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中学生の頃。

- 陽キャと隠キャ -

中学の頃文通が流行っておりました。
プリクラ交換や文通。
女友達のいない私にはほとんど無縁でした。
(仲良しの先輩とは文通してました)

その頃は塾に通っていたこともあり、ケータイを持ち始めていたので、初彼のメガネくんともメールでよくやり取りしていました。

相変わらず学校内では一言も喋らない私たち。
塾も偶然同じ塾に通っていたのですがそこでも全く喋ったことはないです。

付き合い始めて数ヶ月が経った頃に異変が起こります。
またもや女子の様子がおかしい。
私を見てはヒソヒソコソコソ。
今度はなんだよ。と思いつつも普通に学業に励みます。

すると私を見ては泣く女子が一人おりました。
私は何が何だか訳が分からず、気のせいか?と思いつつも不快感を覚えます。

数日も経つと集団無視が始まっておりました。
今度はなんだかあからさまな態度で、わざわざ私の側で大声で笑い出したり、ジロジロと目が合うまで見つめ、目が合うと私を見つめたままコソコソ話始める。私が目の前を通るとわざとらしくため息をつき、黙ったまま私を見つめる。

など。以前とはパワーアップした集団無視でした。
私はもちろん理由がわからないのですが、何故だと聞くわけもなくそのまま数日過ごします。

当時のクラスにはいわゆる陽キャ軍団が多くおり、男子も女子もうるさいメンバーが集結しておりました。
その陽キャ女子に目をつけれている私は逃げ場だったトイレすら占拠されてしまい、逃げ場を失います。

このように書くと普通に過ごしていた、慣れていたかのように見えるかと思いますが、そんなことはありません。
何度経験しても嫌なものだし惨めなものです。

その時に私は初めて授業をサボります。
塾にも通い始め、心身ともに疲れていた時期でもあります。
最初は本当に体調不良でした。授業中に具合が悪くなり保健室に行くことになります。
保健室の先生に話して1時間休ませてもらいます。

するとびっくりするほどに気分が楽になりました。
気分が良くなり教室に戻ります。するとさっきまでの鬱々とした気分はなくなり、すっきりとした気分で過ごせるようになりました。

その日から私は保健室に通うようになります。

嫌な気分になってきたら保健室へいく。
誰にも何も言われなかったのは、私が真面目に学業をこなしていたことが理由でしょう。
授業中のみならず休み時間も保健室へ通うようになります。

先生の手伝いをしつつ休み時間を過ごす。
時々先生からこっそりもらえるおやつがとても美味しく楽しい時間でした。

今思うと先生は気づいてたかと思います。
気づいてかくまってくれてたのかなと思います。

保健室通いが始まって数日経つと
保健室に陽キャ軍団の一人が訪れます。
名前をアバターとします。
彼は父子家庭で遅刻と休みが多い子で、私が苦手なタイプの子でした。
面白い子でムードメーカー、先生をおちょくりつつも素直に言うことも聞くような、別に悪い子ではなかったと思います。

ですがまぁDQNといいますか。タバコを吸ったり酒を飲んだりと色々やってる事を聞いていたので、いいイメージはありませんでした。

もちろん喋ったことなどありません。

その彼がたびたび保健室に現れるようになります。
どうやら保健室の先生とは親しげでした。
私は恐怖と居心地の悪さに、ベッドから動けず彼が来ている間はじっとしているようになりました。

すると彼がいる事を知った陽キャ軍団(男子のみ)がわらわらと保健室に集まり始めます。
私はウンザリしました。
私の居場所がまた占拠されたと思ったからです。
その日はちょうどお昼休みの時間で、長い時間同じ空間に止まることになります。

私は諦めて今日の昼休みはベッドで過ごす事にします。ゴロゴロしながらカーテンや天井を見つめどうにか寝ようと試みます

うるさい。

めちゃくちゃうるさい。

お昼休みだし仕方ないです。ですがうるさい。
一体何人で来てんだよと思うほどうるさい。
すると一人が曲を流し始めます。

クラブかと。

すると先生が
「いい加減にしなさい。具合悪くて寝てる子がいるんだから、用がないなら外にでなさい」といいます。

私は最悪だと思いました。
私の存在がバレるのが嫌だったからです。
ただでさえクラスでハブられてる事を知ってるであろう陽キャ軍団に、保健室に隠れてる事を知られたくなかったのです。

するとすぐに音楽が止みました。
と同時にカーテンのそばに気配を感じます。
小さな声で「ごめんね!気づかなかった!」と聞こえます。

私は咄嗟に「大丈夫です!」と叫びました。
するとカーテンの隙間から手でごめんのジェスチャーをするアバターと目が合いました。

その後は本当に静かに過ごしてくれたのです。
咄嗟に大きな声で話し始めるとアバターが指摘し静かになる。それを繰り返していて私は気がつくと眠っていました。

先生に起こされ教室に戻ろうとベッドを出ると
アバターがおりました。バッチリ見られました。
あぁ最悪だと固まっていると
「大丈夫?」と声をかけてくれました。
私はうんと頷くと、「ごめんねうるさくして」とアバター。
私は大丈夫ありがとうと伝え教室に戻りました。

