命名「終わり」

何も知らないでいればよかった。何も言えない体だったらよかった。激しく笑っても壊れない体が良かった。小さくてもいいから夢をかなえられる人間でいることができればよかった。秋祭りに人知れず迷子になる、年末みたいな苦しさを持っている人間で居たかった。どっちつかずの鮮明な線を書いているこの時間で、迷いすらも願ったものになる。予期しない世界、予期しないエラー。すべて受け入れて進んで行く。

苦し紛れについた嘘。君が笑っていてほしかった。自分がよければそれでいいと思っていた。世界から認められる必要なんてなくて、息をしていればただそれだけでいい。この世界が永遠なのならば、それを前提にして生きることのほうが、命じゃないか、世界じゃないか。抱きしめる力も強くなった、自分のことを抱いている心臓を脱ぎ捨てて、この世界から逃げたくない。

完璧な世界なんてない。どうせ終わるなら、紙切れなんてどうでもいい。なるようになるだけなんだから、受け入れて、縮んでいく世界を据えて、透けるまで、夜通し語り合おうじゃないか。心奪われたこの言葉というものに、限りない未来を託していく。無くしてはまた未来を見て、未来に行ってはまた世界に戻ってくる。翻して信じて、また這いつくばって。心があるなら、世界に続きが在るのなら、僕たちはまだ、知らないことばかりじゃないか。

放り投げてもいい、人生を賭けてもいい。関係ないからこそ、いっそのこと壊れるぐらい世界を引っ掻き回したい。正義とか悪魔とか知らないが、世界なんて言うのは人生の中でたったの一部なんだろうから、僕たちは永遠を拒むだけでいい。一回きりでいい、一回だけでいい。この身が滅ぶなら、僕たちは何をしたって関係ないじゃないか。

生前、僕たちが何をしていたかなんて覚えていないんだから、そんなもの無いのと一緒じゃないか。僕たちは限りない命を占めて、並んでいる本を読み漁って、偶像を据えて他人に依存している。自分だけいればいいこの世界で、僕だけが一番幸せでいればいい。あなただけが、一番であればいい。そんなことよりも踊っていればいい。そんなことよりも愛していればいい。ただ自分だけを、ただ自身だけを。

息絶えるまで、どうせなら壊れるまで踊ろうじゃないか。きっと世界が終わって、僕たちも終わるんだから。据え置いていても仕方ない。心行くまで壊れていていいじゃないか。人生を賭けて死んでいく。それが生命で、終わるということの生きている意味なんだと。

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海野深一
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