読書記録
■トリニティ/窪 美澄
同じ職場で出会い同じ時代を生きた3人の女性をそれぞれの視点から描く物語。
今の時代は女性が働くこと、起業すること、フリーランスで働くことは個人の自由として尊重されているが、この物語の時代(戦後の昭和時代)はその考え方はまだ浸透されていなかったように感じたました。
女性はまだまだ男性と同等の仕事はできず、鈴子のように専業主婦になるのが普通だった時代に、朔と登紀子は働く道を選ぶ。
周りからは「成功者」と思われていた二人も、確実に「失われたもの」があり、その残酷なまでの姿がありのままに書かれていて後半は読んでいてなんとも言えない気持ちになりました。
女性として”生きるとは”・”働くとは”・”幸せとは”という「価値観」が変わる1冊でした。
■不審者/伊岡 瞬
読み始めから不穏な空気がすごい。
タイトルからも「突然現れた一人の客」が超絶に怪しい。
話が進めば進むほど怪しくて気づけばその客のことばかりが気になっていた。
ところが…最後の最後に想像もしていなかった「どんでんがえし」が!!
それも自分が想像もしていなかったところから…。
そうくるか…伊岡さん。
最後もしっかりと伏線回収してくるあたりもさすがです。
苦手な方もいるかも知れないですけど、私には大好物の1冊でした(笑)
■ファーストラヴ/島本理生
考えていたよりも重たい話だったというのが第一印象。
臨床心理士の目線を通じて容疑者と向き合ってくというもの斬新で、普通の刑事モノよりも心理的な部分まで深く表現されていたような気がしました。
読み進めるほどに湧き上がる”違和感”。
容疑者の中の”普通と異常”。
10代という少女と大人の間にある女性にとって”性虐待”についてどこまで理解できていたのか?
”性”に対してまだ深く理解できていない少女には自分がされていることが良いことか悪いことかの判断がつかない。
周りの大人達に言われるがままにされてきたことで、”なんとなく嫌なことだけど悪いことではない”という異常な空間の中にいたのかもしれないと思うとなんとも複雑な気持ちになりました。
■電子の子 池袋ウエストゲートパークⅣ/石田衣良
今までのシリーズよりも若干グロさが多かった印象です。
基本1話完結の話なので、全部が全部そうだということはなく基本は読みやすいんですが1話ちょっと思い描写がありました。
それにしても、主人公のマコト。いや、主人公だから仕方ないかもしれないけれど、彼は毎度事件を呼びますね。
彼のいるとこ必ず何かが起きる、そんな感じ(笑)
毎度ハズレくじをひく彼がだんだん可哀想にも思えてきてしまう…。
でも、実際事件が起こるとみんなと協力してスッキリ解決してくれるから読んでる側としてはそれが楽しみなんですけど。