【前編】ゴールデンカムイの尾形百之助について
私の大好きな漫画『ゴールデンカムイ』の尾形百之助について語ろうと思います。
原作、アニメ、実写、そもそもタイトルしか知らないよという方にこそ見てもらえたら嬉しいです。
さらに、オタクだから存在は知ってるけど、キャラデザでみんな沼るんだろ?!くらいの認知度高めの人にも見てもらえたら、もっと嬉しいです。
※スマホ閲覧推薦
※自分の解釈や知識ベースの語りなので、正解ではないということ、また、詳しく知りたいことに関してはwiki参照お願いします。
※容赦なくネタバレ出ます。今後読まない予定の方向けにも書いていますので、逆に読んでみようかな!という方は、了承の上見ていただけると幸いです。
簡単に私の自己紹介をしますが漫画(クライム系、時代劇ジャンル特に)大好き。
ちなみに、ゴールデンカムイでは尾形とかなり僅差で鯉登が好き。
これまで読んだ漫画やドラマ、映画に好きなキャラはたくさんいますが、好きな気持ちを文章にしたいと思ったのは尾形が生まれて初めてです。
まずこの時点でどんだけ沼やねんと思ってもらえると嬉しい。
X(twitter)にて『尾形にハマるというか、牡蠣にあたる感じで尾形にあたるって表現が近い』というつぶやきを見ました(今回記事を書くにあたってその方のつぶやきを拾えず引用できませんでした…残念)
まさしくそんな感じ。
【1】漫画『ゴールデンカムイ』
『ゴールデンカムイ』は、集英社発行の週刊ヤングジャンプで連載されていた人気漫画です。(2014年〜2022年)
同じく集英社発行の週刊少年ジャンプが漫画オタクの金字塔であることは、サブカルに強い方ならわかるかと思います。
近年看板漫画のなかったヤングジャンプで、連載時圧倒的に人気で、雑誌の発行部数を伸ばしていた漫画でした。
ストーリーをかなりざっくり言うと、明治末期の北海道を舞台とした、アイヌ埋蔵金のグループ対抗争奪戦です。メインとなる頭が大体陸軍の日露戦争上がり(生き残り)の男達です。ヒロインのアシリパはアイヌ語と日本語のバイリンガルで、父親が埋蔵金の在処を知っていたが作中で亡くなってしまう。その為、娘のアシリパに残された記憶を辿り埋蔵金を見つけようという話です。
埋蔵金を見つけた後にある目的は、登場人物それぞれ違います。そのためグループ内での裏切りもあり、メンバーが入れ替わります。
ゴールデンカムイを読了している自分の解釈として、『人は家庭環境によって、人格やその後の人生が大いに左右されるということ』があります。
そんな悲しいこと言うなよと思う人もいるかもしれませんが、自分のこれまでの体験もふまえ8割型そうかなとわたしは感じています。
作中でもこれはかなり描かれている。
そしてこれが尾形を語る上でも大事なベースになります。
さらに作品として私が良い!好きと思えることも先に書きます。
あくまで個人の解釈ですが、そういう漫画なんだなぁと覚えておいていただけると嬉しいです。
①女性の社会進出について描いていること
②日本の郷土文化についての描写が細かいところ
③人間の心の闇、差別、貧富の差についての描写がうまいこと
④文明開花後に軍事的にも世界に進出していった時代の日本にしかない、和洋折衷な服装、食事、文化が楽しめること
【2】尾形との出会い
私とゴールデンカムイの出会いは尾形との出会いでもありました。
2018年秋頃、イラストSNSや好きな絵描きさんのX(twitter)の巡回で尾形を発見し、まず一目で「ぅわ好き」となりました。
ここでやっぱりキャラデザかよ!と思った人に声を大にして言いますが本当にその通りです。(…)
尾形に関してキャラデザ問題はその沼の入り口付近でしかありませんが、たぶん一度見たらなかなか忘れないって顔をしてて、わたしが特に好きなのはまず目でした。逆にこの目が不気味で近寄れなかったナ〜というオタクもいると思います。ニッチ路線苦手な方とかは嫌厭するかもね。でもこの不気味さが、ゴールデンカムイのシリアス演出には欠かせないスパイスでした。
