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障がいと避難所について

こんにちは!
百年防災社スタッフの小西です。

 先日、弊社でオンライン開催した「避難所で起きる性犯罪対策ミーティング」でお手紙を寄せてくださった吉川理恵さん。
※性犯罪対策ミーティングについての記事はこちら

 吉川さんが、お子さんが通われている特別支援学校で『防災安全部』を立ち上げられていることを知り、活動内容を知りたいと思い、PTA会長の靍見さんと、校長先生にもご協力をいただき、特別支援学校を取材させていただきました!
(アイキャッチ画像 左から:PTA会長 靍見さん、防災安全部部長 吉川さん、齊藤校長先生)

この記事では、発達障がいのある方の生活や、発災時や避難所で私たちや社会でできることを知ってもらう機会になることを願って書きます。

特別支援学校とは?
 特別支援学校とは、心身に障がいのある児童・生徒が通う学校で、幼稚部・小学部・中学部・高等部があります。
基本的には幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準じた教育を行っていますが、それに加えて‟障がいのある児童・生徒の自立を促すために必要な教育を受けることができる“のが大きな特徴です。
(引用:リタリコ発達ナビより)

 1979年(昭和54年)からの、障がいのある子ども達も全員が学校で教育を受ける義務化を見据えて、1977年(昭和52年)に当時は養護学校として水元特別支学校は開校しました。2008年(平成20年)より特別支援学校に名称が変わりました。

 通常の学校の標準人数は40人に対し、特別支援学校のクラスの標準人数は6人。発達や個の特性に併せてクラス分けが行われるそうです。
 また小・中学校にも籍を置き、居住地域の学校の児童・生徒と交流することもあります。また、特別支援学校の先生が、小・中学校の児童・生徒へ授業をしにいき、障害のある子どもたちのことを理解してもらうこともあります。

図かい

(引用:TEENS【図表でわかる!】発達障害 × 通常級・通級・特別支援学級・交流級より)

■子どもたちの学校生活
 水元特別支援学校では、自閉症や発達障がいのある子ども達が学校生活を送っています。
(視覚障がいのある子ども達は盲学校へ、聴覚障がいのある子ども達は聾学校へ入学します。)

 自閉症や発達障がいのある子ども達の特性として、
◎事前に一日、あるいは1時間ごとの授業の中で何をするのかが分かって
    いる事が大切
◎食事や食事の仕方へのこだわりがある
◎感情やストレスが高まった時に心落ち着け、元の状態に戻るために
  『カームダウンスペース』で過ごすことが必要なことがある
◎視覚や音に敏感
◎普段会わない人や動物に抵抗がある
など、一部ですが、上記のような配慮が必要だそうです。

 学校内には、下記のような工夫がされていました。
①階段の踊り場には鏡があり、見えない視線の先が分かるようになっている。
②視覚的に見やすくするための、階の数字やトイレのピクトグラムは大きくしている。

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③各教室が何の目的なのかが分かるようにイラストになっている。
④入口、出口が分かりやすくなっている。

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⑤右側通行を徹底できるように矢印が床にある。
⑥画鋲を使わないように、掲示板はマグネットになっている。

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⑦カームダウンスペースとして、休める場所がある。

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実際に学校を見学させていただくと、子ども達の過ごしやすい環境について、知ることができ、もし避難所で過ごすことになった時の参考にしていただけたらと思います。


■吉川さんが防災安全部を立ち上げたのは、親御さんの悲痛な覚悟。
 吉川さんが、お子さんの入学をきっかけに、学校のママ達との会話で聞こえてきたのは「避難できないなら死を待つしかない」という声。
発達に障がいのある子ども達は、予期せぬ事や、非日常的な生活にパニックになりやすく、奇声をあげてしまったり、体調を崩したりしてしまいます。

 そうなれば、一般的な自治体が指定されている小学校等の一次避難所では避難することが難しくなり、避難しそびれたり、避難を躊躇してしまったり、「最悪の事態を覚悟せざるを得ない」。これが特別支援学校に通うママ達の普通の会話だった、と吉川さん。

 そこで、吉川さんは「これではいけない」とPTA役員で構成される「防災安全部」を2018年に立ち上げられました。
校長先生も防災安全部の立ち上げに賛成してくださり、協力しながら、活動を進めてこられたそうです。

 防災安全部では、まず特別支援学校に通う保護者の方への防災に関するアンケートの実施や、以下のポスターと冊子を作成され、学内・学外への理解啓発の推進を目指して活動をされています。

水元特別支援学校 防災安全部』

 水元特別支援学校は、二次避難所(福祉避難所)として設定されており、一般の方も避難所として利用される事もあります。

 また、『突発的に遠出してしまう子ども』や、本人の意思で移動していると『迷子になっているか外見上では分かりにくいこと』を地域の皆さんに知ってもらうことが大切です。

 立ち上げ当初は、防災安全部員のみなさん、一人一人が葛飾区内の避難所に足を運び、配布活動をされ、現在は教育委員会を通して、ポスターやパンフレットを配布するなど活動の実績を積み上げてこられました。
 そのほか、防災教育推進委員会と共に、消防署や警察署、町会のみなさんと連携し、月1回の避難訓練を実施されており、地域との連携を密にしています。


