名探偵 THE FOOL〜ツイキャスオフ会殺人事件〜
名探偵THE・FOOL
「ツイキャスオフ会殺人事件」
私の名前は愚者。
昔から勉強が苦手で悪さばかりして来た俺は、大人になった頃には社会不適合者のレッテルを貼られていた。
特技も無けりゃ、友達も少ない、そんな私はいつの頃か自分の事を「愚か者の愚者〜ぐしゃ」と名乗る様になっていた。
私の趣味は「喫茶アヴァロン」という綺麗な女性店員のいる喫茶店で推理小説の様な小難しい本を読みながら、その店のオリジナル珈琲を飲み、香りと雰囲気に酔いしれる事である。
いつか、名推理をして某有名アニメの名セリフを言ってみたいものだ。
今からここに書く話は、そんな私「愚者」がとある2つの難事件を解決する物語である。
ピピピピピピピピピピーーー!!
「んぅ…。」
私はスマートフォンから流れたアラームを止めた。
「うっわ。今日休みだった…。」
動画サイトの広告で流れる、このサプリを飲んだら1ヶ月で体重がみるみる落ちました。というダイエットサプリぐらい、予定の無い休日の早起きは無意味な物である。
私はせっかく早起きしたから、いつもの喫茶店へ行こうと思い身支度を始めた。
その時
ピロリン♪
と、一通のメールが届いた。
「こんな朝早くから誰だろう?」
とメールを確認するとツイキャスという配信アプリで仲良くさせてもらっている
「RIKO」という女性の占い師からのメールだった。
メールの内容はこうである
〜招待状〜
この度、サポーターが1000人を越え日頃からお世話になっている皆さんに恩返しの気持ちも込めてオフ会を開催する運びとなりました。
愚者っち以外にも招待状をお送りさせてもらってます。
是非参加してください。
場所 東京都 新宿
日時 〇月□日
私はネットの友達とはいえ、ほぼ毎日会話している遠くで暮らす友人からの誘いを疑うこと無く二つ返事で参加する事とした。
心地よいそよ風を浴び、早起きの充実感を感じている私にはこれから起こる悲劇を予知する事が出来なかった。
オフ会開催当日、都内開催という事もあり私は電車で移動する事にした。
家を出る前にカレンダーを見たらどうやら今日は仏滅のようだ。
天候も今にも雨が降り出しそうな曇り空。
スマートフォンで天気を確認すると夕方から雷雨の予報だ。
今日初めての後悔は傘を忘れた事だろう。
そんな事より私はまだ見ぬ遠くの友人を思い胸を躍らせ、高まる高揚感でいつの間にか天気の事は二の次だった。
開催日が平日だった事もあり車内は割と空いていた。
いろいろと考え事をしているとあっという間に開催場所に到着したのだった。
開催場所は遠方から来てくれる人を考慮してか小洒落た洋風のホテルでの開催だった。
私が到着するとすでに7名が到着して談笑に花を咲かせている所だった。
RIKO「あっ!遅いよ愚者っち!」
愚者「あ。ごめんごめん。結構早く出たつもりだったんだけどね。」
RIKO「よく来てくれたね!ありがとう。顔と名前一致しないと思うから自己紹介しよっか。」
松雪「どーも!愚者さん!松雪だよ!」
Assy「うっす。迷ったけど何とか来れたわ。」
まおみる「愚者さん遅かったから今日は愚者さんの奢りね。」
さびお「わー。愚者っちだー!さびおだよおかりりだよどちらでも!」
ドア信子「初めまして。ドア信子よ。今日は家族には止められたけど無理矢理来てやったわ。よろしくね。」
たーげっと「…ども。たーげっとです。」
RIKO「今せなちゃんは赤ちゃん連れて来るみたいで少し遅れてるの。」
といったメンバーに現在遅刻しているせなちゃんと私を含めた9人のようだ。
