「いや、そんな二つ名は初めて聞きましたが……」
三葉「舞についてあれこれ考えるにあたって、私、アスカを比較対象に設定いたしました」
清水「ほぉ」
三葉「両者の共通点、そして相違点を考えることで、舞というキャラに肉薄しようと考えた次第です」
清水「なるほど」
三葉「その結果、色々と発見がありまして……以下、これについてお話しさせていただきます」
清水「まったく別のアニメのキャラと比較するというのは面白いですね。承知しました。拝聴しましょう」
三葉「それではまいります」
三葉「つまり、舞とは『幸福な幼少期を送ったアスカ』であり、『エヴァとのシンクロ率が低下した時に、シンジやレイにアドバイスを乞うことのできるアスカ』なのではないかと、このように考える次第です。いかがでしょうか?」
清水「ふーむ……『エヴァンゲリオン』は様々な解釈が成立する作品なので、一概に正解、不正解と判断するのは難しいのですが……なるほど。1つの考え方として面白いと思います」
三葉「これはどうも」
「アヘ顔Wピース」という狂った名前を持つ鬼畜凌辱系イラストレーターについて
三葉「次に、アヘ顔Wピースについてディスカッションしてまいりましょう」
清水「承知しました」
三葉「でね、何を話そうか色々考えてみたんですが、もうこれしかないだろう、と」
清水「ほぉ、何です?」
三葉「『アヘ顔Wピース』という気狂いじみた名前について、です」
三葉「彼女はイラストレーター、それも鬼畜凌辱ものをこよなく愛するイラストレーターであり、それゆえに『アヘ顔Wピース』なぞというペンネームを名乗っているわけですが……いやぁ、実に素晴らしいですね!」
清水「……?」
三葉「もうね、どれだけ鬼畜凌辱ものが好きなのかと!世間の目なぞは一切顧みず、『私はこれが好きなんだ』、『これが私の人生なのだ』と堂々と主張するキャラ……実に格好よいですね」
清水「確かに、主人公よりも遥かに格好よいキャラですね」
▶ 狂気のペンネームを持つ女性キャラ
三葉「ところで清水さん。『アヘ顔Wピース』に匹敵する狂った名前を持つ女性キャラといえば、どのようなものがあるでしょうか?」
清水「そうですねぇ……まずは『エロマンガ先生』のヒロイン・和泉紗霧のペンネームでしょう。ズバリ『エロマンガ』!」
三葉「ストレート直球180kmという感じですね。実にインパクトがある」
清水「ちなみに、彼女は中1女子で、引きこもりで、エロイラストレーターで、配信主で、ブラコンです」
三葉「うーむ、設定モリモリですねぇ……素晴らしい!」
清水「また、『こみっくがーるず』の色川琉姫が正気の沙汰ではないペンネームを使っていましたね……その名も、『爆乳♥姫子』!」
三葉「ほぉ!これまたいい具合にイカれてますね」
清水「ちなみに貧乳キャラです」
三葉「ははぁ……」
清水「……」
三葉「……」
清水「……」
三葉「……何というか、男としてはちょっとコメントしづらいですね」
清水「……ええ」
三葉「……それにしても、『アヘ顔Wピース』、『エロマンガ』、『爆乳♥姫子』と、いずれも性的でありながらもぎりぎり下品でないところが素晴らしいですよね!」
清水「えーと……『下品』という言葉の定義に議論の余地がありそうですね……」
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最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
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<コンテンツ>
・3:【ストーリー深読み】なぜ祐はラノベ作家になれないのか?
・5:【キャラ分析】『いもいも』の氷室舞と『エヴァ』のアスカの比較人間学
・7:【物語の仕組み1】秘密があるから距離が縮まる from『いもいも』
・8:【物語の仕組み2】優れたあなたの秘密を知りたい from『いもいも』
・9:【物語の仕組み3】秀才は天才に苛立っている from『いもいも』
(分析:清水、三葉 / 文、イラスト:三葉)
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