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中学生の頃。

- サッカー部 -

中学校生活にも慣れ始めてきた中学二年生の頃。
二度目の恋が終わった頃に新たに恋をします。

お相手はサッカー部のメガネくん。
とても無口で女子と喋っている姿を一度も見たことがありません。

真面目そうな雰囲気でうるさい男子が多い中
一際目立つ彼の落ち着いた雰囲気が格好良く
恋をするのに時間はかかりませんでした。

私は一年の前半にあった集団無視後から
同級生の女子達に対し、嫌悪感や不信感しかなく
その後もこのクラスで女友達ができることはありませんでした。

なので私は男子とばかり話しており、登下校も家の近所に住む同じ小学校出身の男子と一緒でした。
偶然にもその男子ゴボウくんはメガネくんと仲が良く、帰り道でさりげなくメガネくんの情報を得るのが私の楽しみでもありました。

メガネくんは実はああ見えてすごくお喋りな事。
頭はあまり良くないこと。(ゴボウ曰く中の下)
親がどちらも教師で厳しいということ。
妹がいるということ。
サッカーバカだということ。
むっつりスケベだということ。(ゴボウ談)

この辺りで多分ゴボウにはバレていたと思います。
ゴボウも馬鹿でしたが、面白くて優しい。
友達思いの子だったため、気づいていたけど気づかぬふりをしてくれていたかと思います。

ゴボウは私が集団無視をされている最中も
なんの変わりなしに私と一緒に帰ってくれました。
一人で歩く私の後ろを自転車で追いかけてきて、
時には自転車で轢き「寂しそ」と言いながら自転車から降りて隣を歩いてくれました。
憎たらしい奴でしたが、必ず一緒に帰ってくれました。
つまらない学校生活の唯一の楽しみでした。

ゴボウと私の間には男の友情のようなものが芽生えておりました。

ある日の帰り道、ゴボウに「お前好きだろメガネ」と言われました。ですがもうバレているだろうと思っていたので驚きもせずはっきりそうだと答えました。
するとゴボウは「俺も好きな人できた」と言いました。
私はびっくりしました。ゴボウは常々女子を見下すような典型的な思春期の男の子のような性格でしたので、女の私相手にそのような話をすると思わなかったのです。
私は誰?と聞き返しましたが、ゴボウが教えるわけがない事はわかっていました。
案の定ゴボウは「秘密」とだけ言いました。

その後はゴボウからの質問攻めに合いました。
どこが好きなのか、いつから好きなのか、
告白しないのか、付き合わないのかなどなど。

その頃私も付き合うと言うものを知り、好き同士のカップルが何をするかも周りの情報で知っておりました。少女漫画も大好きでしたので、漫画のような恋愛に憧れていた時期でもあります。

ですが告白するなど状況を想像しただけでも心臓が体を突き破って出てくるんじゃないかと言うほどに、私にとっては難題でしたので、考えた事も無かったのです。

ですがゴボウは「絶対大丈夫だと思う」と言うのです。その時私は何を根拠に?とパニックになりましたが、今思うとゴボウはメガネくんの親友であり、その彼が大丈夫だと言うことになんの違和感もないですよね。

その話を聞いてから私は告白を意識するようになります。何度イメージしても心臓は弾け飛びそうだし、ネガティブで自分に自身のない私が到底彼と付き合えるはずがないと。そのようなことを毎日ぐるぐる考えていました。

彼を見るたびに好きになっていく反面、誰かが彼と付き合ってしまったらと不安になったり、席替えで席が近くなると嬉しくなったり。
恋って楽しいですよね。
ですがそのままなんの変化も無く中学二年も終わりに近づきます。

ある日の放課後、帰る支度をしているとゴボウに呼び出されます。
「サッカー部の部室にこい」
それだけ言いさっさと行ってしまうゴボウを見て
私は困りました。
サッカー部の部室にはきっと彼がいる。
どういうことなのかは分かっていました。
でもとても嫌でした。
私はまだ心の準備はできておらず、頭の中は混乱状態。
引き止めようにもゴボウはもうすでにおらず。

仕方なく私はサッカー部の部室に向かい歩きました。

近づくたびに心臓が激しく暴れます。
どうしてこうなったのか。
ゴボウは何がしたいのか。
少しゴボウに苛立ちを覚えつつも、
頭の中はもう諦めモードに切り替わっていました。