松雪「せなちゃん早く来れるといいね。」
まおみる「でも出産したばかりだし無理して欲しくないね。」
それから皆んなで私生活の話や仕事の話をして、私もすっかり遠方の友達と打ち解けていた。
2時間ほど経った時せなちゃんが到着した。
せな「ごめんなさい!遅れました!せなどんまんです!この子はつむちゃん。みんなに挨拶してつむちゃん。」
つむ「あいあい。キャッキャ。」
タゲ「…可愛い。」
ドア信子「私にもこういう時期があったわ。まぁ。大昔の話だけどね。」
Assy「何か猿みたいだな。」
さびお&まおみる「Assyさいてー。」
まおみる「せなちゃん疲れたでしょ?これ飲んで。」
せな「わー!まおみるちゃんからの飲み物だ!宝宝!」
まおみる「やめて。笑う。」
生後2ヶ月の赤ん坊は言葉も喋れずおしゃぶりを吸ってしばらくしたら眠りについてしまった。
RIKO「皆んな改めて来てくれてありがとう。今日は来てくれたお礼に皆んなにプレゼントがあるの。」
そう言ってRIKOはバックの中から10個の封筒を取り出した。
ドア信子「あら。一体何が始まるって言うの?」
RIKO「今日はみんなの顔写真をプリントしたシールをランダムで皆んなに貰ってもらいます。」
松雪「え。激アツじゃん高まるー。」
到着した順番で封筒を取っていくことになり私が貰った封筒の中にはたーげっとのシールが入っていた。
それぞれが手にしたシールは以下の通りである。
RIKO/Assy
松雪香織/まおみる
Assy/つむ
まおみる/愚者
さびお/ドア信子
ドア信子/さびお
たーげっと/松雪香織
愚者/たーげっと
せな/RIKO
つむ/せな
さびお「ドア信子のシールだ!」
ドア信子「あらさびお。私たちとことん相性良いようね。嬉しいわ。」
RIKO「かー。愚者っちのシール欲しかったー!Assyかよ。。。」
Assy「いや。ひどくね」
一同が笑い合い楽しいプレゼントを頂いた。
話をしていると遠方から来ているメンバーのまおみる、松雪、Assy、せな、ドア信子、たーげっと、主催者のRIKOはこのホテルに宿泊する事が分かった。
その場の雰囲気で当日宿泊も可能という事で私とさびおも宿泊する事になり全員宿泊が決まった。
部屋は宿泊予定者だったメンバーの部屋分の鍵をテーブルに置いて
RIKO「好きな部屋使って良いよ!」
とまるで自分の家のようにホテルの部屋をRIKOちゃんが扱っていた。
せな「ふぁ〜。」
ドア信子「あら。大きなあくびね。」
せな「歩き疲れたかな?何だかとっても眠い。」
とせなちゃんの大きなあくびを皮切りに
夜も更け始め明日も午前中から遊ぶという事でひとまず解散という事になる。
まおみる「あ!せなちゃんったらカギ忘れてるよ!」
せな「あー。ごめんごめん。」
部屋に戻るメンバーとラウンジに残るメンバーで別れる事になり
RIKO、せな、さびお、Assyは部屋に戻り
ドア信子、松雪、まおみる、たーげっと、愚者がラウンジで談笑を続ける事になった。
この時から外では小雨だった雨が本降りになり雷が鳴り出していた。
ドア信子「しかしアレね。遠くに居る面々が一同に介するって何だか不思議ね。」
たーげっと「…そうですね。」
松雪「てか、たげちゃんネットではめちゃくちゃはっちゃけてるのに凄く静かねぇ。」
たーげっと「…そうですかね?これでも楽しんでますよ。」
ドア信子「まぁいいじゃない。みんなの変わった一面を見れて私は嬉しいわ。」
松雪「それな。ほんま面白いわぁ。」
ドア信子「しかし赤ん坊は良いものよね。私もチヤホヤされたくなっちゃったわ。」
たーげっと「…本当。可愛かったですね。」