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小さい頃に見た絵本で、藤城清治(影絵作家)と滝平二郎(版画作家)の絵がめちゃくちゃに好きだった私は、この尾形の独特な切り絵みたいな顔とダークな世界観にやられてしまったわけです。2人の先生の紹介、作品は下に載せます。ちなみに2人とも大正生まれで、モチモチの木で有名な滝平二郎は、幼少期に尾形が育った茨城出身です。(たまたまだけど)
昇仙峡 影絵の森美術館
藤城清治 プロフィール
https://www.kageenomori.jp/contents/writer/fujishiro/
絵本ナビ 滝平二郎 プロフィール
https://www.ehonnavi.net/sp/sp_author.asp?n=177&spf=1
個人的に尾形の好きなところ
・キャラデザ
顔、軍服、デフォルメでニャンコにできる猫属性
・境遇
暗い過去、そこから形成された今の人格
・カッコいいのに可愛い
華麗にスナイパーしたあと、獲った物を持ってきて、鼠を獲った猫みたいに褒めて!したりとかギャップがすごい。なんだお前。
それでは次に簡単に尾形のプロフィール。
【3】ざっくり外枠としての尾形百之助
尾形百之助(おがたひゃくのすけ)
キャッチコピー:孤高の山猫スナイパー
CV:津田健次郎
実写俳優:眞栄田郷敦
誕生日 1/22 (生年不明)
作中年齢 推定20代後半
出身 東京府生まれ、茨城育ち
好きなもの あんこう鍋
所属 帝国陸軍北海道第七師団歩兵第27聯隊(上等兵)→脱走兵
家族 祖父、祖母、母、父、異母兄弟の弟
※祖父母は行方不明、他は逝去
こんな感じです。
キャラクターキャッチコピーの『山猫』は、尾形の母親が芸者であることからきていて、作中ではあくまで見た目が猫っぽいからという理由ではありません。
そして、これは良い意味ではなく尾形の所属していた第7師団内の影口であり皮肉なんですね。ここ大事。
山猫=芸者の隠語に関しては以下URL先に詳細あります。
【レファレンス協同データベース】
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000247161
性格や人格に関しては読み手によると思いますが、基本的にプライドが高く普段は無口、射撃の腕がすごく、一騎打ちなど、バトルでテンションが上がりやすく饒舌になります。
軍隊生活ではいい感じに猫をかぶっていましたが、素としては「〜だぜ」「〜だろ」「〜しろ」などという、結構男くさい喋り方をします。
ただ、かと思えば年上のおじいちゃん達と一緒にいると、火鉢の近くに静かに寝転がって丸くなったりする。なんかそういう一面もあります。可愛い。
設定として明確にはありませんが、作中の戦闘時の尾形のモノローグ(心の声)等からみるに、知能が高く自らで率先して新しいことを習得し、社会でその術を使いこなし生き、ある程度集団でも主導権を握る力がある。社会的に何かをこなすという部分に関しては、かなりスペックは高いと思われます。
物語序盤(初登場時)では作者野田先生もあまり尾形について深い構想や設定はなかったそうで、深い設定を持たせようとなったあたりに脱走兵となり、さらに尾形がどこのグループにも所属せずフリー(単身)で金塊争奪戦に参加することになったあたりから、本誌を読むファンの中で尾形の人気が上がったようです。
脱走兵となった尾形は、坊主からツーブロックになり、さらに顎を負傷→手術の縫合痕でかなりワイルドになったので、キャラデザの変更によりファンが増えたこともあると思われます。
まあこれがめちゃくちゃ似合う。
超カッコイイ。
【4】尾形の相棒、三八式(サンパチシキ)
尾形を語る上でかかせないのが、三八式歩兵銃(サンハチシキホヘイジュウ)です。
