星辰、草木
早暁に浮かぶ歳星の観測者として金木犀が警告する
「螢惑の接近を堰き止めよ」
遠浅の汀に猶予う不敬な機雷に授けられた薬石で、千尋の淵の雪解け水に
潜む黒瑪瑙を暴露し、呪言を消却する年古た桂花
涼しげな輝度で旋回する箒星が遠日点から伝える消息は、柊の先見に言祝ぎを齎した
麗らかなコバルト60の薫り
破格の奇岩に萌す定言命法の発芽
末筆に吉祥を飛白で綴った便りを、鵲が偶さかの凪へ届ける
干上がった貯水池にアメジストは咲かない
物堅い銀杏が、絶え間なくさんざめく蟶貝を、大赤斑で抱卵するだろう
天泣のもと、蛍が綾なす言い知れぬひかりごけ
予言を問わず語りにささめく咲き残った彼岸花に、前世への捷径を説き聞
かせ、過剰な憂慮を希釈する
事象の地平の果てで、偽りの鳥籠は代入された夜来香を枯らした
カシオペアへの違令の冀望を手折る幼い鶏頭と、あえかな風紋に標され
た法外な密事が、邯鄲の枕のまま現世を暇乞いした寵姫への餞
摂理は深夜の砂嵐に紛れていた
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?