まおみる「おみるもチヤホヤされたい。」
たーげっと「…まおみるさんは充分チヤホヤされてるじゃないですか。」
まおみる「そうかなぁ?」
ドア信子「そうよ。おみるは私の中でエンジェルみたいな存在よ。」
まおみる「エンジェルアンサー引いちゃうぞって。」
松雪「私トイレ行ってくるね。」
まおみる「あ。おみるも。」
と、トイレに立つ2人。
ドア信子「ふっ。皆んな可愛いわね。今日は来れて楽しかったわ。」
たーげっと「…本当ですね。」
しばらくして松雪がまおみるが帰って来た。
まおみる「ごめんね!待った?」
ドア信子「待ちくたびれたわ。一生帰ってこないかと思った。」
タッチの差で松雪も帰ってきた。
松雪「私ホント馬鹿だわぁ。トイレに迷って4Fまで行ってた。」
たーげっと「…それは迷いすぎです。」
その後約2時間ほど過ぎた時にさびおがやって来た。
ドア信子「あら。さびお。どうしたの?私に会いたくなっちゃった?」
さびお「あ。ごめんねお邪魔だったかな?んとね。つむちゃん抱っこしたくてせなちゃんの部屋に行ったんだけど返事が無くて様子が変なの…。」
松雪「寝てるんじゃないの?」
さびお「だといいんだけど…。何か変なの。」
たーげっと「…ちょっと行ってみますか。」
という事で、我々はせなちゃんの部屋に行く事になる。
コンコンコン
まおみる「せなちゃーん。」
…。
松雪「やっぱ寝てるんじゃないかな?」
ドンドンドンドンドン
…。
ドンドンドン!!!
…。
愚者「いくら何でも起きるんじゃないか?」
ドア信子「嫌な予感がするわね。私マスターキーもらってくるわ!」
さびお「ドア信子お願い!」
Assy「どうしたどうした。何の騒ぎだよ。」
Assyを含めオフ会参加者全員が部屋から出て来た。
RIKO「え。せなちゃんに何かあったの?」
いつも動揺しないRIKOを見て他の面々も動揺を隠しきれない様子だった。
ドア信子「お待たせ!持って来たわよ!」
とドア信子がホテルの従業員を連れて戻って来た。
ガチャガチャ
バンッ
扉を開けると目の前には見るもおぞましい光景が広がっていた。
たーげっと「キャーーーー!!」
Assy「マジかよ。」
たーげっとの悲鳴で寝ていたつむちゃんが起きる。
つむ「オギャーオギャーオギャー!」
部屋の中は血の海でベッドの上にせなちゃんが首を切られ絶命していた。
松雪「…嘘でしょ」
まおみる「え。え。え。」
さびおがすすり泣きへたれ混んでいた。
愚者「誰も部屋に入るな!Assyさん救急車と警察呼んでください!とりあえずさびおっちつむちゃん抱っこしてて、面倒見ててあげて!」
Assy「了解した。」
さびお「…わかった。」
警察に連絡した所、記録的大雨で道が渋滞していて到着が遅れるとの事だった。
推理小説オタクだった私は少しだけ知識があり検死をする事になった。
愚者「死因は喉を鋭利な刃物で切られた事による出血死。死後硬直が始まってる事から犯行時刻は約2〜3時間前。ちょうど俺達がラウンジで談笑してた頃だ。その時の皆んなのアリバイを聞かせてもらってもいいかい?」
RIKO「愚者っちアンタ!私達の事疑ってんの!?」
愚者「当たり前だろ!俺達がマスターキーで扉を開くまでこの部屋には窓にもドアにもカギがかかってて完全な密室だったんだ。要するに密室殺人だ!物取りや外部の人間がこんな事をする訳がない!」
RIKO「そっか。。私は部屋から1歩も出てないよ。娘が心配で家に電話してた!調べてもらって構わないよ!」
Assy「俺はキャス巡りしてたわ。コメント欄にコメント残ってるはず。」
