ベートーヴェン 月光ソナタ Op.27-2
この「月光ソナタ」は、「幻想曲風ソナタ」として1801年に、日ごとに悪化する難聴への絶望の中、ハイリゲンシュタットの遺書を書くことになる一年前に創作されたソナタです。
聴覚は、音楽家にとって他の人々よりもより一層完全でなければならない感覚であり、若いころのベートーヴェンは、専門の音楽畑の人々でも極く僅かの人しか持っていないような完璧な聴覚を所有していている、と自負していました。そのベートーヴェンにとってなにものにも代えがたい聴覚器官を喪いつつあったのです。『6年このかた、物の