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【徹底解説】2024年最注目の投資先は?クリプト投資ガイド#1 ビットコイン編

本稿は、2024年のブロックチェーン市場での投資に関して注目・考慮すべき7つのポイントをまとめた記事の第一弾だ。Professor JoとUndefined Labsのメンバー共同で伝統的な金融、メディア、ブロックチェーンの各分野で7年以上専門家として活躍してきた研究者による分析をもとに、今後の投資戦略に関する知見や方向性をお届けする

マクロ視点: 仮想通貨の現在とウォール街の影響

最近、2つの重要な出来事があった。1つは、バイナンスが43億ドルの罰金を支払い、米国の規制に組み込まれたこと、もう1つは、ビットコインスポットETFのローンチである。これら2つの動きは、ビットコインに関連する様々なリスクを大幅に軽減する。

特にビットコインスポットETFは今後、他のデリバティブにも拡大する可能性が高い。想像を絶する取引量と流動性を毎日生み出すだろう。これまでビットコインの価格はバイナンスやテザーのような暗号通貨企業によって決定されていたかもしれないが、今後はウォール街が大きな影響を与えることになる。

これまでビットコインは、良好なマクロ金融市場の環境と様々な好材料の両方が揃った時にのみ上昇トレンドを見せてきた。現在の有望要因は以下の通りだ:

  1. マクロ米国債利回りのピーク、米国主要指数の史上最高値更新、リバースレポ残高の減少。

  2. ビットコインスポットETFによる伝統的金融基盤の拡大

  3. ビットコイン半減期

  4. 強気相場と弱気相場の市場サイクル:新しいシナリオ

過去5回の強気相場のデータを見ると、弱気相場の期間の中央値は354日である。平均すると、弱気相場は293日間続く。

価格データに基づくと、今回の弱気相場は平均サイクルより長く、354日間続いた。強気相場サイクルの中央値は604日で、平均期間は約571日である。
(ここにおける強気相場サイクルとは、弱気相場の底値からピークに達するまでの期間を指す。2024年1月1日現在底値から414日が経過している。)

市場環境がサイクルごとに異なるものの、強気・弱気の市場サイクルの平均的な期間を計算することは、現在のサイクルがどの段階にあるのかを予測する上で重要である。

このデータから、現在はまだ強気相場サイクルの途中に位置していると推測できる。通常、強気相場の前半は既存の暗号通貨保有者からの資金によって価格が上昇するが、最後の高騰は新規資金の大量流入によって引き起こされる。今回の強気相場では、ETFからの資金が触媒として機能すると予想される。

暗号通貨の強気相場で有効なストーリー性とは?

強気市場において、最も重要な要素は新規の流動性である。この流動性を活用できる可能性のあるプロジェクトは、大きな利益を得ることができる。このため、強気相場の後期には、FDV、MC、TVLといったファンダメンタルズよりも、高い上昇力を感じさせる製品、技術、ロードマップが重要になる。つまり市場にとって納得のいく成長性がカギとなる。そもそも強気相場での価格にはすでに成長プレミアムが含まれていることが多く、正確な分析が難しいため、弱気相場では逆に上のようなファンダメンタルズを用いた分析がより効果的である。

では実際に、2024年に注目すべき成長ポテンシャルの高いセクターを見ていこう:

1) ビットコイン:インスクリプション(NFT)は分散型トークンの未来となるか

  • オーディナルは、ビットコイン上に恒久的な所有権を主張できるトークンシステムを構築したことで注目を集めている。単純なコントラクトのもとで管理が行われるイーサリアムと比べると、使い勝手や利便性は劣るかもしれないが、こうした問題が大きな欠点として特に捉えられていない点は逆にアピールポイントだ。コミュニティ主導のフェアローンチも、インスクリプションの成長に貢献している。「マネー・フォー・マネー」の原則に基づいた動きで投資を独占する大手VCに強い憤りを抱いていた仮想通貨ユーザーは、インスクリプションに積極的に反応し、早期参入を確実なものにした

  • 進化するトークン:

  1. BRC-20が現在、ビットコイントークン発行のスタンダードといってよい。しかし、BRC-20を使用したスパムUTXOの増加はビットコインネットワークに過剰な負荷をかけており、オラクルとしてのインデクサへの依存度が非常に高くなっているため、論争の的となっている。実際、ビットコインの全取引の状態を含むデータベースであるUTXO Setは昨年に比べて倍増しており、旧来のビットコインコミュニティからの反発を招いている。

