8畳1K
私は家が好きだ。正社員としてちゃんと働いていたころ半年だけ住んでたマンションも好きだったし、田んぼだらけの中ぽつんとあった実家の一軒家も今考えると好きだった。
今住んでいる家は8畳1K。家賃の安さで選んだようなもの。築年数は私と同じくらいでなんだか親近感。隣人の宅飲みと電話の笑い声に悩まされるくらいには壁が薄い。駅から10分でちょっと遠い。料理をするわりにキッチンは一口コンロで狭すぎる。スニーカーが好きなのに住んでから靴箱がないことに気づいた。
それでも私はこの街も少し汚いこの家も好きだ。
向井太一の道を聴くと、そんなことを思う。
あの辛かった思い出も
弱音吐いた夜でさえも
この時を迎える為のものだったんだ
実はここの一つ前のマンションも同じ最寄駅だった。春には駅前に桜が咲いて、大好きなあのフェスへ行くため乗り換えをする。一度だけライブを観にこの街に来た時はまさか住むなんて思ってもみなかった。
前住んでいたマンションでは今思うと泣いてばかりだった。休みの日は寝続けて引きこもり、吐いたり、不眠症になったり、最後はうつ病になって辞職。実家に帰ることが多くなった挙句、退去した。好きだった人や、親に電話して、切ってからこっそり泣いたこともあった。
あと一歩だけでもいい
その一歩を繰り返す中で
言葉に出来ない気持ちが
先へ繋ぐ
今の家は最初にも書いたようにすこしの妥協で選んだ。私にとってプライドを捨てることが1番大きな一歩だった。ボロい家でもいいから、家族から離れて暮らすことがあの時の私にとっては最善策だった。
それでも泣くことは減ったし、毎日ちゃんとご飯を食べている。誰かにすがるように電話することもなくなり、休みの日は未だに引きこもりがちだけど、好きな服を着たり、ライブハウスに行ったりと好きなことを選んで過ごしている。
欲しかったものが手の中にある
けど終わりはなく まだ道は続く
あの頃の私は時間が欲しかった。ライブがある日には休みたかった。好きな服が着たくて、真っ赤なリップを毎日塗りたかった。健康的に3食しっかりを食べて、朝起きて夜は寝る。そんな当たり前が欲しかった。
フリーターの今、もちろん自分都合で休みをもらっている。遊びたい日やライブがある日は休み。体調が悪くても休む。毎日好きな服を着て、真っ赤なリップを塗り続けても文句を言う人は誰もいない。3食バランスよく食べることは未だに難しくて親への感謝が溢れる。不眠症になることもなく、朝は起きて夜は眠る。
だけど物足りないのだ。
南向きに大きな窓がある家に住みたいし、いつかは海の近くに一軒家を買いたい。自分の好きなものを売るお店を持ちたい。自分以外の何者にもなれないと分かっているのにも関わらず、どこにでもいる通行人のような自分が嫌いだ。もっと料理が上手くなりたいし、健康的でいるために痩せたい。本当は勉強したいことがたくさんあって、そのためには必要なものはお金。海外にも行ってみたいし、もっといろんか文化に触れてみたい。
そんなことを途方に暮れるほど思ってしまう。
この場所がいつの日か 懐かしく思えるように
もっと上へ まだ遠くへ
続いてる
生活は続くのだ。日々は続くのだ。
今年22歳。もう、かもしれないし、まだ、かもしれない。挫折もしたし、失望もした。それでも諦めることができないでいる。まだやりたいことを浮かべてしまう。
8畳1K。今の私の身の丈には十分合っていると思う。だけどもこのままで良いとは到底思えない。自分を好きになってあげられるような、明日、今日よりも良い自分でいられるような、そんなことを願って道を選んでいけるように私は今日もこの歌を口ずさむ。
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