松雪「Assyにき。それアリバイにならないじゃん。コメントしながらでも殺人出来ないことないよね!」
Assy「いや。待てよ。マジで俺じゃねぇって。。。」
さびお「私は途中までお風呂入ったり寝ようとしてたんだけど、つむちゃんの事思い出して抱っこしたくてせなちゃんの部屋に行ったの。。。」
松雪「じゃあ、さびおちゃんもアリバイ無しじゃん。」
さびお「待ってよ。。私じゃない。」
愚者「待った待った!1回整理するよ。じゃあ犯行時刻にアリバイがあったのは、ラウンジで話をしていた、俺、まおみる、ドア信子、松雪、たーげっと、と家に電話かけてたRIKOちゃんだけで、さびおっちとAssyさんはアリバイが無いわけだね。」
松雪「じゃあやっぱ2人のどっちが犯人じゃん!」
愚者「松雪はん1回待って。落ち着いて。言いづらいけど、松雪はんも長い事トイレに行ってたし犯行は可能だと俺は思ってる。。。」
松雪「は?嘘じゃん。」
さびお「言われる側の気持ち分かった!?ひどいよ、香織ん」
まおみる「ケンカはやめよ!せなちゃんが可哀想だよ。。。」
まおみるのその発言でその場が静寂に包まれた。
私はその空気が耐え切れず言葉を発した。
愚者「とりあえず皆んなラウンジに集まってください。。。俺は少し現場を調べてみます。」
一同がラウンジに歩いていく背中は、まるで戦に破れた落ち武者の様に覇気がなく、ドス黒い何かを感じた。
私はせなちゃんの部屋を調べる事にした。
まず、最初に感じたのは違和感だ。
なぜ殺人が部屋の中で行われたのにつむちゃんは静かに寝ていたのだろうか。
どんなに静かに犯行を行ったとしても、ずっと寝ているのは不自然だ。
それと、犯人は何故せなちゃんの死体をベッドの上に寝かせたのか?
憎しみからの犯行なら乱雑に扱っても良かったのではないか?
それに、部屋の鍵が無いのだ。推測だが恐らく犯人が犯行後鍵をかけて持っているか既に捨てているだろう。
その3点が気になっていた。
ホテルの従業員が部屋の横を通り過ぎようとしたので声をかけた。
愚者「すみません。4Fの従業員さんって居ますか?」
従業員「あ。私がその時4F担当だった者です。」
愚者「この女性を見なかったですか?」
そう言い私は松雪の写真を見せる。
従業員「あー。この人見ましたよ。とても綺麗な方だったし印象に残って居ます。迷っていたので声をかけたら、トイレを探していた様なのでそのまま案内させて頂きました。」
愚者「ありがとうございます。」
松雪はんの白が確定した瞬間だった。
ツイキャスを見ていたというAssyさんの証言もどうやら本当のようだった。
というのも、まぁちゃんという配信者の枠にコラボで上がっていた事が分かったからである。
アリバイが無いのはさびおっちだけか。。。
愚者「…ん?」
私は考え事をしながら部屋を物色しているとベッドの下からある物を見つけた。
愚者「…コレは!!だとしたら…。」
私は犯人が誰か分かってしまった。
その時の心境はなんとも言えないものである。
ネットの友達とはいえ毎日話をする離れた所にいる家族の様な人達だ。
その中の1人が死に、1人が殺人者なんて、とてもじゃないが思いたくなかった。
外部の人間の犯行の可能性を信じ調べていたが、どうやら決定的な証拠を見つけてしまった。
愚者「分かったぞ。犯人もその犯人の使ったトリックも。でも。信じたくねぇよ。。。」
私が30分程すぎラウンジに戻ると警察が到着しメンバーに事情聴取している所だった。
警察「君かね。もう1人のメンバーは。」
愚者「はい。すみませんでした。」
どうやら警察の話では署に行って個人的に取り調べを行い捜査するという事のようだった。
