30歳のロリィタデビュー①
ロリィタファッションに年齢制限はない!といえどもやはり勇気がいるのが実際の世の中ではあるが、私の背中を後押ししてくれたのは皆さんご存知青木美沙子ちゃんだった。というわけで今回は私のロリィタデビューの話を綴ろうと思う。
私は中学生の頃に初めてロリィタファッションというものに出会い、強く心惹かれ、ゴシックロリータバイブルを愛読したり、アリプロを聴いたりしているロリィタ精神の持ち主だった。だがしかし当時の私にとってロリィタファッションは着るものではなく見るものに等しく、それらしい小物を持ったりする程度で(恥ずかしながらボディーうんたらの服に手を出したりしたこともあったが)(安価なので)満足していた。高校時代も同じく小物程度で僅かながらにロリィタ感を出していたため、遠足の時にSM2の服を着ていくと友人たちに「ロリィタっぽい格好で来るのかと思ってた!意外だね。」と言われるほどには趣味がダダ漏れていた。高校を卒業してからは浪人をしていたため、ロリィタどころではなく大学に進学してからもロリィタ情報に触れることはなかったが、転機は就職して体調を崩し休職している間に訪れた。
ある時Twitter(Xと呼びたくないのでこう呼ぶことにする)で10代の頃憧れた青木美沙子氏のアカウントが存在することを知り衝撃を受けた。まだモデルを続けていらっしゃったのか、でももうだいぶ歳じゃないか?と失礼なことを考えていたがまったくそんなことを感じさせないいきいきとした姿で彼女はロリィタモデルとして、また看護師として活躍していた。その時、私の心の片隅に追いやられていたレース付きのリボンがキュッとしまったような気がした。私も着たい。もう30歳になってしまったけど、今着なければ一生後悔する。そう思った私はオンラインでモワメームモワティエの白黒のヘッドドレスを購入した。かわいい。かわいすぎる。レースの模様がまずかわいいのにそのレースがモリモリにあしらわれている。そして10代の頃憧れたゴスロリのヘッドドレスをつけてみた。それだけで気分が高揚し、やっぱり全身なんらかのブランドで固めてみたい。そう思った私は休職中の身ながら早速行動に出た。
ロリィタハートに火がついた私は全盛期のマイク・タイソンをも吹っ飛ばす勢いで心斎橋にあるアメ村に出向きアトリエピエロやベイビーザスターズシャインブライト、アンジェリックプリティ、メタモルフォーゼタンドゥフィーユ(全部カタカナなのは許して欲しい、打つのがめんどくさいのである)などのロリィタブランドのショップを訪れることとなった。初めに訪れたのはアトリエピエロだった。ゴスロリ寄りのセレクトショップの顔を持つその店には私がヘッドドレスを買ったモワメームモワティエのワンピースなどもあり、初めて訪れるゴスロリのお店に若者の言葉でいうところの「テンションがアゲ」(これももう古いのかもしれない)の状態になった。気になったのはシェグリットのシンプルなワンピースで試着してみたがサイズが合わず断念した。そう、何を隠そう私は身長167㎝のデブなのである。肩幅や胸囲が合わずショックを受け次なる店へとトボトボと移動した。上記の理由もあり私は某うさぎのなんとかちゃんが嫌いである。
次に訪れたのはアンプリことアンジェリックプリティだった気がするが、個人的に甘ロリはそこまで興味がなかったため見ただけで終わったがやはりかわいかった。店内が甘いものでいっぱいのクッキー缶のようで素晴らしかった。その次には嶽本野ばらの著作である下妻物語でもその存在感を示したベイビーザスターズシャインブライトの扉を開いた。やはりロリィタの王道、サンプルのお洋服の迫力が違った。小物類も愛らしく、ガラスケースの中で数多の小物たちが鎮座していた。しかしながら「これ!」という1着が見当たらず、ベイビーも何も買わずに後にした。
そして最後に訪れたのが今後メインで通うことになるメタモルフォーゼタンドゥフィーユであった。ここまで書いて思い出したが、この時の訪問は2回目であり、その前に友人とメタモを訪れ黄緑のすみれのワンピースを試着していた。その時は初めてのロリィタ姿の自分に感激したものの買う勇気がなく何も購入せずに退店したが、今度はここで運命の出会いをすることとなる。
運命的な出会いを果たしたのは少しクラロリ(クラシックなタイプのロリィタ服をこう呼ぶらしい)感のある青い花柄のJSK(ジャンパースカートをこう略すらしい)である。このお洋服を見てこれが着たい!と強く思った。10代の頃イノセントワールドやメアリーマグダレン、ヴィクトリアンメイデンなどのクラロリブランドに憧れていた気持ちが蘇り、白いブラウスに袖を通し、そのJSKを着た時、これだ!!という気持ちになることができたのである。その後の私は完全に脳汁がドバドバの状態になり、JSKとブラウス、ヘッドドレス、パニエ、靴下、靴の総額約10万円分の買い物をすることとなった。店員さんにもこんなお客様は珍しいですと言われた。そりゃそうだ。ロリィタブランドのものは基本的に高価なものが多いため、みんな普通は少しずつ買い足していくのだろう。だがその時の私はとにかく全身ロリィタになりたくて、そのためなら10万なんぞたいした額ではないと頭がぶっ飛んでおり、プリティウーマンのように両手に服の入った紙袋を持ち店員さんに丁寧に見送られながら店を出た。
その後、私はTwitterで出会ったフォロワー宅に出向き、もう1人のフォロワーと3人で談笑したのち実際に買ってきたロリィタ服を完全装備した姿を見てもらうこととなった。ありがたいことにロリィタの姿を見てフォロワー2人は「かわいい!」「すごくいい!」と言いながら写真を撮ってくれた。優しい。そして私はロリィタの扉を一つ開いたのである。
だがしかし、だがしかしである。ロリィタを着ることの次なるハードルは何を隠そう「ロリィタ服を着て出かける」ことである。このハードルが精神的になかなかの高さであった。次回はそのことについて書いてみたいと思っている。