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今日の占い

今日は最悪な一日になるはずだった。

今日はいつもより10分遅く起きてしまった。

いつもの電車には間に合わない。

天気予報では今日は真夏のような一日になると言っていた。ということは日差しを全身で浴び急ぎ足で駅に向かうから、暑さは倍増しマスクの中は汗まみれ。

汗まみれのまま電車へ乗り込み、汗をかいている事がバレないように流れる汗は私のものではないかのように窓に映る遠くの新宿を見つめクールに装う。

今日出勤の上司は無口で、仕事が嫌いで、いつも何かをしているふりをしている。気まずさしか兼ね備えていない上司と二人きりの空間は、私を狂わせる。

あまりの静けさに耐えきれなくなった私は何か話さなければと、今年は横浜での海水浴は禁止になったみたいですよと慌てて口を開く。慌てたせいか滑舌も曖昧に早口になってしまい、上司に聞き直されてしまう。二回言うほどの大した内容でない上に、お返しの言葉は「そうなんだ」の一言。静けさを耐えればよかった。さっきまでの静けさを悠々と越える長い長い宇宙遊泳が始まる。


8時15分。急ぎ足で歩き出す。風が吹いている。私の汗が風に乗り颯爽と飛ばされていく。

いつもの電車に間に合う。電車は空いている。

9時出社。まだ誰も来ていない。電話が鳴る。熱が出たと上司から。

『今日の占い一位?』

私は神や仏、占いや今までやってきたおまじない、ありとあらゆるものに感謝した。

私は今日に限って朝の占いを見ていなかった。

携帯で調べた占いでは一位なんかではなく真ん中の六位だった。ラッキーアイテムに何か特別な物があるはずだと思いラッキーアイテムのページを開いた。

すると、それは「スマートフォン」だった。

これのおかげなのか・・・

今日は最近過ごしてきた日々の中でも、群を抜いていい一日だった様に思えたから何だか府に落ちなかった。

しかし私は誰かに今日一日を感謝したい気分だったので、ラッキーアイテムであったスマートフォンに大いに感謝をする事にした。

10分だけの寝坊に留めてくれた事、上司からの電話を繋いでくれた事、そしてラッキーアイテムでいてくれた事。

今日すべての感謝をあなたに。