私は葛藤した。警察に任せるべきか。それとも勇気を出して推理を論じるか。
あくまで私は素人だ。聞く耳を持ってもらえるかも分からない。
私は警察に任せる事にした。
だがその時ふと敬愛するシャーロック・ホームズの言葉が脳をよぎった。
「失敗するのは人の常だが、失敗を悟りて挽回できる者が偉大なのだ。」
警察「それでは皆さん署までご同行を。」
愚者「待ってください!!」
警察「なんだね。」
愚者「いえ。俺。。犯人が分かったんです。」
警察「君ねぇ。素人でしょ?捜査の方は我々に任せて」
愚者「大切な人達だから他人任せに出来ないんです!!」
警察「…。」
愚者「少しで良いです。少しだけ時間をください。」
警察「分かりました。好きにしたまえ。」
雷鳴が轟き、大雨が降りしきる中、外に停めてあるパトカーランプに照らされたホテルの中で大きく大きく深呼吸をして私の最初で最後の推理が始まる。
愚者「まず、第一容疑者として疑ったのは部屋に戻ったメンバー(RIKO、さびお、Assy)と長い事トイレに行っていた松雪さんです。ラウンジに残ったメンバー(愚者、まおみる、ドア信子、たーげっと)には犯行は不可能と考えていました。」
松雪「愚者さん待ってよ!」
愚者「ですが。ホテルの従業員さんに話を聞いたら4Fで迷ってた美人を見たという事でした。」
松雪「良かった…。」
愚者「次にAssyさんとさびおっちですが。Assyさんに関しては、まぁちゃん枠でコラボしていたという情報が入って来ました。なのでAssyさんにも犯行は不可能です。」
愚者「ですが、最後までさびおっちのアリバイは見つける事が出来ませんでした。なのでセオリー通りだとさびおっちが犯人という事になると思います。」
さびお「え。そんな。」
愚者「まぁ最後まで聞けって。」
警察「犯人はどうやって犯行をやってのけたのだね!?」
愚者「犯人の使ったトリック。それは。部屋の移動です。」
ドア信子「部屋の移動?一体どういうこと?」
愚者「まず、犯人はせなちゃんの部屋でせなちゃんを殺害し密室にして出て来た。というのがそもそもの間違いだったのさ。」
Assy「どういうことだ?」
愚者「犯人は自分の部屋で殺人をおかし、そして自分の部屋に鍵をかけて出てきたのさ。当たり前のようにね。」
愚者「まず、おかしいと思ったんだ。大の大人が同じ部屋で殺されたにも関わらず、赤ん坊のつむちゃんが泣かない訳がない。」
愚者「このホテルでの部屋割りは早いもの順のランダムだった。当日組の俺とさびおっちを除いてね。」
さびお「でも、犯人はどうやって自分の部屋の鍵をせなちゃんに渡したっていうの?ってアレ?」
愚者「そう。気づいたかいさびおっち?」
愚者「部屋移動のトリックを使い、せなちゃんを殺害した犯人それは。」
【まおみる!!お前だよ!!】
たーげっと「…え。まおみるさん。」
まおみる「違う違う!私じゃない!何で私がせなちゃんを殺さないといけないの!?私が皆の前を離れたのはトイレに行った10分くらいだけだよ!?第一証拠はあるの!?私がやったって言う証拠!」
愚者「証拠ならあるさ。私は犯行現場でお前の残した決定的な証拠を見つけてしまったんだ。」
警察「なんだねその決定的な証拠とは。」
愚者「コレです。」
私はポケットの中の、たーげっとのシールを取り出しその場の全員に見せた。
RIKO「それって。」
愚者「そう。プレゼント企画の時の皆んなのシールだよ。俺のシールはたげちゃんだった。」
さびお「それが一体何の証拠になるの?」
愚者「皆んな自分のシールを出してみて。」
一同がおもむろにポケットやカバンを漁り始めて、続々とシールを取り出す。
