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たんぽぽ

我が家在住町内一気のいい犬、世界一(当社比)かわいいちゃん、綿毛ボンバー、老犬(おいんぬ)、塩おむすびちゃん、舌ペロリーヌ、ベロニカ、足腰よぼ子etc…こと犬ですが、懸命に治療を続けて来ましたが、この度10月22日夜の9時半頃 愛する家族に見守られながら活動場所を天国に移したことをご報告させていただきます。

以下は長く、そしていつも温かく我が家の毛むくじゃらの宝物の行末を見守ってくださった皆様への感謝の気持ちとして文章を記載しますが、悲しい気持ちにさせてしまうかもしれません。
今あまり心に元気の在庫が無い方や、一瞬でも悲しみに浸ったらばおしまいになってしまう自覚がある方々はどうか無理をなさらないでください。

以下の文章を、時には家族のように、時には隣人のように、そして時には友人のように。
長らくの間我が家の犬を愛し見守ってくださった皆様に捧げます。


我が家の最愛の犬を愛し応援してくださった皆様へ

こういった文章は本来、もう少し畏まった方がいいのかもしれません。
しかしながら、我が家で暮らした犬というのが家族の中の誰に似たのか底抜けに明るくうきうきマンボーな性格の犬でしたので、敢えて崩した文体でお送りさせて頂こうと思っております。

我が家の最愛には共に過ごした年月の分だけのあだ名がありました。
定着したものもありましたし、瞬間風速で過ぎ去っていったその場のノリだけで出来上がった愛称もありました。
タイムラインではよく「たんぽぽちゃん」「大事大事の綿毛ちゃん」と呼んで頂き沢山の方に愛された犬でした。
私自身もいつからか犬を抱き上げながら「可愛い私のたんぽぽちゃん」だとか、「ラブリーベイビー綿毛ボンバー」などと呼んで可愛がったものです。
呑気で穏やかな犬でしたが、抱き上げられるのも頬擦りされるのもキッスされるのも大層嫌がる節があり、その都度腕の中で浜辺に打ち上げられた魚が如くビチビチと大暴れしたものでした。


犬のために作った短歌

我が家に咲いたたんぽぽは、漢字で蒲公英と書けば堅苦しく、平仮名表記が妙にしっくり来るたんぽぽでした。
四季は巡るものですが、どの季節どの瞬間にも柔く穏やかに我が家に咲いてくれました。
メインで過ごすのが2階のリビングでしたので、群生地は実家のリビングです。
老いてからはあの小さな身体で果敢に父から奪い取った座椅子の上を主な根城にしておりました。
吹けば飛んでいってしまいそうな儚い見た目で、一度そこで眠るとなかなか飛んでいかない、頑固一徹たんぽぽ職犬として職務を全うしました。

犬のために作った短歌

犬の老いについてはnoteでも幾つか記事を書きました。
その度に犬の老いを受け入れ、向き合い、いつか訪れるその日を受け止める準備を自分なりに進めているつもりでした。

この度、発表があったnote創作大賞にて入選した「いつか、青果売り場で売られる梨を見て泣く日がやって来る」もまた、そのうちのひとつでした。
犬は、犬とは言えども手のひらサイズの子犬の頃から共に過ごしてきた大切な家族です。
あの記事を書いた時は自分の中でまだどうしても失いたくない、どうしても受け入れられない、どうしても一緒に居たいという思いの方が強かったと記憶しております。

老いて尚溢れる犬への愛おしさと、ここのところの体調や様子から犬と共に過ごせる時間の少なさを感じたやり場のない寂しさと心細さ。それでもきっと毎日は続いていくし、いつかその日が来るまで、そして来てからもどうにかこうにか生きていくしかないという諦めにも似た決意と覚悟を込めました。

込めましたが、まさかこんなにも早く、その日が来るとは思っていませんでした。
青果売り場で、とタイトルに付けましたが、実家で切り分けた梨を見ても全然号泣します。誰か助けてください。いいのか、おれが人間ダムになっても。

人間で言えば90歳ほどのシニア犬になるまでの間、色んな病気をしましたし時には負傷をしたこともありましたが、ド派手なものはなくすくすくと育った犬でした。
赤ちゃんの頃から先代犬の恐怖政治で支配されながらも、犬に比べれば食の細い先代犬が残したごはんやおやつの類をせっせと盗み食いしてもりもり食べる食いしん坊であったため、長年蓄えたエネルギーも結果的には長生きの秘訣になったやもしれません。
あまりにも食べ過ぎてかかりつけの先生から「これ以上太らせたら死にますよ」と言い放たれてから10数年、ダイエットに励んだり挫折したりしながらも犬はシニアと呼ばれるまで生きました。

