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2021年 心に残った展示

 2021年けっこう長かったなぁ。今年は地方のアートプロジェクトが盛り上がってるけど行けない、展示の予約が取れない、演劇チケット取れず見に行けないなど…が続いたけれど、都内企画もいろいろあり、新しいギャラリーも増えたような、活気ある1年だったような気もした。今年はよかった5つの企画展を。

1. 妄想山展 @DIGINNER GALLERY 
伊藤佳美さんの絵画作品、原藍子さんの刺繍作品、野田沙織さんの木彫作品という3人展。3人とも山が好きで登山するという共通点で、山の作品が並んだ。開催された3月はまだ外出の自粛が続いていた時期で、登山に行けない分、山脈を彫刻したり、空想の山の空想の登山記録をつくり、絵や刺繍作品で表現していた「妄想」である、という訳である。それぞれの作家は(失礼ながら)存じ上げなかったが、なんとなくタイトルに惹かれて行ってみた展示だった。行ってよかった!どんなルートで登るか妄想しながら山を掘ったり、地形をイメージした空想登山ルートの記録を描くといった表現がとても魅力的であった。空想都市とその地図をつくる人々がいるけれど、それにちょっと似ている、作っている作家側はすごく楽しいだろうし、登山経験があるからこそ、登山ルートも作れる、まさに最高の大人の遊びの面白さに触れてワクワクした展示であった。

2.「ストーリーはいつも不完全……」「色を想像する」ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展 @東京オペラシティアートギャラリー
これも、コロナ禍だからこそ実現した企画だった。当初ライアン・ガンダーの個展の予定が、作品も作家も来日ができなくなり、
「収蔵品展のキュレーションはイギリスからできるのでは」と申し出があり、当初上階(4階)で予定していた「ガンダーが選ぶ収蔵品展」を全館で開催した。という話である。
結果として、オンラインでのやり取りでもこんなにできるんだ!という非常に楽しい仕掛けとしっかりしたコンセプトがあるおもしろい収蔵品コレクション展だった。1階のライトで照らして見てまわる、というのも、プライベートコレクションだからこそ、柔軟性があり実現したのではないだろうか。LEDライトとはいえ、強い光を自分で絵に当てるって、なかなかできない体験だ。

3.マーク・マンダース —マーク・マンダースの不在 @東京都現代美術館
金沢21世紀のミヒャエル・ボレマンスとの企画展は行けなかったけれど、これは絶対に!と楽しみにしていた展示。大作をたっぷり堪能できる贅沢な空間だった。また、その後もコロナの影響で本国に戻れない作品が、企画終了後も常設空間に新たにインスタレーションされて見れたのもよかった。その際、近くのコーナンホームセンターに4時間限定で作品が置かれるなど、美術館と作家の良い対話と展開がなされた仕掛けだな、と感じるところまで、全部よかった。

4.今津景 Mapping the Land/Body/Stories of its Past @ANOMALY
今津さんも大好きな作家。久しぶりの日本での個展という事で、文句なしのエネルギーを享受できる空間だった。インドネシアに拠点を移し、結婚出産を経て、それが作品に反映されている部分もあるが、変わらぬテーマや作風も残る。また、インドネシアの地元のアートヒストリーをリサーチしていたりするのも非常に興味深かった。西洋中心のアートヒストリーでは語られない作家の軌跡が文字や作品というかたちで語られて、広がることが期待される。私も知りたいと思った。

5.Encounters in Parallel @ANB Tokyo 
長田奈緒、西村有未、山本華、横手太紀というフロア、小山泰介、藤倉麻子、吉野もも、そして小金沢健人、冨安由真というフロア、大岩雄典、砂山太一のフロアと…まぁ、とにかく今注目したい作家さんオールスターな年末最後にふさわしい賑やかな企画であった。その裏には、展示作家と同じくらい注目作家さんがインストールチームとしており、もう総勢すごい面々。これだけ多くの作家がそれぞれバランスとって世界観が保たれているのはすばらしい、隣の森美術館の展示室でやってもよい重量感だった。冨安さん・小金沢さんのフロアは、2人ともKAATの展示も見ていたが、やはりスペクタクルだ、無人の静かな演劇である。

 今年は、相変わらずのコロナ禍が続き、夏に強引に東京オリンピック・パラリンピックが開催され、オリンピック関連で助成されてたアートプログラムなど、いろんな転換の年だったりするんじゃないだろうか。Twitterで展示情報を積極的に発信する人も移り変わっているし、日々カルチャー界隈の変化を気にしつつ、個人的には、精神的にも物理的にも、とても忙しい1年で、しかも来年に持ち越されるものが多く、あまり落ち着かない年末です。来年もがんばろう。

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