当たって砕けてやろうじゃないか。
こうなったらもう後には戻れないし。

と玉砕覚悟で挑む準備をします。

サッカー部の部室が見えてくるとゴボウが立っていました。
私に気づくとゴボウは手招きをし部室の隙間を指さします。
除くと彼がおり他の部員と雑談をしておりました。

するとゴボウは
「あそこの花壇に連れてくる」と花壇を指さし言います。
私はゴボウにどうしてと聞きました。
ゴボウが「大丈夫っていってるだろ」と返し、シッシと私を追い払います。

こうなるともう私もヤケクソでしたので
半ばキレ気味にやってやるわと意気込み
花壇へと向かいました。

部室に背を向ける形で花壇に腰掛け、彼を待ちます。
なんて切り出そうかと考えてると私は彼との初めての会話がこの告白になることに気づきます。

最初で最後になるであろう会話の初めに何を言おうか。そればかりをぼーっと考えておりました。

すると背後から足音が近づいてきます。
来た。と思いつつも振り向く事はできず、私は下を向き構えていました。

彼の影が目の前で止まった時に見上げると
緊張した面持ちの彼が立っていました。

私はいきなりごめんと謝り話し始めました。
自分でも驚いたのですが、意外と冷静に普通に言葉が出てきて、彼も普通に私と会話をしてくれました。

ゴボウが何故か暴走しててとか、部活何時に始まるのとか、何気ない会話をし本題に入ることになります。

話しながら思ったのが彼の目は小さく黒目が大きいということ。
そんな事を考えられるほどに頭の中は冷静でした。

そして私は彼に、好きになってしまった事
もしよければお付き合いしてくれないかという事を
簡潔に話しました。
頭は冷静でしたが、早くこの場から立ち去りたいという気持ちと、早く結果を知りたいという焦る気持ちでいっぱいでした。

しばらくの沈黙の後に彼が
「いいよ」と言いました。

私はその返事を想定していなかったので
またもパニックに。
逃げたい気持ちを抑え冷静を装い
「ありがとう。よろしく」とだけ伝えました。
全然冷静ではいられませんでしたが。

部室に戻る彼を見送り、崩れ落ちそうになりながら教室に戻ります。
その姿を見ていたゴボウの怒鳴り声のような叫び声のような声が聞こえた気がしましたが、私にはそれを処理する余裕など無く、静かに教室に戻り鞄を取り学校を出ます。

学校を出てすぐ私を呼ぶ声に振り返ります。
ゴボウでした。
ゴボウは心配そうな顔で私を見つめ
「大丈夫か?」と聞きます。
その瞬間涙が出そうになりましたが出ませんでした。

私はすごく引き攣った顔で「やったー」とだけ言いました。
ゴボウは驚いた様子でした。

あの後私の反応を見ていたゴボウは私が玉砕したと思ったそうです。
それでメガネくんに怒っていたのかとその時わかりました。

誤解だという事を説明し、付き合う事になった事を報告。
自分の事のように喜んでくれたゴボウの顔は今でもハッキリ覚えています。
最初は勝手にセッティングし盛り上がっていたゴボウに怒りも湧きましたが、結果オーライだった為肩パンで許しました。

「俺も頑張る」とゴボウが言い、応援すると伝えると「◯◯」と呟きます。
私は自分の耳を疑いました。
え?と聞き返すと、「◯◯。めっちゃ好き」と続けます。
私は「ドンマイ」と彼の肩をポンポンと軽く叩きました。
彼が大きなため息をつき「応援しろや」と呟きます。

無理はないです。
だって彼の好きな子は学校一の美女だと言われている子。先輩にも後輩にも人気がある、我が学年のミス候補なのだから。
顔もよし性格もよし。文句なしの美女に彼は惚れていたのです。

ドンマイとしか言いようがない。

その後ゴボウも告白する事になるのですが案の定玉砕。
高嶺の花でした。

ゴボウとは中学三年間仲良しでしたが、高校で離れ離れになり疎遠となりました。
彼はすごくユーモアがあり、友達もたくさんいる子でしたので今も変わらず面白くて友達思いな立派な男性になっている事でしょう。

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