【経済】それっぽい説明に惑わされないように賢くならねばならんよなという話
年末は税に関する議論が活発になる時期だ。
2023年も防衛費の増額に伴う増税論議が注目を集めた。
もともと防衛費増額は、2022年に岸田文雄首相が防衛費を2027年度に国内総生産(GDP)比2%に引き上げると言ったことがきっかけだ。
この防衛費の増額自体は昨今の安全保障環境を考えればまっとうなものだったが、その財源調達の方法が増税(法人税・所得税・たばこ税の3つで2027年度にも1兆円強を確保する予定)だとわかると、メディアはこぞって「防衛増税」などと騒いだ。
増税となると我々市民も嫌がるということで議論は紛糾。結局増税の実施時期については「2024年以降の適切な時期」という、この上なくふわふわした表現に落ち着いた。報道などによれば、2024年の実施は見送られた。
さて、こうした議論を眺めていると「防衛費を増やすためには増税をするしか無いのか…」という気持ちになってきてしまうのだが、実際のところ資金調達の方法は多様である。たとえば国債を発行してもいいし、国が持っている不要な資産を売ってもいい。
そもそも「なんか増税じゃないとだめっぽい」空気になっていることこそ、政治家の思うつぼなのである。だからこそ私たちは真剣に社会の出来事と増税のありようを吟味し、「増税じゃ無くてもいいだろ」と騒ぎ続ける必要がある。そして今回は実際に多くの人が「防衛費増額で増税ってどういうことだ」と問題視し続けてきたのだ。
すると、政治家も増税じゃなくてもいいということを勝手に口走ってくれる。自民党の幹事長などを務めた甘利明氏はその種明かしをしてくれた一人だ。
2023年8月、甘利氏は防衛費増額の財源をめぐり「NTT株を数十年かけて売却すれば安定的な財源確保につながる」と述べた。要は、株を売った利益が防衛費に充てられることを自ら白状したのである。政治家もバカではないので、税金を上げる以外の選択肢があることはよくわかっている。
「国を守るための防衛費を増やすため、国民の皆様に負担をお願いして税金を上げさせていただきたい」というのは一見するとそれらしい政治家の主張に聞こえる。だがそれを唯々諾々と受け入れて損をするのは私たちである。
増税のためなら真顔でウソをつけるのが政治家だ。損をしないよう、私たちは批判的に政治家のうたう「それっぽい増税」を疑わなくてはならない。