小者も歩けば100になる

はじめまして!商学部三年、山小屋研究会幹事長の田村和之と申します。

やまけんは登山サークルですので、地上を歩くのはめっきり苦手です!なんなら山を歩くのもべつに得意ではありません。やまけんは登山初心者大歓迎!


100ハイには、学生会館でよく見かけるような、早稲田を盛り上げてしまうような、別次元の、大物のオーラを纏った本当にイケてる人たちがたくさん参加されています。小心者の私は、ついついその眩しさに憧れと悔しさを抱いて萎縮してしまうようなダサい男で、他のnoteを書かれている方々とはいっさい違い何者でもないですが、せっかく体験記を書く機会をいただきましたので、実に一般的な、小物の私の思い出を書いてみようと思います。何者でもない読者の方々の、100ハイへの参加の励みになれば喜ばしい限りです。


なるべく、100ハイに参加したことのない読者の方も、あれ?楽しそう…参加してみたいかも…、なんて勘違いできるように、愉快で軽快な体験記にできるよう務めます!よろしくお願いします(^.^)

まず、前日から最悪の気分でした。

第60回本庄早稲田100キロハイク開催の前日、関東は台風2号による豪雨に曝されていました。朝が苦手な私は、スタート地点である本庄早稲田に遅刻するわけにはいくまいと、やまけんの友人もとい共に歩く戦友のお家をお借りし、熊谷にて前泊しましたが、ちょうどお家に伺うまでの時間帯が雨と風のピークで、ただでさえ少なく絞った荷物は濡れ、靴は濡れ、靴下も濡れ、これはもうすでにリタイアかなと思いました。こんな大雨だけど

決行かよ、と昂揚会員の新井蓮くん(襟足の長い無害そうなツラの男。実際に無害。)にボヤくと、だから、かな、と狂気的な思想に魂が震えます。じゃあ帰るわけにはいかないよ。彼は青い服で免許証の写真撮影にウキウキで望み、生首ボケをするような非常に気持ちの良い男です。


楽しそうにコスプレ制作する一同

まだそこそこ降る雨を体で受けながら、駅から地味に離れたスタート地点まで早速歩いて向かいます。靴が前日の豪雨でびしょ濡れなのと若干の睡眠不足でややキレていました。100ハイ中ずっと感じましたが、やっぱり人間にとって、睡眠は大事ですね。一日目夜はもちろん快適に眠れる環境ではないので、前日にたっぷり寝ることが100ハイの攻略において非常に重要ではないでしょうか。今年はたくさん寝てから挑みます。いまからいっぱい寝る練習しよう!

一日目

スタートから暫く、一区目はゴキゲンでした。周りのみんなもコスプレなんかしちゃって元気だし、体もどこも痛くない。なにより開会式でカリスマな諸先輩方が参加者の魂を燃え上がらせてくれるのです。イカした人たちだなあ…とずっと遠くの存在に憧れを抱きながら歩く余裕がまだまだあります。


二区目からなにやら非常に危険な香りがしてきました。足が棒になるなんて、生易しい表現では足りません。足が点になります(?)景色も変わりません。ただただ山道が続きます。100ハイ何十回目の参加ですとかいう狂気のベテランおじさん、ベテおじに、ヒャクハイはね、休憩したら終わりだよ、とアドバイスをいただきましたが、コンビニを見つけてしまえば休憩するのは、徒歩人(カチンチュ)なら仕方のないことです。100ハイはおよそ人として成立している精神状態を脱する必要があるのかもしれません。いまからいっぱい人として成立している精神状態を脱する練習しよう!


三区目、二区の休憩所を運営のみなさまが撤収するにあたり到着後すぐ追い出されてしまった私たちは、辺りが暗くなるのと同じくして、気分も、これからの未来も、いっそう暗いものに感じました。陰湿な私は、名前も知らない他の参加者の方を追い越すことで残り少ない平常心を保っていました。赤信号で止まらせられると彼らにまた追いつかれ、追い越されるので、追い越す前より余計に苦しくなります。こんな性格の悪い人間は歓迎されないようにこの世界はできています。赤信号とは種の選別のために存在するのです。100ハイには清く正しい心が必要です。いまから清く正しくいる練習をしても齢二十歳前後の私たちにはもう手遅れなので、諦めよう!


いよいよリタイアも頭によぎったころ、他サークルから、置いていかれてしまったので一緒に歩いてもいいかと一人の一年生の男の子が声をかけてくれました。新鮮さは非常に重要です。彼が話し相手になってくれて、ささやかな刺激になってくれたおかげで、なんとか本日の宿(武道場)に辿り着くことができました。


