見出し画像

2019④

DIAMOND HALL

本記事を書いているこの日、筆者のお気に入りであるターコイズグリーンの折り畳み傘は久しぶりにお留守番であった。リュックサックは軽く、階段を駆け上がる足は弾んだ。驟雨に急かされるは嫌いじゃないが、水たまりに飛び込むようなお年頃ではない。

梅雨も明けた第4回はthe pillows REBROADCAST TOUR@DIAMOND HALL(2019/3/8)である。名古屋CLUB QUATTROに続き、活動拠点での2回目の開催である。ツアー当時、筆者は岐阜に住んでいた。「愛知の植民地でしょ?w」とか言う輩はご退場願いたい。重ねて申し上げる。

940円→2340円

就職の折、筆者は県内で引っ越しをしていた。故あって地元である岐阜市を一度離れようと企んだ。就職の機会を利用したわけだが、蓋を開けてみれば、配属されたのは同じ岐阜県の恵那市、高速を飛ばせば片道1時間弱で行き来できる土地であった。地元を離れはしたが、何とも歯切れの悪い結果に着地した。活動拠点も愛知から動く事はなかった。ただ、1つだけ変わったとすれば、交通費である。

岐阜市と名古屋市の間を行き来する学生や社会人は少なくない。筆者も学生時代はその一人であった。両県は生活圏が非常に近く、人々の往来も活発で、切符で往復しても940円である。しかし、恵那市に移り住んでからは事情が変わった。なんと往復で2340円、1400円の値上がりである。魔物の住まう物販でグッズをもう一つは買えようかという値段だ。推し活の障害に成り得る緊急事態であった。筆者は当時、異議を唱えようとしたが、肝心の責任者はとうとう見つける事は叶わなかった。

単独参加

お高い普通電車に揺られて約1時間、筆者は名古屋駅に到着した。活動拠点での参加であったが、この日のLIVEは単独参加であった。直近の2回は県外の初めての土地、初めてのLIVEハウスでの参加が続いた為、見知った土地でのLIVEは帰郷の様な安心感すら覚えた。

名古屋市界隈は筆者の作品でも描写される事が多い。それだけ名古屋市界隈での騒動は数知れず、青春と呼ぶには少々酒臭い代物で溢れている。

母の影

交通費の値上がりには屈せず、何かにつけて来ることの多かった名古屋市、今さら観光する場所も無い。加えて、REBROADCAST TOURも残すはツアーファイナルであるZepp Tokyoのみ、物販も買い尽してしまっていた。DIAMOND HALLに到着したのは開場の30分ほど前だった。それでも早く会場に着くその心はご察しの通りである。

手際よく用意を済ませ、階段の踊り場に並び、開場を待った。Twitterをフラフラしていると、隣から声を掛けられた。当然の事ながら、想定出来ている筈もなく、筆者は驚いた。スマホから顔を上げると声の主であると思われる見知らぬ青年が立っていた。この時点で分かっていた事は、彼がBUSTERSであるという事ぐらいだった。しかし、今はそれで十分だと思えた。

話を伺うと、何と初LIVEで勝手が分からないとの事だった。受験が終わり、念願叶ってthe pillowsのLIVEを見に来たと初々しく教えてくれた。筆者自身もBUSTERSの諸先輩方と比べれば新参者だが、そんな筆者にも伝えられる事はあった。

入場時はチケットとドリンク代500円(当時)を用意しておく事、ロッカーやお手洗いは入場後の通路にある事、当時ようやく覚えてきた事を筆者は彼に説明した。一通り話終えると、彼は安堵した様子で、筆者もホッとした。

ひと段落したところで、浜松窓枠でBUSTERSに掛けて頂いた言葉がふと頭に浮かんだ。「Twitterやってますか?」筆者は目の前のBUSTERSに尋ねた。彼は慣れた手つきでTwitterのプロフィールページを見せてくれた。フォロワーを覗くと、見覚えのあるアイコンの中にあろうことか筆者の母のアイコンが紛れていた。

LIVE会場で偶然声を掛けられたBUSRERSが初LIVE、初the pillowsで、自分の母親が先に相互フォローになっている、スモールワールドとしか形容しようがない珍事であった。

孤独じゃない夜の手前、不思議なご縁で巡り合った2人のBUSTERSは階段の踊り場で大いに盛り上がった。この日出会ったBUSTERSとはまた別の会場で再会する事になる。

次回はいよいよツアーファイナル、the pillows REBROADCAST TOUR@Zepp Tokyo、BUSTERSとのご縁はここから更に始まっていく。

ではまた。

いいなと思ったら応援しよう!