訪問介護の生き残り戦略
地方議会での一般質問の原稿です。以下の内容に基づく答弁が2024年9月27日に某議場で行われました。訪問介護事業所、居宅介護支援事業所等の関係者の方にはぜひ一読していただきたいです。
令和6年度介護報酬改定に伴い、訪問介護報酬が引き下げられた。東京商工リサーチによると令和6年上半期(1月から6月)の訪問介護事業所の倒産件数は40事業所となり、前年同期比で42.8%増加した。倒産の理由は売上不振が主たるもので、介護報酬からの売上が不十分だった。この改定は、こうした状況を更に悪化させる可能性がある。
訪問介護の売上不振の根本的な原因は、ケアマネジャーがサービス内容を作成する際に適正なサービス区分を選択していないということが挙げられる。訪問介護のサービス区分については、厚労省発出の「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について(平成12年3月17日老計第10号)」に示されていたが、身体介護における「自立生活支援のための見守り的援助」の明確化を行うため、厚生労働省老健局振興課長名で『「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について(平成30年3月30日老振発0330第2号)」で見直しが行われた。
訪問介護のサービス区分には「身体介護」と「生活援助」がある。平成30年の見直しによってこれまで家政婦代わりのような使われ方をしていた「生活援助」を自立生活支援という観点に基づいて「身体介護」として区分する変更がなされた。具体的には、「訪問介護員が掃除や洗濯等を単独で行っていた生活援助というサービス区分」を「訪問介護員が利用者と共に見守り、自立支援を促しながら掃除や洗濯等を行う身体介護というサービス区分」として捉えることができるようになった。
介護報酬については、令和6年の改定で
〇 生活援助(20分~44分)は1,790円(1,830円:▲2.19%)
〇 生活援助(45分以上)は2,200円(2,250円:▲2.22%)
〇 身体介護(20分~30分)は2,440円(2,500円:▲2.40%)
〇 身体介護(30分~60分)は3,870円(3,960円:▲2.27%)
という報酬体系になっている。自立生活支援に基づく訪問介護員と利用者が共に行う掃除や洗濯のサービスは身体介護に該当するので、事業所にとって売上不振を解消できるものである。
生活援助というサービス区分は、寝たきり状態の利用者の必要十分な生活環境を整えるもので、前提として身体介護のサービスがあった上での付随的なサービスと言える。事業所は、生活援助の2,200円から給与、交通費を従業員に支払うことになるので、採算度外視のサービスとしか言えない。しかしながら、現場の大半が家政婦代わりとしてサービスを利用するという状況が見られる。これは、平成30年の介護保険法改正の際に発出された上記文書の内容が関係者に浸透しなかったものである。
訪問介護の置かれた状況を改善するために『「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について(平成30年3月30日老振発0330第2号)」を居宅介護支援事業所、訪問介護支援事業等に周知徹底を図ってはどうか。
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