100キロの先にあるもの
DA早稲田大学ハリー・ポッター研究会元幹事長
尾山 七海
私はあの時"投げ出した"人間だ。
そんな思いを胸に、100キロという長い長い道のりの中、私は必死で足を動かし続けた。
私が100ハイに参加して得たものを語るためには、まずは過去の挫折経験を語らねばならない。
5歳から14歳まで、実に9年間、私はとあるスポーツに情熱を注いでいた。特に団体部門が好きで、夢は全国大会金賞。憧れの先輩や大好きな同期たちと切磋琢磨する日々は楽しく充実したものだった。
転機は中学受験だった。小学6年生の時、勉強に集中するため約1年間の休みを決意。その甲斐あって受験は無事全勝、晴れて志望校に通えることとなった。
そして1年ぶりに競技復帰を果たしたものの――スポーツの世界は甘くない。1年のブランクはあまりに大きく、同期を見て開いてしまった実力の差を痛感し、後輩を見て追い抜かれた現実に打ちのめされた。今考えると当然の結果なのだが、当時の私には重く厳しい現実だった。
そして私は"投げ出した"。
しかも団体競技の大会直前で、だ。あまりに無責任すぎる。もし過去に戻れるなら「逃げるならやり切ってからにしろ」と往復ビンタをかますところだが、犯してしまった過ちはもう取り消せない。以降5年間、私はこの時の選択を悔やみ、最低の己を呪い、恥じ続けた。自分に自信が持てないでいた。
そのまま大学進学し、5月。先輩のしつこい勧誘に根負けして100キロハイクに参加した。なんか楽しそうかも〜なんて軽い気持ちだったが、正直第2区の時点ですでに参加を後悔していた。なぜなら足が痛いのだ。すごく痛いのだ。まだ序盤も序盤、本番はこれからだと言うのに、足が、痛いのだ。びっくりするほど痛い。本当に痛い。甘ったれの私の頭では「リタイア」の文字が踊り狂っていた。
とはいえリタイアは決して悪いことではない。それに今回はあの時とは違う、誰に迷惑をかけるでもない。自分の問題だ。だがもしここで棄権したら、私はまた"投げ出した"側の人間になってしまう。
それは嫌だった。
そこからはもう、とにかく必死で足を動かした。絶対歩き切る。その一心だった。
先程ネガキャンしてしまったので一応フォローしておくと、第3区あたりから足の痛みはそんなに気にならなくなってくる。個人的には2区が1番地獄だった。その後のナイトハイクは夜風が心地よかったし、後半は他の参加者とも打ち解けてきて、歩きながらいろんな話ができた。それだけでも100ハイに参加する価値はある。
そこからはもうあっという間だった。早朝叩き起された怒りや眠気、小指の違和感(帰宅して確認したらトンデモグロ画像になっていた)、鎮痛剤の飲み過ぎによる腹痛との戦いなどもあったが、そんなの吹っ飛ぶくらいの達成感がゴールで待っている。過去の逃げはなかったことにはならない。でもあの瞬間の自分は確実に、自分史上最高難度の挑戦を"やり切った"のだ。この事実は今の私に繋がる大きな自信となってくれた。
皆さんには"投げ出してしまった"過去はあるだろうか。授業を切った?バイトを無断退職した?せっかく買ったゲームを途中で放置している?何でもいい、少しでも思い当たることがあるなら、ぜひ100キロハイクに参加してほしい。100キロは決して簡単に歩ききれる距離ではないけれど、でももしこの挑戦を乗り越えられたなら、そこには絶対、昨日までとは違う自分がいるから。
今回参加者による100ハイプレゼンということで、イベントそのものの魅力はきっと他の人が語り尽くしてくれると信じ、私は達成感をテーマに書いてみた。これほど大きな達成感を得られるイベントは他にそうそうない。挑戦好きの方、お祭り好きの方、ドMの方、そして自分を変えたい方。
みんなで100キロ、歩き切ってみませんか。
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