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ベートーヴェン 月光ソナタ Op.27-2

この「月光ソナタ」は、「幻想曲風ソナタ」として1801年に、日ごとに悪化する難聴への絶望の中、ハイリゲンシュタットの遺書を書くことになる一年前に創作されたソナタです。 聴覚は、音楽家にとって他の人々よりもより一層完全でなければならない感覚であり、若いころのベートーヴェンは、専門の音楽畑の人々でも極く僅かの人しか持っていないような完璧な聴覚を所有していている、と自負していました。そのベートーヴェンにとってなにものにも代えがたい聴覚器官を喪いつつあったのです。『6年このかた、物の

    • 自己紹介

      神戸生まれの神戸育ちです。父がクラシック音楽が大好きで、毎日クラシック音楽を聴いていたこと、専業主婦だった母の、女も手に職をつけた方がいい、という考えの元、小さい頃からピアノを習い、母が教育ママならぬ、教育ピアノママであった関係で、私は西洋のクラシック音楽にどっぷりつかる環境で育ちました。ただ私自身は、ピアノの個人競争がいやで、私には向かない、と普通高校に進み、合唱部に入りました。そして、朝、昼、放課後、夏休みと練習に明け暮れ、みんなで音楽を作り上げる喜びを知りました。  大

      • Beethoven 交響曲第9番

        第九交響曲の味わい方ベートーヴェンの『第九交響曲』の真髄は、『変ロ長調を仲介としたニ短調からニ長調への軌跡である』。 この事実を、指揮者も、演奏家も、評論家も、聴衆も熟知しておかなければならない。   なぜ私が、こんな突拍子もないことを冒頭で宣言したのか、そしてそれがどんな意味を持っているかは、この先読み進んでいかれるうちに、次第にわかっていただけ、読み終わった後には確信していただけると思う。 (第1章) ソナタ形式とは ソナタ形式は、バロック時代のソナタ形式を、前ウィー