間接きっす。
道場に通っていた頃の私。
新たに思い人ができます。
(一途に思い続けていた彼は、思春期到来による気持ちの変化で段々と冷めて行きました。男子が女子に冷たい態度をとるアレです。)
道場に通い始めて1、2年ぐらい経ち(当時小学校6年生だったと思います)新たに生徒が加わります。
同じ区域の中学に通う彼は、引っ越してきたばかりだったかと思います。
初めて見た時の印象は、
顔でか
でした。
一言にイケメンという顔では無く、普通ですかね。
特になんとも思わず、また男か...(女の子が少ないので女の子を欲していた)って感じでした。
新入りですので私が教えることも何度かありましたが、やはり男だからでしょうか。それとも年上だから?はたまた素質の問題?
彼がどんどん成長していくのです。
凄い!
なんて思いません。
むかつきました。
彼は私のライバルになりました。(勝手に)
先生に叱られてる姿を見ると嬉しく、
褒められていると嫉妬し、
いつの間にか私が彼に教わる立場になっていたのです。
そして腹立たしいと思っていた私も素直に彼を尊敬するようになりました。
というのも彼の実力は本当に素晴らしく、成長の早さも他の人と比べると別格でした。
いつの間にかベテランの先輩方と練習するようになっており、私の二歩も三歩も前を歩いていたのです。
その頃に私は男と女の差を知りました。
もちろん女性の方でもプロで活躍している方は本当に凄い。
ですが私はその時彼には到底敵わないんだということに気づきました。
でも悔しさは無く、むしろ応援する気持ちで彼を見ていました。
そしてふと気づきました。
あれ?好きじゃね?と。
気がつけば目で追い、目が合えば彼がふざける。
ただそれだけで浮ついてる自分に気付きました。
恥ずかしい話ですがめちゃくちゃ空手が楽しかったです。
道場に行けば彼に会える。
投げられようとも彼に会える。
恋の力はすごいですね。
(その頃私もベテラン組に入っているので滅多に投げられないですが、たまに先生の気まぐれで投げられてました(謎))
ですが私は小学生。
好きな相手ができても何もする事も無く、むしろ何をするのか?って感じでしたのでなんの進展もなく。
そのまま月日が過ぎます。
卒業間近になり、その頃には私と彼は授業の合間の休み時間に校舎同士が隣接する場所でお喋りするというのが日課になり、空手だけでなく学校生活にも色をつけてくれました。
その頃は度々、あれ?こいつもしかしてと思う瞬間もあり、浮ついた気持ちが常に浮遊してるような感じでした。
卒業間近に控えたちょうど同じ頃、空手の大会がありました。
私は当日とても緊張していて、練習も身が入らない程。時間が近づいて行くたび笑う事もままならないど緊張状態になってしまっていました。
それに気づいた彼が、こっそり私に話しかけてくれたり、肩を叩いてくれたり、練習に連れ出してくれたりと気を逸らしてくれて、かなり助けられました。
彼だって緊張していたはずなのに、私を気遣ってくれる彼はとても優しい方だなとますます好きになっていくのが分かりました。
練習後彼が私にアクエリアスを手渡してくれました。彼のお父さんがみんなにと差し入れとして持ってきてくれていて、それを私に手渡してくれました。みんなに配り終えるとそれぞれ練習に戻り本番に備えます。
私も彼の隣で最後の練習をし、アクエリアスを飲んで本番に向かいます。
それぞれ散り散りになり本番を終えて、表彰式を終えて一人また一人と自分の席に戻ってきます。
彼も戻り私も戻り、お互いの賞状を披露しみんなでお互いを労います。
その時私が持っていたアクエリアスを彼が奪い取り飲み始めます。
私は訳が分からず放心したまま彼を見ます。
周りのみんなは気づいておらず、ガヤガヤと盛り上がっています。
彼が飲み終えて私にアクエリアスを返却します。
私が固まっていると「ごめん俺のもう無くて」と言いくるっと隣の友達に向き直ります。
私は大混乱しておりました。
なぜなら彼のアクエリアスは、彼のバックに入っていて未開封だったから。
開けたく無かったのか?でもなんで私の?
わざわざ手から奪い取って?とまぁぐるぐるしておりました。
ですが好きな人です。思い人です。
彼は隣で盛り上がってる。こっちに背を向けて。
飲むでしょ。
と思ったと同時に一口飲みました。
心臓が爆発しそうでした。
顔面は多分茹で蛸でした。
しかし普通を装って飲みました。
誰が見てもおかしくない自分のアクエリアスを飲んでるだけの私。を演じていました。
するとボソッと
「間接キス」と隣から聞こえてきました。
彼です。見られていました。
バレていました。
「喉乾いてたから仕方ない」
頭をフル回転、振り絞ってやっと出た言葉でした。
ふと彼を見ると彼の耳が赤かったのを私は見逃しませんでした。
これは誰がどう見ても両思いです。
私も分かっていたと思います。
ですが小学生の私にはそれ以上求めるものは無く、
むしろそのままでも十分楽しかったのです。
その後も変わらず仲のいい友達として過ごすのですが、私が中学に上がり空手も辞めると途端に彼に会うことが無くなりました。
中学入学と同時に終わった私の二度目の恋ですが、しっかりアオハルしたなと思います。
あの初々しいドキドキする感覚は、今思い返しても楽しいものです。