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僕がカミングアウトしていなかったら撮れなかった写真

先日、パートナーとシンガポールに行ってきました。理由は、僕の妹が子どもを出産し、はじめての「甥っ子」が誕生したからです。

両親ときょうだいの間にある壁

僕の家族は、父と母、そして妹と弟の5人家族です。妹に僕がゲイであることをカミングアウトしたのは、母へのカミングアウトと同じ2009年10月頃でした。

うちの両親は結構保守的で、最初母親にカミングアウトしたら「受け止めきれないから妹に言っても良いか」と言われました。その後すぐ母が妹にも僕がゲイであることを伝えたところ、妹はむしろ「今まで言わせてあげられなくてごめんね」と言ってくれて。僕が弟にカミングアウトした時も同じような反応だったので、良い妹弟を持ったなと思っています。

妹は仕事の関係で、当時から住んでいたシンガポールで現在の夫と結婚したのですが、妹の結婚について本人と両親がコミュニケーションできておらず、また結婚相手が外国人ということで言語の問題もあり、母は許せなかったようです。一方で、弟は定職に就かずフラフラしていたので、父は弟のことを許せない。そして僕はゲイです。

そんな家族関係なので、母と妹はほぼ絶縁状態。2013年3月に開かれた妹の結婚式は、僕の家族からは僕だけが(僕の)パートナーと一緒に参加しました。こうした経緯もあり、今回妹に子どもが生まれたので、僕が再びシンガポールにむかいました。

シンガポールの街は、人種的にも多様でした。ゲイカップルであることが”フツウ”すぎて、いちいち説明しなくて済んだのは楽でした。ホテルはキングベッドの部屋を借りましたが、日本だといつも「タブルベッドですが大丈夫ですか?」聞かれてしまうところ、シンガポールでは特に何も言われることはありませんでした。

カミングアウトしていなければ撮れなかった一枚

妹の結婚式に参加する時、妹の夫経由で、向こうのご家族にも僕のパートナーが同性であることを伝えてもらいました。「全然良いんじゃない」と先方のご家族はすごくウェルカムに迎えてもらったのを覚えています。

今回も僕らがシンガポールに行くと伝えたら、妹たちがゲイバーを調べてくれて。そんなに行きたくないんですが、行かなければいけない雰囲気になっていました(笑)

僕は、カミングアウトは強制できるものではないと思っていますし、するしないの選択は個人の自由です。でも、もし僕がカミングアウトしていなければ、冒頭に載せた写真を、僕は撮ることができなかったのです。

僕が妹にカミングアウトして、妹や妹の夫、そのご家族も受け入れてくれて。僕だけでなく、僕のパートナーもセクシュアリティをオープンにしていないと一緒にシンガポールに行くことはできませんでした。一緒に妹の子どもを抱いて「かわいいな」という気持ちを、パートナーや妹たちと共感することもできなかったのです。

「家族」というつながり

この写真は、ありふれた家族写真の一枚ですが、僕と僕のパートナーは同性で、妹と妹のパートナーは国籍が違うように、いわゆる「典型的」な家族写真ではないかもしれません。でも、僕にとってはたった一枚の特別な写真です。

僕らきょうだいと両親との間にはまだまだ壁があるかもしれません。
「家族」という繋がりは、絶対的なもののように見えて、実は全然繋がっていなかったりする。他方で、今回シンガポールで撮った写真のように、繋がっていないように見えても、実は繋がっていたりする。

繋がりを諦めてしまったら、もう繋げようがなくなってしまう。時間はかかるかもしれないけれど、家族というつながりを僕は諦めたくないんだろうなと思います。


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