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つれづれ

車窓から覗く、トンネルの向こうに、無限に世界が広がっている気がした。 時刻は20時。こんな時間に家でもホテルでも無いところにいるのは、花火大会とか晩御飯を友達の家で食べた時とかそのくらい。 時折街灯が顔を出して、今は外を走ってるんだなんて当たり前を確認して、車窓に映る自分のやけに姿勢が悪いのを気にしては、吐きそうになってまた猫背になる。 不安もストレスも喉とか胃にくるタイプで、今日だって家族も詳しい人もいないのにちゃんと電車に乗れるか不安で不安で仕方なかった。 それはそ

    • 無題

      僕は1人では生きていけなかった。 いつだって誰かの背中を追いかけた。 今日だって、多分知ってる人がいなかったら来なかったんだ。 賑やかで、人がいっぱいの校舎を、半年ぶりに眺めた。 たった6ヶ月で、人は変わるもので。 3年間通い慣れたはずのそこはまるで知らない場所になっていた。 いや、正確には、場所が変わったんじゃなくて、 …いる人が変わっただけなんだろうな。 私も含め、人間が変わっただけ。 階段を1段登る度、在り来りな言い方だけど、思い出がよみがえってくるのだ。

      • 只、

        どこかの誰かは、電車にはねられても死ななかったからと、自分がいつ死ぬか本当にわからなくなったらしい。 死。 それは、生き物の終わり。 __或いは、始まり。 それは、誰にでも訪れる運命であって。 人間は基本的に、それに抗う。 無駄だとわかっていても、抗うことを良しとする。 死。 それは、救済。 __或いは、贖罪。 それは、常世を彷徨える子羊にとって。 ただ1つ明確に定められたゴールだ。 この世のしがらみから解放される術なのだ。 「ね、写真撮ろうよ。」 私の、死生観と

        • せんちめーとるめんたる

            良い行いをすれば、赦されますか。 信心すれば、赦されますか。 隣人を愛せば、赦されますか。 祈れば、赦されますか。 誰かの厚意を無下にすることは、許されますか。 相手の期待に応えられないことは、許されますか。 命をぞんざいに扱うことは、許されますか。 私は、ゆるされますか。 あなたの居なくなった生活に、慣れてしまった私は。  

          貴方に逢えて

          暗闇に、一筋の光が差した。 喉からごぷ、なんて聞いたこともない音がする。 気付けば、いるのは水の中。 1寸先も見えない、深海ともいえようそこに、ただ1人、沈んでいる。 手を伸ばした。 掴めたのは泡だった。 泡が、潰れる。 生まれた小さな泡が、元より速い速度で光へ向かっていく。 その光景に、どうしようもなく吐きそうになる。 泡が光に届きそうになる。 寒気がした。 瞬きの間に、光が消えた。 …どこか、安心した。 あ、いきが、つづか 「…」 時刻は11時。 玄関から

          貴方に逢えて

          きせき

          深夜。2人の酒も回ったところ。 テレビも消して、やけにうるさい車も通り過ぎて、酔っぱらい共の平穏が訪れた。 「…うちのおじいちゃんが死んだ時さ、」 「うん。」 彼女のまつ毛の長さに目がつく。いつも上がってる口角が定位置に戻って、歯が見えない。 「お父さん、解放されたって言ったの。」 「…解放。」 「そ、辛いことからの解放。」 揺らしたグラスと氷の音がした。 遅いからと1個しかつけていない電気がスポットライトのように当たっている。 「辛いこと、って具体的には…?

          3年経てば

          何気なくWordを開いたら、3年前の春に初めていつの日から消えた、価値観をひたすら書き綴るチャレンジの文章が出てきました。 「初めに」という題のものを開けば、これは黒歴史だ、と堂々と書かれてました。 いくつかあったのですが、どの文もこれは今の私には書けない、感じ得ないもの、思いつけないものばかりで、続きを書こうと思っても、当時の感覚は戻ってきません。 せっかくなので、すこし校正しながら。(がっつり個人情報入ってたのでね…) 中学4年生のわたくしの考えを聞いていただければと思い

          3年経てば

          勧善懲悪

          ※児童虐待 暴力 殺人表現 ―—僕らは臆病だった。 臆病故に、そうするしかなかったのだ。 「ねぇ、本とうに?」 「もちろん。」 ひそひそ話はシャベルを地面に刺す音で遮られた。 傷が痛む。その度フラッシュバックを起こしかける。 「手伝ってよ。」 「…うん。」 置かれたノートが汚れた。 君と、服の朱だけが、鮮やかに映っている。 シャベルは一つだけだった。 雨に濡れた土は重たくて、どこか暖かい。 もう、怯えなくていいから。 「…ッねえ、やっぱやめよう?」 「だめだ

          勧善懲悪

          “こんにちは、今日は晴れでしたか。” 扉の向こうの光が眩しい、とでも言いたげに目を細める。 その体がそれを求めているのを、自身は知らない。 ——可哀想。 そう思うからまたここに来てしまうのだと、わかっている。 …わかっては、いるのだ。 “明日も晴れるといいですね。” 静かに頷く。思っても無いけれど、肯定する他ない。 “お困り事でも?” 首を横に振る。 “じゃあ、悩み事とか。” 「…話せない、かな。」 “そう。構いませんよ、貴女の声が聞けて嬉しいです。”