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歴史と伝統を受け継ぐ老舗旅館の挑戦
100年企業探検隊 第37話
1829年に創業したこの旅館は、もともと鍋や釜を取り扱う商いから始まりました。当時、地域の地理的な特性から日帰りが難しく、宿泊を求めるお客様の要望に応える形で宿を提供し始めたことが、旅館業の始まりです。その後、正式に宿として営業を開始し、時代とともに地域に根付いた旅館として成長していきました。
長い歴史の中で、この旅館は多くの著名人や文化人を迎え入れてきました。かつて皇室の方々や文豪、芸術家なども宿泊し、歴史ある建物と風情ある景観が人々を魅了してきたのです。また、地元の文化や風習を大切にしながら、時代に合わせたサービスの向上に努めてきました。
しかし、2020年の水害は、旅館にとって大きな試練となりました。大規模な浸水により、館内の設備や家具のほとんどが使用不能となり、一時は営業再開が危ぶまれる状況に。それでも「地域の観光業を支える宿であり続ける」という強い想いのもと、従業員とともに復旧作業に取り組みました。約10か月に及ぶ復旧作業を経て、2021年には仮営業を開始。従業員も少しずつ戻り、旅館の再建が進んでいきました。
再開後は、従業員が働きやすい環境づくりにも注力し、休館日を定めるなど、労働環境の改善を図っています。また、地域観光の活性化にも力を入れ、「夏目友人帳」の聖地巡礼を目的とした宿泊客の誘致や、地元の文化を体験できるイベントの企画など、新たな試みを行っています。
現在、創業から195年を迎え、200周年に向けた計画も進行中です。単なる宿泊施設としてではなく、歴史や文化を継承しながら、新しい時代に適応した宿として成長を続けることが、この旅館の使命です。これからも、地域に根差した「おもてなし」の心を大切にしながら、新たな挑戦を続けていました。
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