精神病院体験記①

 ある日、私はODで死のうとした。きっかけは色々あったと思うが、長期の休職から復職してしばらく経った頃の話である。「ああ、もう無理だ。」そう思った私は持っている薬をかき集めて数十錠の薬を飲み、スマホの下にパスワードを書いた紙を置き、ソファに横たわった。ああ、やっと妹のところに行ける(妹は生まれてすぐに他界)と思いながら目を閉じた。薄れていく意識の中で母が泣きながら何かを言っているのを感じたが、次に意識を取り戻したのは病院のベッドだった。心配そうな顔をしている彼氏がいた。彼氏は私が送ったさよならのLINEを見て仕事を早退しHCUまで来てくれたようだった。ちなみに私と少し会話した後、帰ろうとした時に看護師に見つかってバチクソに怒られていた。そりゃそうである。ただコロナ禍のHCUにザルな通し方をした受付も悪いと思う。でも来てくれてありがたかった。
 その後かかりつけの心療内科で精神病院への入院を提案された。拒否すると医療保護入院(みたいな名前、記憶が定かではない)になり、強制的に精神病院に連れて行かれた。そこでは院長に「結構危ない薬飲んでたから下手したら死んでたよ」と言われたが、だったらもうそのまま死なせて欲しかったのに、と思った。そこから私の閉鎖病棟生活が始まった。 
 最初の1〜2週間ほどは多めの薬を飲まされとにかく寝ていた。自分がどんな生活をしていたかほとんど記憶がない。ある程度落ち着いてきた頃、テレビの前にテーブルと椅子がある場所に数人の患者が集まっているところで食事を摂るようになった。みんな個性はあるものの穏やかで優しかった。スマホも筆記用具も禁止だったため、やることがないので廊下を散歩するなどしていたが真っ暗で静かな個室がいくつもあるのに気づき少し怖かったことを覚えている。とにかく他の患者と話したり折り紙をしたり、新聞を読んだりテレビを見たりする以外にできることがなかったので少し退屈ではあった。何週間そこで過ごしただろう。気がつけば看護師から隣の病棟に引越しだよ、と言われ、多人数の閉鎖病棟へと移動になった。そこで2ヶ月ほど過ごすことになるがその話は次回に持ち越そうと思う。

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