初めて陽キャと話した日でした。
なんだかよくわからない私とは別の世界を生きている人と話すのは、たとえ普通の会話だとしてもなんだか気分が違いました。

変な汗が出ました。

その後教室に戻り授業の準備をすると、陽キャ軍団はいませんでした。

帰ったな。

その後も保健室で陽キャ男子と度々遭遇することになります。
思っていたより普通と変わらない人たちでした、
洋楽が好きなDJ、彼女持ちのハーレイ、以外と物静かだったチワワ、いじられ役のアンパンマン、コワモテの同じ小学校だったエース、そしてアバター。

そして知らなかったのですがゴボウも時々一緒に現れることも知り、ゴボウにも色々彼らの話を聞く事になります。
陽キャ男子達がそれぞれ面白い特徴を持ち、中には私と同じ趣味を持つ人もおり話が合い、気付けば私も彼らの中に溶け込んで盛り上がるようになりました。

仲良くなるにつれて彼らと深い話もするようになりました。
エースが以外と真面目で、親がめちゃくちゃ厳しく陽キャ男子とプライベートでは遊んだことがないということ。
ハーレイはとても一途に彼女を思っているので、女子が参加する飲み会には絶対に参加しない事。(飲み会のワードにはビビりました。)
DJはモテるが一度も好きな子ができたことがないこと。
アバターは小学生の頃からずっと好きな子がいる事。

その頃から私はアバターの恋愛相談に乗る事になります。
そして彼の好きな子が私をいじめている主犯格だという事も知ります。

私はこれまで私の置かれている状況を彼らに話したことはありませんでした。そしてその話を聞いてからも絶対に話すまいと誓いました。

彼らは正直気がついていたかは分かりません。
私が1匹オオカミで近づきがたいイメージだったと言っていたので、気づいてなかったのかもしれません。

それからまた数日が過ぎ、保健室で集まることが日課になっていたある日。
私は付き合っていた彼と別れました。
たった数ヶ月のお付き合いでしたが、会ったのは一度だけ。メールや電話ではあんなに喋ってくれたのに会うと一言も喋らず、一緒に遊んだその数時間が地獄のように長く感じました。
その日別れてからすぐ彼からの電話で「友達に戻りたい」と言われました。
私は「わかった」とだけ言い。
私の初めてのお付き合いは何事も無く終わりました。

私はそのことをアバターにだけ伝えました。
実はメガネと付き合っていたこと。
だが彼とはメール電話以外では話したことがないこと。
初めてのデートで一言も喋らず帰宅すると振られたこと。

アバターは怒ってくれました。
むしろ怒りすぎてて怖かったです。
私はどうしてこんなに彼が怒ってるのか分かりませんでした。

すると彼が「お前みたいないい奴いないのにバカだなあいつは」と言ってくれました。
私は振られた時にこれ以上涙は出ないほどに泣きました。
あのデートは最悪だったので、私ももうだめだなと思っていましたが、いざ振られるとなんだか心にぽっかり穴が空いたような。私のつまらない学校生活に少なからず色をつけくれた彼でしたので、寂しさなのか悲しさなのか怒りなのか、なんなのか分からない気持ちでいっぱいでした。

アバターの言葉でまた涙が出そうになり私は顔を伏せて
ありがとう。でも大丈夫。あんな男。と言いました。
するとアバターは優しく頭をポンポンと叩いてくれました。そのまま私は寝ました。
彼らの楽しそうな声を子守唄に寝て過ごしました。

その日初めて、ゴボウとアバターと帰る事になります。
アバターは陽キャ男子達にバイバイと手を振り、私とゴボウの元に来ました。

その後ろから陽キャ女子が現れます。
私は咄嗟にやばい。と思い前を向き早足で校門を出ました。
後ろからアバターとゴボウが戯れ合いながらついてきます。

私はチラッと後ろを確認するとバッチリ主犯格と目が合いました。彼女はこちらをなんとも言えない顔で見ていました。

私はただ終わった。と思いました。
もうこれ以上波風立てたくはありませんでした。
彼女達が仲のいい陽キャ男子と私が帰っているなど彼女達は面白いわけがありません。

私はその瞬間から明日以降の学校の心配でメガネくんの事は忘れていました。


アバターは何故一緒に帰ってくれたかと言うと、単純に私の家を知りたかったのだそうです。
とは言いつつ心配してくれてたのだと思います。
彼はゴボウと一緒にメガネくんの愚痴を言いつつ歩いていました。

ふとアバターが言いました。「◯◯もメガネが好きだったらしいな」
私は驚いて聞き返しました。
するとゴボウが「知らなかったの?」と。
知るわけない。私には女友達などいない。
って言うか知ってるなら言えよゴボウ。
その彼女とはクラスも違うので会うことも少ない。

とは言わず、知らなかったとだけ伝えました。

私の中で何かが繋がったような気がしました。

私と彼が付き合いだして突然始まった集団無視。
私を見つけてはドラマチックに泣いて見せた彼女。

その彼女が二人の言っている子だったのです。
私は咄嗟に彼女らに無視されていると言いそうになりましたがやめました。
私はメガネくんと別れた。
もしかするとこれも終わるかもしれない。
そんな時に二人にそれを伝えて事を荒立ててしまったらどうなるかと。

言いかけたものを飲み込み私は家路につきました。

そして明日から何が起こるか想像してはゾッとしつつ眠りにつきました。

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