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実家の猫ちゃんが死んだ
一周忌を過ぎたので去年書いた文章を投稿します。
いつだったか忘れたけど小中学生くらいの時
同じく小中学生くらいの妹が
「庭に黒猫がー!」って言って
見に行った私は夢中でその猫を抱っこして家に連れ込んだ
それがあの猫ちゃんがうちに来た最初
あとから聞いたらちょっと離れた学校の近くにいた人懐っこい猫を抱っこして家の庭まで誘拐してきたらしい
姉妹の無言の連携プレー
耳が折れていて黒くて大きくて金色の目で高い声の猫だった。
今となってはなんとでも言えるから、なんとでも言おうと思う。
触ったその瞬間から世界一可愛いと思った。
それからは迷い猫として届出が出てないかとか色々調べたりして紆余曲折あってうちの子になった。
名前はりーにょ 本名は影丸
だんだん変化していって最終的にはりーにょになった。
ニャ〜〜〜ンって高い声で泣く可愛い可愛いりーにょがうちにきて、
当たり前みたいにうちにいる猫ちゃんになった。
りーにょは推定3〜4歳って言われてて、
意外と若いなと思った。
大きかったしボサボサだったから年とってるのかと思った。
野良生活長かったみたいなのにあんまり怪我もなかったらしい。
尻尾がめっちゃ太いし体もでかいから舐められなかったんだろうか。
りーにょは可愛い上に強い猫だったらしい。
それからはもう、とりとめのない当たり前の生活だった。
猫と一緒の当たり前の生活。
私はよく家族が寝静まった後にリビングで泣いたりしながら一人でいたけど、
その時よくりーにょが寄ってきてそばでぷるぷるゴロゴロ言いながら座っていた。
海苔が好きだった
生クリームが好きだった
マグロも好きだった
にゃーにゃー可愛い声でよく鳴いていた。
主にロフトベッドの上で暮らしていた私をよく下の方から鳴いて呼んできた。
ふと覗くと大きな大きな体をフローリングに横たえていてどう見ても妖怪にしか見えないときもあった。
ほんとにふわふわで大きくて可愛い猫だった。
あの家で暮らしてる間りーにょがずっと一緒だった。
可愛い可愛いただどう見ても可愛い猫ちゃんだった。
そんなある時捨て猫だった子猫が家にやってきた。
茶トラ三毛と三毛と白黒の3匹の子猫だった
ネズミくらいの大きさで注射器からミルクを飲ませて家族みんなで育てた。
目が開いた頃に試しにりーにょに会わせてみたら
唸りもせずにペロペロと舐め始めたものだから
食おうとしてるのかと思って慌てて引き離したけど
優しく毛繕いをしてあげてただけだったらしい。
オスなのに。
それから子猫との生活が始まった。
3匹中2匹は貰われて行き、白黒のオスだけが残った。
子猫の体力は有り余り、目が開いた頃からいる黒くて大きいあまりに大人しいりーにょは格好の遊び相手であったと思う。
何回怒られても齧りつき飛びかかり、そのうち身体も大きくなってりーにょの体重も超すほどになった。
私はその子猫に嫌われた。
会うたび威嚇されるようになった。
その子猫が育つ頃には私は家を出ていて、完全に"たまに来て嫌なことをしてくる奴"になってしまっていたから仕方ない。
でも目も開いてない頃ケツを拭いてやったりミルクを飲ましてやったりしたのに全部忘れられちゃって少し悲しいと思った。
でも私にはりーにょがいるから大丈夫だった。
しばらく後にもう1匹子猫がやってきた。
初めての女の子。いつまでもふにゃふにゃ小さな身体で、りーにょが特別大きい猫なんだということを思い知らせてくれた。
前回の反省を活かして、この子に対しては"たまに来ておやつをくれる人"になることに成功した。
あんまり構ってくれないけど、私の部屋の前に来ると鳴きながらまとわりついてくれるようになった。
そうして月日が過ぎていった。
いつのまにかりーにょに触れるとふわふわの毛より骨に触れるようになって
あんなに大きかったのにいつのまにか
しぼんだわたあめみたいに小さくなっていた。
死ぬまでそのまま小さいままだった。
ある時いつもみたいに「お水出して」と訴えるりーにょに
持っていたペットボトルから直接水を注いで与えてみたら嬉しそうに飲んだ。
改良を加えてディスペンサーを使うようになった。
私がウロウロしてるとお水をもらえると思って鳴き喚くようになった。
いつもあげるのは面倒だと思いつつとても幸せな時間をもらえて嬉しいと思った。
後悔のないように何回でもあげたと思ってたけど今考えたら全然足りない。
あと300回あげたかった。
お水をもっと好きなだけどんどん飲ませてあげたかった。
それからはあっという間だった。
この間死んじゃった。
怖くてあんまり会いに行けなかった。
やっと会いに行った矢先に死んだ。
最後に抱っこしたりーにょは骨と皮だけなのにあったかくて
小さい声でぷるぷると鳴いていた。
抱っこしたりーにょがあったかくて
死なないでって大きい声で泣きたかったけど我慢してしまった。
りーにょと初めて会った時から変わらず家族の前では恥ずかしくてあんまり泣けない。
手動で水を飲ませ始めたあたりから分かってて覚悟は決めていた。
りーにょはもうすぐ死んじゃう。
こんなに可愛いけどりーにょはもうすぐ死んじゃう。
分かってるつもりだった。
りーにょがもうこの世にいない。どこを探してもいない。
すごいこんな悲しいことあるんだ。
死なないでって、大きな声で泣きたかった。
我慢してしまった。
ずっと泣き虫で育ってきたのに家族の前で泣くのが恥ずかしいなんておかしな話だ。
今どんな場面でそれを再現してももうりーにょは死んでしまった。
私の世界一可愛い猫ちゃんは死んでしまったんだ。
だけど泣けなかったなら、
最後の抱っこは涙を浴びせないですることができたってことで
それはそれでよかったんだと思う。
いつ何度思い出しても涙が出るけど
部屋で1人で泣いていると慰めに来てくれた世界一可愛い猫ちゃんをこれからずっと何度でも思い出す。
今は海苔と生クリームとちゅーるとマグロの天国にいるりーにょに捧ぐ