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ラーメンと言葉
二十年ばかり前に京都で天一に入った。研修の昼休みに行ったのである。
あれが天一の本店だとずっと信じていたけれど、最近天一について調べていたら、本店は他の店舗とは別格の美味さだという人がある。自分はそんなふうには思わなかったから、事によると本店ではなかったのかも知れない。それでGoogleマップで写真を見たら、果たして場所が違うようだった。
全体、チェーン店で本店ばかりが美味いというようなことが本当にあるのか判然しないけれど、確認のためにも本店へはいずれ改めて行きってみたい。もっとも、行きたいのは本当だけれど行列店のようだから、少々面倒な気もする。
あの時の研修は甚だ退屈で、自分は最初からついつい居眠りをした。それで講師役のえらい人に終始目の敵にされ、随分嫌な目に遭った。
居眠りは悪かったが、先方も話を聞いてほしければこちらが聞きたくなるような話し方をすればいいので、それをせずに相手ばかりを悪者にするのは、あんまり真っ当ではない。
おまけにこの講師氏の使う関西弁が、どうも耳につく。いかにも不自然なのである。これはきっとネイティブではない。全体、ニセ関西弁を使うようではろくなものとは思われない。この人はきっと東国の生まれだろうと当たりをつけた。
後になって本社の甘木さんに会ったので、あの講師氏のことを訊ねてみた。
「ああ、あの人は確か、元々新潟だよ」
「やっぱりな。あの野郎、どうせニセモノだろうとは思っていたのさ」
「何かあったのかい?」
「研修で居眠りしたら、目の敵にされた」
「それはしようがないだろう」
「は?」
「君、それは居眠りするのが悪いぜ」
「そうかな?」
「そうだよ」
「……」
「……」
「バーカ」
「ぷっ」
それから半年ばかり経ってやっぱり甘木さんから、講師氏が亡くなったと聞いたので驚いた。
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