見出し画像

スメル ライク ア ティーンズスピリット

障害者プロレスのドキュメンタリー。

はじめに謝ります。
ぼくは「無敵のハンディキャップ」の映画及び書籍に撃たれたのに、近所の北沢タウンホールでやっていたのに、一度もドッグレッグスの興行に出かけたことが、ない。

そんな自分が書くことも憚られるのですが。


ドッグレッグスをご存知ないかたに書きます。

なにもかも間違っています。
障害者プロレス。むちゃくちゃです。

そもそもプロレス。プロ試験がある訳でもなんでもないんです。プロとアマを分けるのは「プロの団体にいるかどうか」だけなんですから。
障害者プロレス団体ドッグレッグスは果てしなく「学生プロレス」に近い。近い、というか、それよりむちゃくちゃだ。プロレスっぽさを保証してんのは実況アナウンサーとレフリーの存在のま。
なにせ大半の「プロレスラー」がここでは障害者、なのですから。

ドッグレッグスの「階級」はむちゃくちゃです。
体型ではなくて、障害の重さで階級が決まります。
障害が軽いのがライト級。障害が重いのがヘビー級。
ヘビー級レスラーになると、もう立てません。拘縮してます。
聴覚障害者の格闘技集団、「弾丸組」の試合なんかは、それなりに鍛えてたし、見せるものもあった。
けど、ヘビー級の試合になると、みるも無惨です。
たぶん目を背けるひとの方が多いでありましょう。

あろあことか! この団体のメインイベントは「異種格闘技戦」で、「障害者対健常者」でございます。

炎上必至! だ。

このDVDを観て、ぼくが「無敵のハンディキャップ」を観て撃たれてから、20年がたっていたことを知りました。

理屈じゃない何かが、胸に迫るのです。

フと「さらば青春の光」を思い出します。お笑いのことじゃなくて、映画。モッズ映画。原題「四重人格」
クソみたいな仕事をしてる日常があって、モッズスーツでキメるパーティーの輝きが、ある。それ以上にクソみたいな仕事してる日常があって、あるいは仕事すらできず、介護されるだけの日常があって、リングに立ったり立てない障害者レスラーのハレの日が、ある。

あれから20年。サンボ慎太郎はハゲ、スタッフ達も歳をとった。
残酷だ。

もともと障害者プロレスという試みは「女性ボランティアの献身をカン違いした障害者同士の痴話喧嘩を公の場所で見世物にする」ことからはじまった、そうだ。
悪趣味サブカルの頃すこしだけ注目されたようだけど、悪趣味サブカルは廃れても、ドッグレッグスは20年続いていたようだ。

この20年、何人死んだのだろうか。

ドッグレッグスは24時間テレビの対極に、ある。
しかし、ぼくが介護してた身体障害者は、24時間テレビのTシャツを毎年2枚買っていた。
自分たちに脚光があたるから、だ。
感動ポルノ云々は健常者の問題なのかもしれない。

ドッグレッグスの主体は介護ボランティアである。首魁のアンチテーゼ北島氏こそ、介護ボランティアであった。その彼が異種格闘技戦で介護していた障害者をボコボコにする。
「本気で来いよ 本気で応えるから」
それは中学生がホームレスを襲うのとは、おそらく違う。

ぬきさしならぬコミュニケーション、にみえた。

ドッグレッグスは「リスク管理」だとか「暴力はいけない」とか、そういうキレイな正義に下痢便をぶちまける存在、だ。
映像と書籍でしか付き合ってないけど、そこに何かの本当を見出すのは間違いなのだろうか?

「革命」も「夢オチ」もない、極北の「ファイトクラブ」。そう思って観ていた。
障害者のみならず介護者の歪みにも臆することなく斬りこんだこのDVD。新宿ツタヤならあると思う。ぼくは札幌の大通りツタヤで借りた。

何度も観なければわからない。なにしろ障害者レスラーたちが何を言ってるのか聴き取れないから。
わかりやすい字幕もナレーションも、ない。突き放している。
だからわかるまで観るしかない。

ちなみに首魁アンチテーゼ北島氏はファイナルファンタジーの脚本書いたりしてるそうだ。ますますわけがわからない。

れいわ新選組が参議院に送った重度障害者とはまた違う世界が花開く。

ひとは何故、闘うのか? 我々が失ったものは、ナニ? エンターテイメントとは、ナニ? そもそもプロレスとは?
いろんな問いをつきつけられる。

よのなかって想像以上だあ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?