カタオモイの前兆
ずっと仕事の事しか話してこなかった彼
ずっと仕事の事ばかり聞いていた私
慣れない仕事、ミスばっかりで辞めたくなったときもやっぱりあった
前々からやってみたかったカフェのバイト
なんだか楽しいっていう気持ちが浮かばなかった
バイトがある日も気持ち悪くなったり、行きにくかった
やる事も覚える事も多くて入って1ヶ月で辞める人もいるぐらいだ
ミスが連発して、お客さんの前で皿ごと落としたこともあった
焦ったりパニクったりして周りも見えなかった
頑張りたいって気持ちがどんどん落ちていく
バイトの裏で泣いた日もあった
そんなある日、バイト終わり
たまたま彼と話すタイミングがあったことをふと思い出してみる
ミスしたこと、上手く行かないこと、バイトでわからないこと
彼は私と違って周りも見えて冷静に物事を判断も出来て、尊敬していたからすべて打ち明けてみた
今まで誰にも相談できなかったからこそ勇気をだして下を向きながらぼそっと私は呟く
彼はニコって笑って私に、こう言った
「最初は誰だってミスするよ。〇〇〇さんは繊細で神経質で一つ一つ丁寧に仕事しているから雑で自由な俺からしたら尊敬だな〜」
恰も私の事を見ているよって遠回しにさ。
「なんかあったらいつでも話聞くよ」
嬉しかった
救われた気持ちになった
私の傷を絆創膏で貼って労ってくれるように
彼の言葉が暖かかったんだ
その日がきっかけで彼とラインを交換した
バイトから家に帰り、お風呂に入りながらラインを送った
携帯の中でもいつもと変わりなく優しく返してくれる
バイトでわからないことをいくつか聞いたあと
「勉強熱心で偉いね、頑張って!」
と来た
テスト合格した日
彼に合格したとメッセージを送ってみた
「おめでとう!焦るとミスしがちって言ってたから落ちないか心配だった笑〇〇〇さんは努力家だからすぐにできるだろうと思ってた!」
直接でも文面でも、ずっと優しい彼だった
普通、かっこよくてこんな優しくされたら誰だって好きになる
けれど、私はなれなかった
人として尊敬してる人
ただ、それだけだったんだ
そのままでよかったのに
いつの間にか私は彼に心を奪われていた