そんなTHE食いしん坊な犬の生き様を実家から出て一人暮らしを始めて以降も見ておりましたので、この子はきっと生涯食いしん坊のままだろうと思っておりましたが、そんなことはありませんでした。
認知症を患って以降は犬自身戸惑うことが増え、心細さに泣くことが増え、大好きなごはんやおやつの類もゆっくりと受け付けなくなっていきました。
先生曰く、「高齢になったり認知症になれば段々とごはんもトイレも分からなくなっていってしまうよ」と。
それを聞いた時、普段人間相手の介護の仕事をしている私は、あぁ認知症とは人も動物も変わらないのだと思いました。
そして人と同じであるなら、今まで仕事で寄り添った人と同じかそれ以上に、我が家の最愛の犬に時間を使おうと思ったのです。

そんな時、皆様が寄せてくれる言葉や励ましに何度も救われました。

10月に入ってから一気に体調を崩した犬に少しでも安心してもらいたい一心で、穏やかな時間を増やしてあげたい一心で、藁にも縋る思いでポストした言葉ひとつひとつに寄せられる言葉の温かさを忘れません。

老犬と過ごしている方
かつて共に暮らしていた方
犬ではないけど大切な命と今を生きていらっしゃる方
動物と暮らしたことはないけど応援していると仰ってくださった方
翻訳アプリを駆使してまで温かなメッセージをくださった方々

全ての方に、感謝しています。

中には、最近大切な家族を看取ったばかりという方もいらっしゃいました。
一人ではなく何人もの方がメッセージを握り締めて訪れてくださり、褥瘡予防にはこれが良かっただとか、歩けなくなった子にはこうしてあげたら負担が軽減されたようだったとか、ごはんを食べなくなった時はこういう方法を試してみるといいかもしれないだとか。
今も尚、深い悲しみと押し潰されそうなさびしさの中暮らしていらっしゃるだろうに。思い出が瘡蓋にもならずに今もジクジクと痛むだろうに。
頂いたメッセージには、我が家の犬への心配とアイデアと共にそこで愛されて暮らしたであろう大切な存在の気配がありました。アイデアの数だけ、工夫の数だけ、失敗と成功の数だけの愛がありました。
こうしてあげたかった、もっとああしてあげられていればという後悔もまた、私は愛情あってこそだと考えています。

本当に、本当に、ありがとうございました。


犬ために作った短歌


さて、終わりに皆様方へ最後のお願いがあります。

我が家の最愛の一等かわいい大事大事ちゃんは、お話した通りのんびり呑気な性格をしております。
暫くの間眠ることに時間を費やし、思いの外天国という場所が気に入ってこの度活動場所を移したのだと思っていますが、飼い主としては無事に到着出来たのか心配で仕方ないのです。

具合の悪さも身体の痛さも認知症による戸惑いや寂しさも一切消え去って、急に軽くなった身体に大喜びするままにとんでもなく遠方まで飛んでいってやしないかと。
何処かのお家に迷い込んだり、遠い街にまで辿り着いてやしないかと。

夢でも何でも構いません。

皆様のところに、舌を出した呑気な面構えのマルチーズは迷い込んでいませんでしょうか。
もう何処も苦しくも辛くもなくなったんだとは分かっていながら、旅立って尚何処かの隅、何かの角で通行止めになって泣いていないかと心配で、犬を私の人生から失った日からどうにも上手く眠れません。
なのでもしも、もしも思いの外遠くまで飛んで行った我が家の大切なたんぽぽ大魔犬が皆様方の元に現れましたら。
底抜けに明るい割にはどうも人見知りの犬見知りの節がある犬なので苦労を掛けるかもしれませんが、その際はどうか助けてあげてください。

もう隅に挟まって泣かなくてもいいと
もう毎日病院に通って点滴をしなくてもいいと
もう抱きしめられながら大好きな人達に泣かれることもないと

今に記憶も戻り、大好物も思い出すこと。
もうどれだけ食べてもこれ以上太らせると死ぬと言われることはないこと。
だけどゆっくり食べて、お水も飲んで、それから。
それから、いつか落ち着いた頃合いでいいから、会いに来てと。

いつもよじ登って肩に担いでくれた母の匂いのする場所へ。
いつも足元に纏わりついてお腹を出す犬を撫でてくれる父の掌の届く場所へ。
忙しさの合間顔を出しては優しく撫でて愛してくれた姉の居る場所へ。
そして、ふざけたあだ名ばかりで呼ぶ私の寝そべる真横へ。

のんびり屋な犬が一番安心出来る我が家に戻れるように。

どうか、どうか、お手隙の際で構いません。
覚えていたらで構いません。
お力添えを頂けたら幸いです。

家族が生涯掛けて愛したように、大切にしたように、我が家の最愛を愛し可愛がってくださった皆様。本当にありがとうございました。

繰り返しになりますが、本犬は明るく元気な面白DOGですので、可愛く元気な犬を覚えていてください。
犬と、犬に作った短歌を最後にまたひとつ花瓶へ挿して、どうにも纏まらず不恰好なこの感謝のお便りを終わろうと思います。

ありがとう。

柔らか仕上げのフクダウニー


大好きな母と





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柔らか仕上げのフクダウニー
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