児童の「実在性」―メタ倫理学の観点から―
これの続きです。
前提として、表現規制問題の難しい所は、両成敗的に、ほぼほぼ代理戦争みたいな状況になっていて、これはトランスジェンダーとか、小児性愛、米国の中絶、銃規制なんかもそうですな。トランスジェンダー問題はイギリス等の「先進的」状況を見るに、昔よりかは収まってきてはいるが、ジェンダー論だけでなく、部落問題(同和問題)や、外国人差別もそういう側面がある。
表現規制全然関係ないけど、例えば差別問題。
外国人差別だったら、実際に「(大家や、管理会社が)実習生、または外国人同士のトラブルを懸念して技能実習生に部屋を貸すのを嫌がる」とか、今はそんなことはほとんどないけれど、「在日韓国人だとわかったら就職で不利になる」とかですね。まあ就職差別や結婚差別は比較的解り易くて、裁判もあった。31A7A09109AF9DB849256A57005AEC5 (courts.go.jp)
なので今は外国人差別や部落差別は、60年代や70年代に比べたら殆ど改善されているのだけれど、そもそもの認識が違うから、左翼と保守は永遠に分かり合えず、プロレスごっこをしている。保守速報なんか見ればわかる。
表現規制の話をすると、規制派はまあそうなんだけれども、問題は規制反対派の中にも喧嘩を売るような言葉遣いをする人がたまにいる。勿論すべてではないけれど。こういった保守派vs左翼やリベラルの代理戦争的なところは改善すべきだと思うってメタ倫理学からずれた。
本題です。
「児童」は実在するか
ここで問題となるのが、児童の実在性で、子供概念については、アリエスの『<子ども>の誕生』がいいかもしれない。子供論についてはこれを見たい。
「実在」をメタ倫理学ではどう扱うのかといえば、「私たちの心の在りようから独立に存在する(佐藤, 2017)」ものとし、「私たちの心の中にしかないものとか、気持ち次第であったりなかったりするもの、心の在ちように依存するものでなく、あくまで私たちの外側の世界の側で決まっている(佐藤, 2017)」だそうです。
「実在」というキーワードは、メタ倫理学では頻出ワードなんで、覚えておいて損はない。
子供を巡るメタ倫理学的考察
強固な実在論
特徴
「保護すべき子供」という絶対的真理
独立した「子供」観
長所としては、
定義が明確であるため、政策に反映しやすい
保守からリベラルまで、多くの人間に共感を得やすい
解りやすい
課題としては、
子供の発達段階や性格によっては抑圧と捉えられやすい(特に性に積極的な子供)
フェミニズム文脈における「家父長制」と類似する理論的脆弱性
少数者をおざなりにする場合がある
政府の介入を肯定し、権力に媚びる傾向が強い(リバタリアン的視点)
ドイツのブロードバンド普及は児童ポルノの不法所持を増やしたが、小児性犯罪は減らした論文 (anlyznews.com)
ネットやら本を見ると、これが一番多い気がします。非常に多数派であるため、警察庁や行政ベースはこの思想です。山田太郎氏なんかがそうですが、表現規制反対派の子供観も、やはりこれが多い。欧米でも結構あったりします。
理由の実在論
子供を保護せねばならない理由を提示する
子供という存在の価値よりかは「理由」に重きを置く
長所としては、
理由を提示することで、相手が納得しやすくなる
強固な実在論に比べ、多少論理的
「強固な実在論」ほどの押しつけがましさがない
課題としては、
理由が誤っていた場合、論理自体が変になる
自然的な「子供」概念と比べて説得力が弱い
支援や福祉職の多くはこの立場であり(例として、児童虐待防止法、発達障害者支援法)、宮口幸治氏なんかが代表例です。
普遍主義/絶対主義
保守派に強く支持される
特に絶対主義は宗教的規範と結びつきやすい(典型的なのがキリスト教。また教義自体はキリスト教とは大きく異なるが、統一教会は?カルト的性質を持つ団体では?またそのような団体と、一般の宗教団体との違いは?)
道徳的相対主義
・一部のネット民(一時期の2ちゃんねらーなど)に強く支持される
・社会通念上許されなかったり、人権を侵害する行為(FGM(女性器切除)、かつてのサウジアラビアでの女性の運転規制、ターリバーンの女性の中等・高等教育制限)も文化としてなあなあにしてしまう危険性
かのレイプレイ騒動の時に出てきたのがこの立場だった。ですが、上記のように文化をどうコードするかと言う問題は出てくるだろう。
という訳で主な論理を書いてみたけれど、どれも私はしっくりこない。私の思想がかなり特殊なのもあるんだろうね。メタ倫理学は難しい。
矢張性のことはイデオロギカルな側面も伴う為特に日本では真摯に語られない傾向があるが、この問題については書いていきたいし、コメントでもどんどん指摘してください(やりなげ)。
参考文献
佐藤岳詩『メタ倫理学入門 道徳のそもそもを考える』勁草書房、2017年。
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