その中1人が必死にカバンの中を探しているのである。
愚者「どうした。まおみる。」
まおみる「なんで。え。なんで。。。」
愚者「まおみる。。お前の探し物はコレだろ?」
そう言い私はポケットの中のもう1枚のシールを取り出した。
松雪「それは!愚者さんのシール!」
愚者「そう。せなちゃんの部屋を調べている時に見つけたんだ。恐らくまおみるはつむちゃんの前で母親を殺すのをためらって部屋移動を考えたんだろう。つむちゃんを自分のバックか何かに入れて運んで、自分の部屋に移動させたんだ。赤ん坊くらいならバックにでも入れれるからね。その時つむちゃんがシールをたまたま持っていた事にお前は気が付かなかったんだ。犯行後つむちゃんをせなちゃんをの殺害した部屋に戻す際つむちゃんの手からこぼれ落ちたんだろう。コレがお前が犯人だという決定的な証拠なんだよ!。」
RIKO「おみる。。あんた。」
まおみる「許せなかった!!」
松雪「えっ。」
まおみる「凄いや愚者さん。まるで名探偵だね。その通り。私がせなちゃんを殺した犯人だよ。せなちゃんが来た時に渡した飲み物に睡眠薬入れておいたの。犯行方法は愚者さんの言った通りだよ。」
さびお「どうして!どうしてせなちゃんを!」
まおみる「知ってる?私がずっと悩んでたの。私とせなちゃんが仲良いように見えてたでしょ?あれはね、せなちゃんの裏の顔なの。」
たーげっと「裏の顔?」
まおみる「私。実は妊娠してたの。しかも、私の事捨てた男の子供を。笑っちゃうよね。要するに腹いせよ。キャラ被りしてて、まおみるとせなちゃんは似てるねって言われ続けて。私がどれだけ傷ついてたか。全然似てない!!全然違う!!だって…。私の赤ちゃんは流産しちゃったもん。。それでも私はせなちゃんを祝福してあげようとした!!それなのにアイツは。」
せな「え。まおみるちゃん赤ちゃん出来て、しかも流れちゃったの?うーわ。可哀想。まおみるちゃんの分も私が元気な赤ちゃん産むね!名前はつむぎっていう名前なんかどうかな?どう思うまおみるちゃん?」
まおみる「許せなかった。自分の不幸を棚に上げて、私の不幸より自分の未来の事だもん。私は友達だと思って真剣にいつも話聞いてあげてたのに。それなのにアイツは!!」
愚者「それは違うよ。まおみる。」
まおみる「何が違うって言うのよ!!」
愚者「せなちゃんからメールで相談された事があったんだ。
せな「まおみるちゃんが元気無いから私がまおみるちゃんの分も元気出して沢山沢山笑顔にしてあげるんだ!空気読めないって思われてもいい。だって、凍りついた空気を壊す人も必要でしょ?つむぎって名前も皆んなとの絆のおかげで産まれる子どもだから、これからもそんな絆を紡いで行って欲しい。っていうお祈りからなんだよ。皆には恥ずかしいから内緒ね愚者っち!」
って。」
まおみる「え。」
愚者「まおみるは優しいから、つむちゃんは関係ないとか色々考えたんだろう。。でも、その中途半端な優しさがこんな悲劇を産んだんだ。沢山後悔してるだろうけど、自分で凍りつかせた物を、今度はまおみる。お前自身の手で壊すようにしないとな。」
まおみる「………。」
雷雨が降りしきる中、まおみるとつむちゃんの泣き声がいつまでもいつまでも、ホテルの中に響き渡っていた。
それから7年後。
とある児童施設にて。
ドア信子「ほーら。つむちゃん。今年もつむちゃんに誕生日プレゼントが届いているわよ。」
つむ「またなの?毎年プレゼントくれるけど誰なんだろ。」
ドア信子「誰なんだろうねぇ?もしかしたらサンタさんかも!」