三八は明治38年軍採用の、サンハチです。
作中では尾形自身はこれをサンパチシキと呼んでます。この呼び名が、正式な読み方ではありませんが一般的だったようです。
まずは本体を見てください。
引用:Wikipedia
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/三八式歩兵銃
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近代初頭開発の銃も、あの織田信長の長篠の戦いで見るような、まだ本体の半分以上が木製なんですよ、なんかエモい。
これがすごい殺傷能力をもつわけです。
ちなみに三八式は胡桃の木でてきてます。
ボルトアクション式(手動装填)なので、その装填動作がまた、ハチャメチャにカッコいいです。
細かい話なんですが、主人公の杉元と尾形の装填の仕方(手グセ)は違ってて、動作のコマだけでどちらかわかるように作中では書き分けされてます。
ゴールデンカムイのキャラクターは日露戦争あがりの者がほとんどですが、この三八式は日露戦争後に流通したもの。
日露戦争では尾形も一世代前の三十年式歩兵銃を使用してましたが、作中序盤で入手(というか盗んだ)し以降愛用。
最新武器大好き尾形、可愛い。
調べてみると、アサルトライフル(自動装填タイプ)がでたのは1941年で、かなり最近といえば最近のことのようです。
ちなみに三八式の重さは3.7キロです。
重ーー!!!!!
正直これを肩にかけて持ち歩くことを考えただけで辛い。真冬の北海道で他の荷物も入れたら、まあ6〜7キロくらいは錘を体につけて歩いてるようなもんです。やばすぎる。
最大射程4キロ、有効射程は460mですが、尾形は作中では、俺なら300m以内なら敵の頭は外さないと言ってます。
ちなみに中に入る弾の数(装弾数)は5発。ひとつの弾薬盒(だんやくのう/弾丸を入れるポーチ)には30発入れられます。
たぶんこれも重い。敵よりもまず武器や荷物の重さとの戦いなんじゃなかろうか。
ちなみに開発者の有坂さんが作中にでてきますがめっちゃ可愛いおじいちゃん。
試験発砲のしすぎで難聴。声でかい。
専門的な部分は、wikiをみていただけるとかなり面白いです。銃って深い。
【5】尾形百之助の『中身』
では、尾形の深掘りに入ります。
まず目が死んでいると前述した通り、尾形は明るいキャラではありません。
キャラクターが精神上不健康な状態に陥ることを『闇落ち』と言ったりしますが、尾形は途中から闇落ちしたというより闇そのものに近いキャラクターといえます。
というか闇です。
当時本誌やコミックで内容を追っていた「ギャー尾形クールでカッコイー!』な読者は、11巻103話『あんこう鍋』で尾形のとんでもない過去を目の当たりにします。
まず、この話で尾形は自身が所属していた部隊の中将である花沢幸次郎の息子であるということが発覚。
そしてこの父親とは苗字が違いますよね。
尾形はこの父親に認知されてません。
戸籍上他人なんですね。
さらにこの父親は日露戦争後ほどなくして亡くなっており、表向きには戦争責任での切腹となっていますが、尾形が殺害していることも判明します。
たった一話でいきなりこの内容です。
頭がバグります。重すぎてしぬ。
この話はわたしがこれまで読んできた漫画の中で最も悲しくて、印象的で、美しくて、演出が非常に細かく考えて描かれていて、先生の才能、これまでの漫画家としての努力に感動した話でもありました。
尾形が父親にトドメを刺す前に、自分が恵まれない境遇でこうなってしまったことを自嘲的に話すシーンです。
『望まれて生まれてくること』『両親の愛を受けること』を『祝福』という宗教用語で表現しているところがまたいい。
尾形が大好きだった母親を捨てた父、親を殺してそれ以上に成り上がってやるという暗くて重い意志、自己暗示のような、尾形そのものを表している感じがします。
