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金曜13:00

昼の1時過ぎ、駅の階段口でビールを飲む学生。黒縁の細長いメガネをかけている。彼の目の先にはくるくるの髪の毛の女の子、楽しそうに笑っている。五、六人くらい少し崩れた輪になっている。

一口飲む前に瓶の中身を確認する。周りの青年たちはソーダにしたのだろうか。彼だけクールネスを求めて、それに。付いていくためのお酒を選んだのだろうか。友達たちはそれを横目で笑っていたのだろうか。
「お前昼からビールかよ!」とでも言ったのだろうか。メガネの彼は肩をすくめて、さも慣れている風を醸し出そうと少ない小銭をキオスクで使ったのだろうか。くるくるパーマの彼女が笑う顔が見たくて、合わせてヘラヘラ笑って見せたのだろうか。そして、慣れない味に少し口を窄めながら、グッと飲むふりをして、半分は瓶に戻す飲み方をしていたのだろうか。
それとも友達たちの一人の髪の毛を金色と黒に染めた男の子がビールを頼んだのだろうか。そしてそれに並んでみたのだろうか。もしかしたら、誰かがタバコだけ買ったのかもしれない。タバコの臭いが目に染みるメガネの彼は自分が唯一飲めるお酒に頼ってみたのかもしれない。

0,5lのガラス瓶はなかなか重く、手にも馴染まない。するっとずり落ちそうなのをしっかり掴んでいると、だんだん中身がぬるくなっていく。炭酸が抜けていくのを止めるために飲むたびに蓋をする。だが、それも格好がつかないので、途中でやめた。

少し酔いが回ってくるとクールネスが彼に追いついた気になってきた。
面白さがわからない冗談に笑う彼女の顔を見ながら少し遅れて彼は笑っている。

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