  2. 新しいトークンスタンダードには、Atomical(ARC-20)やRUNEなどがある。これらはBRC-20に比べてインデクサ依存度が低く、UTXOスクリプトに基づいてより優れたUTXOマネー・レゴを作成できる。SRC-20やBRC-420(Bitmapなど)のような他の標準も、ゲームロジックを使用してエコシステムを構築している。 

  3. これらのトークンスタンダードはほとんどが初期段階にあり、主にオーディナル・デザイナーの間で知られている。一方でより規制が緩やかで大量導入が可能なトークンスタンダードのソリューションが、ライトニングネットワークベースのTaproot Assetだ。Taproot Assetは、インスクリプションベースのトークンスタンダードよりも多様なプログラミングを可能にし、USDCやUSDTのようなトークンの部分的な所有権を解消することができる。機関投資家はTaproot Assetを利用してリテール金融用のステーブルコインを発行できる可能性があり、ライトニングネットワークが決済アプリチェーンとしてのビットコインの成長の主要な触媒となる可能性もある。

  4. トークンスタンダードが成熟するにつれて、BRC-20上のトークンが他の場所に移行することが予想される。どのトークンが移動し、そのトケノミクスがどのように調整され、どこに移動するかによって、新たなアップサイドが生まれることが予想される。

  5. ビットコインはスケーラビリティの低いブロックチェーンであるが、スケーラビリティソリューションの数が増加し、ビットコインがセカンダリートークンを発行するレイヤーとしての地位を確立することが期待されている。また、ビットコインのブロック空間は一貫してトークン発行に利用され続け、持続可能な経済モデルへの移行が想定されている。

  • ビットコインベースの現在のトークン時価総額は約50億ドル。2023年には、ビットコインが支払う手数料の約35%がオーディナルからもたらされている。この割合を考慮すると、2024年には、流動性とスケーラビリティのインフラ技術の開発速度よりも、インデクサやCEX(集中型取引所)と互換性のある分野が投資流動性を集めると予想される。 

  • 前回の強気市場におけるNFT市場のピーク時価総額は約500億ドルから700億ドルだった。この強気相場の間に市場がさらに200億ドルから300億ドル拡大すれば、ビットコイン・インスクリプションは、様々なオンチェーンプレイヤーを通じて約1000億ドルを引き込む可能性がある。 

2) 新たなマーケット: インデクサ市場

  • ビットコインは、イーサリアムのスマートコントラクトとは異なり、オーディナルが正しく機能するかどうかを事前に検証することはできない。つまり、BRC-20のデプロイ、発行、移転に関連するトランザクションを事前に検証することはできない。これが、Ordinalsのデータを識別するインデクサーの役割が必要となる理由だ。たとえば、BRC-20 のティッカー「Ordi」を持つ 2 種類のトークンを考えてみよう。これらの同一のトークンを区別できなければ、取引市場で大きな混乱が生じる。

  • 現在普及しているインデクサーは、単純なビットコイン版のオラクルのようなものだ。Unisat、Ordiscan、CEXのような企業は、集中的にデータを提供しているが、この形は、データが正しくない場合に大規模な障害を引き起こす可能性がある。OKX、Gate.io、Binanceは$ORDIのデータを認識する際に間違いを犯し、発行量を誤解したり、スパム・トークンを受け入れたりしている。このように未熟なオラクルインフラと中央集権型オラクルの脆弱性が大きな損失をもたらす状況はDeFiの初期を彷彿とさせるものがある(例:Compound DAIのオラクルエラー)。

  • 基本的に、インデクサーは既存のオラクル・ビジネスに似ている。Chainlinkのようにブランドの信頼を築き、分散型テクノロジー・スタックを開発するプロジェクトが現れれば、この市場を支配する可能性がある。前者にとって重要なのはCEXやDeFiエコシステムとの統合を確保することであり、後者にとって重要なのはオーディナルにおける悪意のあるMEVを解決することだ。

  • とはいえ、Chainlinkと状況は似てはいるが、この分野の市場が2024年までに同様の成長を達成するのは難しいだろう。ビットコイントークンの時価総額が100億ドルを超えると、分散型インデクサーの市場はThe Graphと同規模(20億ドル)程度に達すると予想される。 

