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乗客トラブルを見て考える

この間、電車内でのちょっとしたトラブルに遭遇した。
車両内で足を伸ばして座っている若いカップルの男(足長)がおり、歩いてきたコワモテのでかい男(コワモテ)が足長の足に突っかかったことに話は始まる。

コワモテは当初足長のだらしなく伸ばされた足に突っかかったあとに通り過ぎていったのだが、足長が気にするそぶりもなくスマホをいじってヘラヘラしていたのが気になったのか、わざわざ足長の横に戻った。
コワモテは足長に詰め寄り、何かを言っている。しかし近くに来てもそれを意に介することもなく足長はヘラヘラしながらスマホをいじり適当に謝っているようだった。
コワモテは声を荒げ、「人に謝るときにそんなヘラヘラしてんじゃねえ」的なことを言った。
足長もようやくそれらしく謝り、一旦休戦モードに入ったが、懲りない足長はその後電車内で足を組み始めた。コワモテはそれを見逃さず「電車で足伸ばしたり足組んだりすんじゃねーよ!」とまあまあでかい声で足長を怒鳴りつけた。
胸ぐらまで掴んだので「すわ開戦か」といよいよきな臭さが増し、大東亜戦争以来の戦時状態に入ることをひとり覚悟したが、幸いにもコワモテも理性を取り戻して自制したため、それきり2人の間でやり取りは生じなかった。

冷静に考えてみると発言内容自体はコワモテが正しいし、非があるのは足長である。ただコワモテも好戦的な様子を見せて周りの人に不穏な印象を与えてしまった。というか何よりコワモテが「座っているときに足をだらしなくするな」という電車内のマナーを説いているのに、彼自身も周りの人が驚くようなデカい声で怒鳴るというマナー違反を犯しており、結局お互いさまみたいな感じになってしまった面は否めない。

しかし、足長からは、生意気な子供のような冷笑と人を馬鹿にした態度が感じ取れた。言うなれば、感情的になっている人を見下したようなインターネット的ふるまいと言って良い。
何の危害も加えられないネットとは異なる現実での出来事である。実際に殴りかかられたらどうするつもりだったのだろう。

「論破」や「マウント」を重んじ、人を小馬鹿にして対応するようなインターネット的振る舞いを前に、まともな大人なら感情的にならずにうまいこと相手方に非を伝える必要があるのであろう。
それは裏返せば、インターネット的振る舞いをするやつの面倒くささの表象でもある。マナー違反でしょ、と言っても、何もわかろうとせずにそのまま居座ろうとする幼い「おとな」に、わざわざそうした一手間を加えないといけないという意味で、足長は実に面倒臭い。

たぶん、インターネット的振る舞いをする人間は現実社会でのコミュニケーションがかなり面倒くさい部類に入るのであろうなあ、と足長の様子を見ながら思った。そしてもし彼が大人から敬遠されたとき、足長には一体どんな未来が待ってるのだろうーーと、2度と会うことのない彼にお節介な心配をしながら電車を降りた。

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