不明瞭な明日と命へ向き合う

母と共に借りていた家の引渡しを終え、お世話になった大学の支援室に挨拶に向かい、帰ってきた。
あと一度、週明けに向こうの病院で受診の予定があるから京都に行くが、その時にはもう実家から出かけて、実家に戻ってくることになる。
そしてそれを終えたら、京都に行くことはもう当分ないだろう。

もう京都に家はなくなって、本当に実家しかなくなるのだという実感が湧くと、この先うまくやっていけるのかという不安がどっと押し寄せてきて、頭痛とめまいでまっすぐ歩けなくなった。
せっかく今までお世話になった職員さんが「卒業おめでとう」と声をかけてくれたのに、頭がぐらぐらして思考がぼやけてまともに会話できなかった。
情けなくてつらかった。
心が落ち着いたら手紙でも書こうと決めた。

ふらふらで家に帰り、ベッドに飛び込んだ。
あんなに疲れていても1時間おきに目が覚めて、いやな体の重さだけがべっとりへばりついて離れなかった。

数年前の私は、このまま京都で就職するものだと思っていた。
もともとうつ病ではあったが、就労すら厳しい状態になって実家に戻ってくるとは微塵も考えていなかった。
後悔と自責がぐるぐると頭の中を回る。
簡単には断ち切ることのできないそれが、もう気持ちを切り替えて進んでいかなければいけない私を、いつまでも過去に縛りつけている原因だと思う。

前日の疲労を引きずったまま一日を過ごしていると、施設にいる祖父が容態が急変して救急へ運ばれたと知らされた。
頭が真っ白になって、嫌な音がして、発作が出てしまった。

祖父は私が小さな頃に事故に遭い、体が不自由になり、コミュニケーションもなかなかうまくとることができない。
それでもずっと、大切に大切にしてもらっている。
そして、数年前に末期の胃がんであるという宣告を受けたが、告げられた余命をすっ飛ばして今の今まで元気に過ごしていた。

いつか、というのは覚悟していた。
人間誰しもにそれが訪れることも分かっている。
けれど、その気配がすると私は立っていられなくなってしまうほど弱かった。

祖父の急変を知らされてから、胃痛と頭痛で倒れ込んでしまった。
胃が絞られたように震えて、頭がぎちぎちと締め付けられる。
どっと不安が押し寄せて、勝手に涙が溢れてくる。
手元にあった安定剤を飲んでひとまずは落ち着いたが、鎮痛剤では紛らわせられない痛みがまた私を底へ突き落とそうとしてくる。

祖父は今は落ち着いてはいるようだが、いつまた急変するか分からない。
家中にぴりぴりした空気を感じて、息を吸っても吸っても呼吸した気がしない。
沈んでいる心にさらに錘が乗っかった感覚だ。
明日が来るのが怖い。

様々な感情に追われているのは私だけではない。
当然、私以外の家族もそうである。
なので、あまり私ばかり辛いと言っていられない。
でも、落ち着いて過ごせるほどの心のキャパが空いていない。

正直今までこういう気持ちの整理が付けられない時は、逃げるように過食や自傷に走っていた。
それができない今、この気持ちから一瞬目を背けることもできない。
もう既に頭が爆発しそうだ。

ひとまずここに気持ちを吐き出しておく。
うつ病のわたしがいずれ訪れる誰かのさいごと向き合わなければいけないとき、どうしたら気持ちを保っていられるのか、本当に不安で、苦しくて、悲しくて、どうしたらいいか分からない。

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