離れ離れになっていたやまけんのメンバー数人とも感動の再会をし、全員の安全を確認しました。みんなすごい。極度の疲労を癒すため、眠りにつこうとしましたが、やまけん会員のある男のいびきがあまりにもうるさいせいで、なかなか寝つけませんでした。建物が揺れるくらいの轟音でした。疲労でピリピリしている他の参加者の方が、呑気に大いびきをかいて寝ている彼に、比喩ではなくほんとうに殴りかかりそうだったので、友人を守るためではなく誰かが不用意に罪を被ることを避けるため、運営の方にお願いをし、彼が寝るためだけの別室を用意していただきました。最初はそんなものは用意できないと門前払いを喰らいましたが、一度いびきを聞いてもらったら、迅速に対応してくださいました。それくらいエグい音量。しかし彼には恥をかかせてしまいました。あのときはごめんね。こんど飲み行こうね、

二日目

一度の質の悪い睡眠で体が全快するわけもなく、全然限界の状態から二日目はスタートします。「昨日やったことをいまからもう一回やる」というシンプルかつ恐ろしい事実に、絶望を感じるより先に怒りを覚えました。無理すぎるだろ。私は情けない人間ですので、所沢キャンパスでなぜか開催される恒例の運動会に参加しませんでした。のうのうと体験記を書かせていただいておりますが、あれに参加しなかったやつがなにをやっているんだと、今、情けない気持ちでいっぱいです。今年こそは運動会に全力で参加して、強くなった私を、私自身に見せてやりますよ。人は過去としっかり向き合い、また前を向くことで強くあれるのです。


五区、青梅街道は、まさしく地獄です。ただひたすらでっかいでっかい一本道を歩きます。いまだに「青梅」という字面をみると寒気がします。後遺症でクリープハイプの曲を一曲聴けなくなってしまいました。非常に交通量が多く景色に彩りはありますが、面白くない道がずっと続きます。足を引き摺るようにして休憩所の東伏見キャンパスに落ち着きました。休憩所に行くにあたり数百メートル余分に歩くことになるのですが、それにすら命を刈り取られそうでした。休憩所テメェがこっちにこいよ。


六区、最後です。だんだん、普段の生活圏を感じ、ゴールという可能性がようやく視えてきます。鷺ノ宮あたりで、西武線ユーザーの後輩が、高田馬場まであと一駅ですよ!と嬉しそうに教えてくれました。一同歓喜、勝ちを確信しましたが、ぬか喜び、そいつは大バカなので、急行に乗った気でいたのです。実際は七駅。◯してしまいそうでした。


すき家のある角を右に曲がり、BIGBOXが視界に移ったときの感動は、何にも代え難いものでした。あんなにいつも汚くてうるさい高田馬場が、キラキラ煌めいていて、冗談ではなく楽園に見えていました。体の疲労のことなんてみんな忘れて、走って我らが早稲田に向かったのを今でもよく覚えています。まだ走れたのかよおれの体。人って不思議ですね。


ゴール直前、BIGBOX。楽園に見えたらしい。

閉会式の行われる10号館前で、昨夜共に歩いたあの男の子を見かけたので、肩をバンバン叩きながらめちゃくちゃアツい再会と祝福の言葉をかけてしまいました。後になって気づきましたが、私にバシバシされていたその人は昨日の子とはちょっと似た全く違う人だったように思います。どうにも反応が悪かったのはそのせいか…。困惑した表情でこっちを見ていたけど、後悔や恥ずかしさは感じていません。この行為が許されるだろうくらい、達成感で脳がガン極まっていたし、本キャンがそういう雰囲気に包まれていました。ほんとうにすみませんでした。


私は情けない人間ですので、後輩の女の子に荷物を持ってもらいながら帰りました。それくらい足が痛くて辛かったはずなのに、今年の100ハイが楽しみなのはなんででしょうか?ゴールしたときに感動するから、達成感があるからなんていう理由より、もっと大きななにかがあるような気がしています。


一緒に歩いた戦友たち。オレンジの服を着たガングロが筆者。

なんで歩くの?

なぜただ100キロ歩くというだけの狂気のイベントが早稲田の三代行事に並べられ、六十年も続いているのか。

人には年齢や時期に応じてやるべきことがあるのだと最近やっとわかるようになりました。受験勉強をして物事の学び方を覚えるとか、部活で毎日健康的に体を動かすとか、就活を通して自分とは何者であるかを振り返るとか、形態等の改善の余地があるにしても、あるべきタイミングにうまく機会が設置されているような気がします。これらの正しさは、これらが長い間多くの人によって行われてきたという歴史がそれを証明していると思います。じゃあ100ハイは、今の、早稲田に通う私たちにとって、やるべきことではないのでしょうか。早稲田で共に学ぶ者として、人として、100ハイからは何かとっても大切なものを得ることができます。何を得、学ぶかは、参加者の数だけの異なる旅があるぶん、様々であると思います。私は、まだまだここに書ききれなかったたくさんの思い出のある旅になり、ひたすら事実に向き合い諦めない魂を学びました。100キロを歩ききることができた俺なら、と今後自分を奮い立たせる材料にするには十分なくらい、100キロとは重みがあります。逆にいえば、ただ100キロすら歩くことのできない人間に一体なにができるというのか!早稲田生、早稲田にまつわる全員に与えられた絶好の機会です。ぜひ参加してみることをおすすめします。


ここまで、長い間お付き合いいただき、お読みいただいて本当にほんとうにありがとうございました!

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