キケロ「老年について」#15 身体以上に頭脳と精神に手をかける
2人とも、いいかね。老いとは闘わねばならない。日々の手入れでガタついてきた箇所を補い、弱い部分は病気の手入れをするようにして面倒をみてやらねばならん。
そのためには、健康的な生活を計画し、実践することだ。適度な運動と、身体に負担をかけない、回復に十分なだけの食事をする。
そして、身体をいたわること以上に大切なのが、頭脳と精神に手をかけてやることだ。油を注ぎ足さないとランプの火が弱まってしまうように、新しいものを補充しなければ次第に鈍くなってしまうものだ。身体を動かすとくたびれてしまうが、精神が活発だと、知性はより鋭敏になるのだ。
劇作家は喜劇の中によく「老いぼれ」を登場させる。騙されやすく、忘れっぽく、怠惰な老人というわけだ。しかし老人がみなこういうわけではない。年齢に関係なく、これはぼんやりと無精に惰性的に生きることを自分に許してきた人間の特徴ではないかね。むしろ無茶をしたり、欲望に負けたりするのはむしろ若者の方だとも言いたいが、とにかくこれはただ「性格が未熟」なだけだ。老人全般が「耄碌(もうろく)」した状態なのではなく、気迫のない、意志薄弱な者の姿をこう呼ぶのだ。
※キケロの言葉は、私にはとても耳が痛い! 某テレビ番組のセリフ「ボ~っと生きてんじゃないよ!」が聞こえてくるようです。それにしても、最近我が国で多発している高齢者を狙った特殊詐欺(還付金詐欺やオレオレ詐欺)は本当に悪質で許せない気持ちがします。我々日本人の心の中から高い倫理観や道徳感が失われていないことを信じたいです。