中学生の頃。
- 先輩 -
中学生時代の私は一言で言うと隠の者。
思春期の到来と元々の性格の押しの弱い部分が
悪い意味で混ざり合い、中学の私が出来上がりました。
中学は近隣の小学校3校が同じ中学に入学します。
ですが田舎ですので全校生徒で300名ほどの小さい中学です。
そんな小さな学校にもさまざまなドラマがありました。
私の中学3年間のドラマを記して行きます。
入学してすぐの頃は中学の暗黙のルールを知らないので、全員が日々ビクビクドキドキしながら生活していたと思います。
今思えば噂程度の事だったのではないかと思いますが、当時はとにかくトラブルにならないようにを徹底していたので自然とそのルールに従う事になります。
ルールというのは、一年は一年の校舎から出ては行けない。二年、三年の校舎を通過してはならない。
どうしても通過しなければならない場合は目を合わせてはいけない。
という、なんとまぁくだらないルールでしたが当時の私にはそんな風に考える余裕などありませんので、とにかく先輩に目をつけられてはいけない。空気のような無害な存在になるよう気をつけました。
ですが私には幸運なことに、二年の先輩にも三年の先輩にも知り合いがおりました。彼らのおかげで私は先輩達の中では特別視されるようになり、度々先輩の教室に呼ばれたり、先輩が一年の校舎に来てくれたり、すれ違うたびに先輩とお友達の方々から声をかけられ手を振られ、とてもよくしてもらいました。
しかしそれをよく思わない輩もおりました。
同級生です。私は先輩たちに目をつけられないようにという事にばかり意識を置き気づかないでいました。
一番の敵は身近にいたことに。
入学してすぐ、私は思春期女子達の的になります。
集団無視が始まりました。
理由は「先輩に私たちの悪口を言ってる」というもの。
もちろんそんな事は一度もありません。
ですが彼女達の歪んだ妄想の中での私は、自分を守るために彼女達を先輩に売るような奴だったそうです。
謎ですよ。
どうやったらそういう考えに至るのか。
今ならそれがただの嫉妬心だというが分かるのですが、当時の私には理解ができなかった。
日に日に彼女達は人数を増やしていきます。
ある事ない事を吹き込み周り、関係のない別のクラスの子までも巻き込み、休み時間になるたび私のクラスに集まっては聞こえるような声で私の悪口を言う。
正直もう慣れっこではありました。
小学生の時にも経験しているので。
ですが今回のは人数も倍。
クラスだけでは無く、学年中が私の敵のような
(実際には女子だけでしたので、話ができる男子はおりました)
日に日に私も疲弊して行きます。
その時親しかった二年の先輩が何かを察したのか
休みの日に家を訪ねてきてくれた事がありました。
(家が近所でしたのでよく遊んでいました)
何気なく会話をしていた時に
初めて私は愚痴をこぼしました。
初めて他人の愚痴を家族以外の他人に話したのです。
話してスッキリした反面罪悪感が湧きました。
先輩に何かを求めていたわけではないですが、正直うんざりしていたのだろうと思います。
まだ慣れない中学で、周りが友達を作っていく。
そのネタに使われている私。
同級生の女子達は私をネタに仲良くなり、
気がつくとグループがすでに出来上がっていました。
私はグループに入りたいわけでも、彼女達と仲良くしたいわけでもなかったです。
ただ普通に過ごしたかっただけ。それなのにわざわざ私を敵視し仲間を作っていく彼女らにうんざりしていたのだろうと思います。
それを聞いた先輩は静かに「そうか」とだけ言い
その後は関係のない話で盛り上がり解散しました。
次の日も鬱々とした気分で登校しました。
1時間目が終わり、彼女らが集まってくる前にトイレへと向かいます。
小学生からほとんどの休み時間を私はトイレで過ごしました。
学校のトイレは嫌いでした。
汚くて臭くて、ジメジメ暑いし。
ですが私が一番気を抜ける場所でしたので私にとっては大事な場所でした。
それも後々支配されますので聖地では無くなりますが。
そろそろ鐘がなると思い教室に戻ろうとすると
先輩とお友達が私の教室から出てきたところでした。
私はどうしたのだろうと思い挨拶すると先輩が
「あ、いるじゃん。どこに行ってたの?」
と。
トイレにいた旨を伝え先輩達は何をしていたのか聞くと
「お前を探してただけ。また後でね」
と言い残し二年の校舎に帰って行きました。
私もすぐに教室に戻ると女子達に見られていたような気がしました。
嫌な気分になりましたが気にしないようにし授業の準備をします。
授業が終わると先ほどの先輩達が
「◯◯いるー?」とゾロゾロいらっしゃいました。
その瞬間教室内の女子達がシンとしたような気がしました。
私は急いで先輩達の元へ行き、廊下に出てたわいもない話をし休み時間を過ごしました。
久しぶりにトイレ以外の場所で休み時間を過ごし、いつもと違う感じに女子達の視線も気になりましたが、とても嬉しかったのを覚えています。
先輩達は女子達に向けて何かを言いにきたり、脅しに来たというわけではなく、ただ私を名指しで呼び出し、教室の近く彼女達から見える場所で私と話をする。ただそれだけだったのですが、先輩にビビり倒している彼女達には絶大な効果がありました。
その時先輩は何を思いそのような行動をとってくれたのかは分かりません。
単に一人だった私の話し相手になってくれようとしただけかもしれないです。
それでも充分嬉しい事ですし、それ以上私は何も望んでいなかったので、先輩に理由を聞く必要もありませんでした。
しかしその先輩のおかげで気がつくと集団無視はいつのまにか終わっており、主犯格の子に気を遣われるまでになっていました。
(これもこれで面倒でしたが、無視よりはいいかなと思っていました)
想像以上の効果をもたらした先輩の行動には感謝してもしきれません。
もちろんその後も先輩にしっかり報告し、感謝も伝えました。
先輩は「何が?」とだけ言いました。
でも嬉しそうに笑ってくれました。
その後も先輩とは変わらず仲良くさせてもらっております。
高校時代は一緒に鼻ピアスを開けたり、
悪い事も教えてもらいましたが。
お互い母親になった今も、照れ屋でぶっきらぼうで優しい先輩が私の良いお友達の一人です。
男まさりの先輩でしたがお菓子作りが得意で、現在ケーキ屋さんをしております。
可愛くてかっこいい憧れの先輩です。