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重厚な骨董レンズの勇姿『Carl Zeiss Jena Sonnar 8.5cm f2』
中望遠の画角が好きな私は、いつかは手に入れたい…と夢想していたレンズがあった。
『Carl Zeiss Jena Sonnar 8.5cm f2』通称"85ゾナー"である。
ツァイスイコンのコンタックス用交換レンズとして開発された、当時としては驚異的な明るさを誇る望遠レンズ。
いつもフォトウォークでご一緒しているtogorinさんが使っていらっしゃるのをみて、移り気な私(笑)は密かに憧れていたのであった…(Leitz Summarex 8.5cm f1.5を持ちながら…我ながら強欲である。)
togorinさんのSonnar 8.5cm f2
クロームメッキのキラキラした鏡胴と、ライカレンズと異なるマッシブな雰囲気、そしてノンコーティングレンズの素朴な美しさ。
こんなに格好いいレンズなら撮れる写真もさぞ素晴らしかろう…いかにもやってくれそうな見た目である。
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右 : Carl Zeiss Jena Sonnar 8.5cm f2
そして85ゾナーへの憧れを燻らせながら、ブラックコンタックスを入手。
ブラコン&テッサー 5cm f3.5の組み合わせで、フィルムを数本通した。ブラコンの機構を愉しみながら、テッサーの写りの良さに感嘆し、「ブラコン用レンズはこれだけでいいかな〜」等と思っていた矢先、フラッと訪れたいつもレンズでお世話になっているカメラ屋さんのショーケース内に鎮座していたレンズに目が釘付けになった…。
私の物欲、朝令暮改にも程がある。(笑)
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そしていつの間にやら、ブラコンはアルバダファインダーを装備した。
そもそも、ゾナー 8.5cm f2は中々なレアモノ。
コンディションの良い個体を探すのは骨が折れる。
そんな中、まさかブラックコンタックス用のペイント仕様ゾナーに出会ってしまうとは…。
真鍮にニッケルメッキ&ブラックペイントが施された鏡胴と、びっしり詰まったガラスの塊。贅の限りを尽くしたような、重厚感が桁違いなレンズだ。
出会った個体はハードユースされてきたであろう塗装ハゲ、メッキハゲが目立つものだったが、ガラスはかなり綺麗な状態。拭き傷が多少認められるが、昭和9年頃に製造され、戦火をくぐり抜けてきたものとしては形を保ってるだけでも奇跡である。
大切に使ってきた歴代のオーナー、そして今私の手元に来てくれた縁に、感謝感謝である。ブラック85ゾナー購入の顛末は、ブラコンを入手してわずか数週間足らずの出来事。まさに、カメラがレンズを引き寄せたような縁の巡り合わせ…。
文化遺産と言って良い骨董レンズを愛で、撮影を楽しむ。
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さて、肝心な写りであるが…
柔らかで瑞々しくも、シャープさと鮮明さは捨てきらない。非常にバランスが良く、絞り開放から素晴らしい写りを見せてくれる。
絞り開放では合焦部にわずかな滲みが生じるが、これみよがしな主張はない。"絞るとシャープ"はオールドレンズの常套句だが、特に絞る必要性を感じさせない程、開放からよく写る。
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光の捉え方がなんとも穏やかで、癒し系な描写。
ノンコーティングが齎す恩恵か、発色やコントラストは少々控えめ。
背景は丸々としたボケが生じやすいが、クセはあまり感じられない。
何があるのか判別不能なまでに豪快にボケていくという事はなく、形を保った状態で、輪郭を残しつつボケていく。
オールドレンズというと残存収差による崩れた描写、所謂"クセ玉"を楽しむ向きがあるが、85ゾナーはあまりそういう使い方は出来なそうである。端正に、あるがままを写す。あまり脚色のないレンズだと思う。
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やはり、モノクロームでセピア調に仕上げるのが一番だろうか。
レンズの製造年代的に、カラーフィルムが普及する遥か昔の製品なのは間違いない。かつてこのレンズがフィルムカメラについていた時代と同様に、オールド風に仕上げてみるのもまた一興だろう…。
コンタックス1型に、85ゾナーをつけて撮影する。1930年代にこの組み合わせで撮影した人は一体どれくらいいたのだろうか。
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私論だが、カメラやレンズは『格好いい』が一番だと思う。
序盤で表したように、私はまず格好で機材をみてしまう。いい写真が撮れそう、使っていて面白そう、そういうワクワク感を総合して"格好いい"という印象に繋がると感じている。
極論、撮影者の気分を上げてくれるカメラやレンズならどんな機材でもお構いなしなのだ。
それがたまたま私の場合、製造から100年が経とうとしている古いレンズだっただけである。
…しかしこの85ゾナーの百戦錬磨のつわ者感は、いつ眺めても手にしても、本当に素晴らしい。そしてコンタックス1型との相性もまた、言わずもがな抜群である。