3)スケーラビリティ・ソリューション: ビットコインの信頼性を保ちながら流動性を確保する

  • 多くのプロジェクトがビットコインのスケーラビリティ・ソリューションであると謳っている。しかし、この分野はかなり難しい。ソリューションは、影響力のあるビットコインコミュニティと敵対することなく、ある種の信頼性(例えば、小さなブロック)を維持しなければならないからだ。

  • 以前のスケーラビリティ・ソリューション(例えばRootstock)は、ビットコイン本来のチェーンレベルの検閲耐性を維持できなかったため、大きな支持を得られなかった。しかし、現在この分野に挑戦するプロジェクトがいくつか市場に登場している。BitVMやL2のようなスケーラビリティ・ソリューションは、ビットコインの信頼性を維持しながらも、検閲耐性を提供するもので、ビットコインのスケーラビリティに貢献することが期待されている。 

  • スケーラビリティ・ソリューションを利用するということは、イーサリアムのDeFiのようなオンチェーン環境でビットコインを活用することを意味する。しかし、現在ビットコインDeFiに関連する流動性がないため、これは困難な問題でとなっている。ビットコインベースのトークンは、CEXのサポートがなければ価格をつけることができない。スケーラビリティ・ソリューションは、単にスケーラビリティの問題を解決するだけでは生き残れない。最終的には、トークンが市場の流動性を活用する必要がある。イーサリアムのUniswapのような役割を果たすdAppがビットコイン用に作られれば、ビットコインのスケーラビリティソリューションとビットコインレイヤー2の発展に大きく貢献するだろう

  • L2にとって、L1でロックされたネイティブアセットを安全に利用する能力は極めて重要である。ビットコインのスケーラビリティ・ソリューションは、ブリッジング→DEX→レンディングといった手法を通じて流動性を活用することも期待されている。注目すべき例は、クロスチェーンのインフラソリューションであるThorchainである。Thorchainは最近のL2のようなセキュリティレベルを達成していないが、この方法によって平均$60M~$100Mのオンチェーンビットコイン取引量を確保しており、これはイーサリアム上で発行されるWBTCの規模よりも大きい。

  • ビットコインの信頼性を保ちながら流動性を確保するソリューションは市場の注目を集め、この分野で構築されるプロジェクトはETH L2に匹敵する価値の成長が期待できる。例としては、@BotanixLabs、@Bison_Labs、@kasarLabs、@urbitなどが挙げられる

  • ビットコインの流動性とスケーラビリティのエコシステムがより活発になるにつれ、市場はビットコインのセキュリティを利用したソリューションへの需要を示すだろう。既存のプロジェクトの中では、Babylon ChainがPoSネットワークセキュリティモデルとBTCステーキングモデルをサポートしている。これまで、ほとんどのビットコインDeFiは、Wrapped Bitcoinを使用してイーサリアムのブロックチェーン上にビットコインをラッピングすることに依存しており、中央集権的な問題に直面していた。しかし、Babykib Chainは、こうした中央集権的なリスクを軽減することができる。 

  • 最も古い暗号通貨の一つであるビットコインは、イーサリアムよりもスケーラビリティの歴史が浅い。ビットコインの流動性とスケーラビリティの物語は、イーサリアムが経験したものと同様の道をたどると予想される。 

その他の注目すべき動向

  • NASDAQのような伝統的な市場に上場しているマイニング企業の利益に注目する必要がある。彼らの利益はビットコイン価格の方向性だけでなく、オーディナルの手数料にも大きく左右される。昨年12月中旬の一時期、手数料の報酬はビットコインのブロック報酬を上回った。 

  • オーディナルについては、現在ビットコインのマイニングのかなりの部分がマラソン・デジタルやライオットなどの大手マイニング企業によって行われていることに注意する必要がある。ビットコインスポットETFの承認を主導した資産運用会社ブラックロックは、ETFを運用するだけでなく、これらの大手マイニング企業の株式を大量に保有している。

  • マイニングを手掛ける企業や大手金融機関がビットコインのエコシステムの方向性を左右するようになっているが、インスクリプションはかなりの手数料をもたらし、株価にも良い影響を与えるため、彼らはインスクリプションを好意的に受け止める可能性が高い。

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