■避難所にまつわる障がい者のリスク
 1つは、障がいのある子ども達は、非日常的な生活や場所、雰囲気にパニックになりやすく、一次避難所を使うには、ハードルが高いのが現状です。

 福祉避難所として、二次避難所になっている特別支援学校に、人があふれるほど避難してくる事も想定されるため、いつも通う学校であっても、日常と同じというわけにはいきません。


2つ目は、ペットとの関係です。
 齊藤校長先生が話してくださったことで特に印象的だったことは、水元特別支援学校は避難行動要支援者(※)避難が対象の『福祉避難所』に該当しているのですが、地域の方々の避難も受け入れると同時にペットの避難の対応も検討することに当たり、動物の鳴き声(特に犬の吠える声)を苦手とする自閉症や聴覚過敏のある方が多いので、外の屋根があるエリアを利用して受け入れを考えている(葛飾区と締結済み)とのお話をしてくださいました。
※高齢者、障害者、乳幼児など災害時に配慮が必要な「要配慮者」のうち、とくに避難時に支援が必要な人を避難行動要支援者という。


 3つ目は、避難者みんながストレスを感じている中で、冒頭にも話した性犯罪に遭ってしまったら、子ども達はうまく言葉に表現することもできず、理解するのも難しいかもしれません。


■私たちができること
1、子ども達の特性と存在を知る。

第一に、まずは子ども達の特性を理解し、こういった子ども達がいることを知ってください。

2、カームダウンスペースを用意する。
 避難所はみんなで運営するものなので、もし一次避難所に避難することになった時は、カームダウンスペースを作ることを、避難所を運営するスタッフの方に提案してみてください。

 一次避難所の場合は、カームダウンスペースとして静かで一人になれる教室を用意したり、体育館などの共有スペースを利用するときには、視線や音が出来る限り遮られる角のスペースを、使ってもらえるように働きかけてみてください。

3、避難所では、ペットと居住スペースは分ける
上記「避難所にまつわる障がい者のリスク」にも記載しましたが、普段会わない人や動物に抵抗があったり、姿を見るだけで、空間に入れないという反応のある子どもも多いようです。

   色々な個性がありますので、避難所で障がいのある方や子どもを見た時には、怒ったり、驚かずに見守って「どのようなサポートが必要か」を、保護者や福祉施設勤務の方に確認してください。
同じ場所に避難することになる小学校や中学校などの一次避難所でも、ペットとの場所を分けれるように配慮をお願いいたします。

4、落ち着く色の大きな布を用意しておく。
 吉川さんがショッピングモールで遭遇した事例をご紹介します。
ショッピングモールでパニックになった子どもがいて、「数人のスタッフで、茶色い大きな布を広げて、視線と音を遮ったら、落ち着いた」という事例があったことから、落ち着く青や緑などの色の布を備蓄品として用意しておくのも良さそうです。

5、交流する
近くの特別支援学校があったら、掲示板を見てみてください!学校行事や民間団体が主催しているイベントで参加できるものもあるかもしれません。


6、ポスターや冊子の配布をする
家やカフェ、オフィスや会場など、ポスターや冊子を配布したい方は、水元特別支援学校PTA(TEL:03-3600-1871)までご連絡を!


最後に・・・
 今回、初めて特別支援学校に行かせていただきましたが、校長先生や教員の先生方、吉川さんや靍見さんを始めとする保護者の方が、とてもイキイキしているのが印象的でした。

 そして、何より子ども達は、子ども達の個性や特性を理解してもらい、大人達と関わって、純粋に、そして精一杯生きているのを感じます。

 防災もですが、障がいは、非日常ではありません。私たちはいつでも、被災する可能性があり、いつでも障がいと共に生きる可能性があります。
 だからこそ、他人事ではなく、共に助け合う環境を作るためにも、特別支援学校のこと、障がいのある方を知ることが大切だと感じます。

水元特別支援学校PTAのTwitterもあります!
https://twitter.com/ponitan_mizumo
(水元特別支援学校PTA公認キャラクターのポニタンは、PTAからの公募で決まったそうですよ!)

活気ある水元特別支援学校から、たくさんのことを学ばせていただいた日となりました。

取材をお願いしたのは、
吉川理恵さん(葛飾区柴又在住)           
幼稚園教諭、介護福祉士を経て、結婚後翌年に男児を出産。
5歳の時に広汎性発達障がい・知的障がいの診断を受ける。
水元特別支援学校では2016、2017年度PTA会長拝命後、防災安全部を立ち上げ、部長として現在3期目になる。
『命に障害はない』を信条として活動をしている。

吉川さん

■取材協力
水元特別支援学校
http://www.mizumoto-sh.metro.tokyo.jp/site/zen/

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