ちなみにこのシーンは、アニメでも津田健次郎さんの声や作画がすごく良いです。
暗い座敷にぼんやり灯るランプ、軍服の尾形、飛び散る血、極寒の北海道の冬の夜。
自分的にこのシーンは物語の舞台が海外だったり現代だったり、尾形のキャラデザが明るめな感じだったりしたら全然成り立たないと思っていて、日本文化の侘び寂び、諸行無常、物悲しさが凝縮されている感じがして好きです。
原作だとモノクロなので濃紺の軍服も真っ黒に描かれていて、またそれがシリアスさを際立ててます。
だいぶ非道徳な行為をしている尾形(というか普通に犯罪者)ですが、「朝飯食べたのか?」みたいに「祝福された道が俺にもあったの(だろう)か…」と言う。
まあかなりのサイコパスなわけですが、この尾形の告白により、その動機も判明します。
まさかの父の殺害だけじゃなかった。
最終的にこの話では、尾形の口から3つの事実が判明します。
ちなみに作中では、尾形の過去を知っているのは同じ軍の仲間数名ですが、母殺しについて知っているのは尾形が告白した父の中将以外にはいません。
主人公の杉元、ヒロインのアシリパも最終回まで尾形の過去を知ることはありませんでした。(なんでって、尾形は口がかたいし、この性格だし、そもそもネタバレとしてはスパイで、かつ本人が本人の目的のためだけに動いてます。なので言う必要がないというわけです。)
尾形は花沢中将とその妾、芸者であった尾形トメの子として東京で生まれましたが、中将は早々にトメを見限って尾形を認知しませんでした。
トメは茨城の実家に帰り中将を待ちながら幼い尾形を自分の両親と共に育てていましたが、中将がトメと尾形を迎えにくることはなかった。
トメは現実を受け止めきれず精神を病んで、あんこうの獲れる冬になると中将に褒められたあんこう鍋をひたすら作りつづけるようになります。
そうです、尾形の好物あんこう鍋です。
尾形は母親からの愛情を満足に受けられず、母に対する『自分をみて欲しい』気持ちが大きくなっていきます。
そうして尾形は、鳥肉があれば母はあんこう鍋を作らないだろうと祖父の猟銃を持ち出し、鳥を撃っては母親に差し出しますがそれでも母は振り向いてくれない。
それほどまでに母は父が好きなようだ…
そうだ、母が死んだら葬式に父が来るかもしれない。
だから母に殺鼠剤を飲ませて殺した。
というのが、父に対する告白内容です。
つまりこの時点で尾形は両親を殺してます。
わけわからん。
(理解が追いついても噛み砕けない。)
祖父母はこの後行方不明になったようですが、もしかしたら娘のことを気に病んで心中しているかもしれません。
とにかく家庭環境が暗すぎる。
射撃のプロであることも、母のために必死で鳥を撃っていた過去の経験からきているわけですね。
尾形のバカデカ承認欲求は母との過去が根本的な、というか始まりです。成人になっても『見て〜!』してるので。悲しい。
そして大きくなった尾形は、結局葬式に来なかった父を一目見ようと、北海道にある父の所属部隊に入隊します。(肝が座り過ぎている)
自分の能力が軍隊で父に認められれば、何かしら交流できるかもという期待もあったかもしれません。
しかしそこで会ったのは正妻の息子、花沢勇作でした。
この勇作との出会いが、更に尾形を狂わせることになります。
(これ以上何が狂うのかという話ですが…)
【後編】へつづきます→
(編集中のため1,2週間お待ちください)
★ ちなみに、
『夢女子が選ぶ2022年の100人』第8位
『夢女子が選ぶ2023年の100人』第13位
ランクインしたようです、おめでとう。
ぜひこちらの記事もご覧ください。
夢女子の皆様ありがとうございますッ!
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https://note.com/_ui12/n/nd9d2bf752c5e