つむ「ふっ。ドア信子先生、私も知ってるよサンタさんは12月にしかプレゼントくれない事。」
ドア信子「うっ。」
あの事件からドア信子が児童施設で働いていた事もあり、つむちゃんはドア信子の元へ預けられる事になったのであった。
つむちゃんはスクスクと成長し、足の速い好奇心旺盛な子に育っていた。
つむ「今年のプレゼントはなーに?」
ドア信子「今年のプレゼントはねぇ。じゃじゃーん!何とランドセルでーす!」
つむ「わー!ランドセルだぁ!しかも私の好きな水色のランドセル!やったぁ!」
ドア信子「良かったねぇ!つむちゃん。」
つむ「うん!…あれ?お手紙入ってる。」
【つむちゃんへ】
7歳のお誕生日おめでとう。
今年から小学生だね。今まで毎年内緒で誕生日プレゼントを送っていた者です。
今年は小学生になるからランドセルをプレゼントしますね。
君のお母さんの好きな色の水色のランドセルだよ。
実は僕は、君のお母さんの友達だった人なんだ。
君がお母さんと離れ離れになってしまった時に、君のお母さんのシールを君から借りたままだったからランドセルに貼ってお返しするね。
お守りだよ。
君のお母さんは強くて優しくて一生懸命なステキな人だったの。
君も沢山笑ってお母さんみたいなステキな人になるんだよ。
お誕生日おめでとう。
つむ「ドア信子先生。漢字多くて読めないから後で読んでぇ。」
ドア信子「ったく。愚者のやつ、ひらがな多めで書けってあれほど言ったのに…。」
つむ「ドア信子先生?」
ドア信子「ううん!なんでもないの!気にしないで!うん!後で読んであげるね!」
つむ「やったぁ!」
まるで、空のようなその水色のランドセルの隅に太陽のような笑顔の女性のシールが貼られて、少女はそのランドセルを抱きしめて走っていった。
ドア信子「愚者。もう出て来て良いわよ。」
愚者「うい。」
ドア信子「ったく。あれほど漢字はあんま入れんなって言ったのに。」
愚者「ごめんごめん!にしてもありがとうなドア信子。わがままに付き合わせちゃって。」
ドア信子「何言ってんのよ。私ばっか毎日つむちゃんの顔見るの勿体ないからお裾分けよ!」
愚者「7年か。あっという間だな。」
ドア信子「そうね。」
愚者「じゃあそろそろ行くわ!」
ドア信子「はいよ。また、つむちゃんの顔見に来なさいよ。」
愚者「怖がられないかな?」
ドア信子「いや、めっちゃ怖がるでしょうね。」
愚者「お前ふざけんなよ?」
ドア信子「ははは。早く行きなさいよ!」
愚者「ったく!じゃーな!」
ドア信子「…。ふふ。…。あれ?つむちゃんは?」
夏の日差しが照りつける中、冷房の効いたいつもの喫茶店を目指す私。
そんな私の前に水色のランドセルを持った女の子が走って来た。
ドチャ!
つむ「…いててて。」
その子は私の目の前で転んでしまい、今にも泣き出しそうにしている。
愚者「大丈夫?つむちゃん。」
つむ「うん!大丈夫!私強い子だもん!。ん?おじさん何で私の名前知ってるの?」
愚者「あ!いや!その。」
つむ「あ!ひょっとしておじさん…。」
愚者「…やべぇ。バレる。心の準備が。」
つむ「おじさん超能力者でしょ!?」
愚者「…へ?」
つむ「ドア信子先生が言ってるもん、超能力者や魔王はこの世にいくらでも居るのよ。気をつけなさい。って!」
愚者「そ、そうなんだね…。」
つむ「おじさんの名前は?」
愚者「ん?俺?えーっと俺の名前はねぇ。」
俺の名前は愚者。何者でも無い者。そしてこれから何にでもなれる者。
そう。
探偵さ。
〜完〜
作者:愚者
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