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読まれないメール(2023/07/27)

 出張から戻ると、オーウェン氏が「百さん、あのメールの件はどうしましょう?」と言ってきた。何のことだかさっぱりわからない。

「何のことだっけ?」
「昨日の、注文キャンセルの件。いつもの実績メールの最後の方に書いといたやつです」

 オーウェン氏は毎日、その日の実績をまとめてメールで送ってくれる。ただ、その内容は別段必要のない情報——他からも入ってくる——なので、いつもその読まずに削除していた。
 さすがに当人へそう云うわけにもいかないから、「それは見落としていたよ。失礼したね。ところで、いつも定型文で定型フォームを送ってくれるメールにたまさか違う用件を追記されても、見落としてしまうからね。向後は別個のメールでくれたまえ」と言っておいた。
 するとオーウェン氏は「あのチャットで送るということですか?」と言った。チャットとは、一時期自分がリモートワークをしていた頃に用意したGoogleチャットで、完全出社に戻った今も、外出時の “電話をするほどでもない、ちょっと急ぎの連絡” などで使っている。
「うん、チャットなら見落とすことはないね。急ぎでなければメールでもいいけれど、1メール1用件でくれたまえ」
「あのチャットで送るということですね」
「…まぁ、それがいいだろう」
 どこまでも趣旨を理解しない。


よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。