昭和レトロを楽しむなら銭湯だ!~最高に癒しの空間だった~
たまにはゆっくり広いお風呂につかりたい。なんだろう。気持ちも身体も疲れていたのだろうか?そう思ったら、もはや気持ちを止められなくなってしまった。
とはいえ老描がいる手前、温泉旅行に♪ ともいかないし、都内の温泉施設は人が多くてゆっくりできないだろう。
でもこの凝り固まった気持ちや身体をほぐすには、おいしいものでもマッサージでもなく、やっぱり広いお風呂にゆっくりつかることだと思う。どこかにそんな都合のいい場所がないだろうか・・・そう思っていたら、ピンときた。
そうだ! 銭湯に行ってみよう。
実は最近、近くにあった銭湯が閉店してしまった。ずっと気になりつつ、一度も行ったことがないまま、いつの間にか閉店していたのだ。
減りゆく銭湯。行きたいのなら行きたいうちに行っておかないと、いつまでもないのだ。さぁ、善は急げだ!と早速 やっている銭湯を調べて行ってきた。
できれば午前中から、ちゃっぽ~んと湯船につかりたい気分だったが、銭湯というのは夕方から開店するのが一般的らしい。私が調べた銭湯は16時からだった。
手ぶらでもOKなようだが、わざわざタオルを買う必要もないので持参する。開店時間ピッタリは、やはり常連さんでにぎわうかなぁとちょっと時間をずらして16時半に到着。
これを宮造りというのだろう。瓦屋根の立派なたたずまいだ。なんだかいい雰囲気の旅館に来たようで、思いがけず旅気分を味わい気持ちがウキウキしてくる。
入り口前で、常連さんと思われるご婦人とすれ違った。きっと一番風呂を楽しんだのだろう。暖簾をくぐると左右に下足入れと かさ入れがあった。お香が焚かれていて、いい香りがする。
勝手に古い=汚いを想像していたが、自分の持っていた偏見を反省したい。古いが趣もあるし、きれいな上にむしろ素敵な奥ゆかしさを感じる。銭湯は男性が楽しむにはいいが女性には・・・と思っていたが、この偏見も反省だ。
傘と靴を入れて、中に入る。番台でお金を払ってと思ったが、番台はなくフロントがあった。ちょっとほっとする。
私の中で銭湯へのハードルを上げていたのが番台だ。番台さんが女性ならいいが男性だと、いくらアラフィフのおばちゃん、番台さんの方が気にもしないよとはいえ、やっぱりこちらが気になるし、申し訳ないけどやはり抵抗感がある。
フロント前にあるソファに座っていた高齢の男性が、「はい。いらっしゃい」と声をかけてくれた。常連さんが涼んでいるのかと思ったが、ご主人だろうか?フロントには作務衣を着たお姉さんが座っていた。
入浴料金は550円だ。毎日お風呂に入る料金としては高いが、たまに広いお風呂につかりにくるには有難すぎる値段だ。きっと電子マネーは使えないだろうと小銭を用意してきてよかった。
料金を払い女湯ののれんをくぐる。改装したのか床も壁もきれいだ。壁に施されている和の装飾もすてきで、本当に温泉旅館のお湯につかりにきたような気持ちになる。
脱衣場には3人ほど先客がいた。すでにひと風呂浴びた感じだ。常連さんだろうか?若い方もいる。ロッカーは下足入れと同様の昔ながらのものだ。着替えながら辺りを見まわすと、坪庭があって鯉が泳いでいるのが見えた。
え、風流。銭湯って、こんなに素敵なの?
あとで涼みがてら見てみようと、先に浴場へ向かう。真正面の壁に富士山が描かれていた。
おぉ~。銭湯って本当に富士山の絵が描かれているんだ。
感動してしまう。青い、よくイメージすろ富士山の絵だが、横を見ると赤富士が見えた。男湯の方は赤富士のようだ。
思いのほか人も多い。湯船につかっている人は2人しかいないが、髪や身体を洗っている人は10人近くいそうだ。
まずは皆さんに倣い、私も身体を洗おう。空いている場所を見つけ、シャワーを浴びようと思って手が止まった。
シャワーが壁に固定されている。手に持って自由に動かすことはできない。ふむ。シャワー横にあるレバーを下ろすとお湯が出てきた。
予想以上に勢いもあるし、動かせなくてもそんなに不便はなさそうだ。
と思ったのが間違いだった。正面はいいが、背中とか足とかを洗い流すにはシャワーが固定されている分、やはり不便だ。後ろを向いてしゃがんだり、立ち上がったり、シャワーの位置に併せて身体の方を動かす。難解だ。
常連さんはどうやってこのシャワーを使いこなしているのだろう?
一目見て、新入りさん感満載なのだろうなと思いつつ、シャワー前で不審な動きを続け、どうしても洗い流せない場所は、湯桶に入れた湯で洗い流したりした。
さぁ、悪戦苦闘してしまったが、これで準備万端。いよいよ湯船だ。
リラックスバス・薬湯・ミクロバイブラ風呂の3種類があった。まずは誰も入っていないリラックスバスに入ってみる。
めっちゃ、気持ちいい~!!
そう叫びたくなるような気持ちよさだ。やっぱり広いお風呂は最高だ。そう思って壁際に行き、足をのばして天井を見上げたら驚いた。
天井、高っ!!
銭湯なので高い天井は想像していたが、想像以上に高い。天井横に窓があるからか明るいし、すごい開放感だ。
いや、銭湯最高!!
控えめにいっても本当に最高である。今までどうして銭湯に来なかったのだろう?温泉ばかりに目を奪われて、人生損をしていたぞ。もっと身近にこんなに最高なお風呂があったのに。
私の中の銭湯株価が急上昇である。ほどよく温まったところで、壁に目をやる。100m地下から汲み上げた天然水の湯だと書いてあった。うーん、なるほど。それで塩素臭さのようなイヤな臭いがしないのだな。
つづいて薬湯に入る。日替わりらしく、この日はローズマリーだった。入ってビックリ。浴槽が深い。座るというより少しかがんで入るのが正解だろうか?
入り方に悩みつつ、肩がつかるくらいまで膝を曲げてみる。気づいたら、カランの前には人がたくさんいるが、湯船につかっているのは私1人になってしまった。皆さん湯船につかりにきているというより、身体や髪を洗いに来ているようだ。
有難くゆっくりと つからせてもらう。先ほどのリラックスバスは42度あったが、薬湯は40度。のんびりつかるのに、ちょうどいい。
さて、やはり湯船は全制覇したい。最後はミクロバイブラ風呂に入ってみた。細かな泡が心地いい。
こちらもゆっくりとつかりたかったが、42度あるし、すでに2つの湯船に入ったのもあって、のぼせそうだ。無理はせずに、上がることにする。
脱衣場に戻り、涼みながら壁に貼ってある新聞記事を読んでみた。ご主人の写真が載っているが、フロント前で声を掛けてくれた方よりだいぶ若い。先ほどのご老公は先代さんだったようだ。
天井に目をやると、格天井というのだろうか?木材の碁盤の目のような天井になっていて、そこから丸い照明やシーリングファンがぶら下がっているのだが、これがなんともレトロでかわいらしい。
昭和レトロブームだというのは知っていたが、昭和生まれの私にとっては知っている時代のことだ。珍しくもなんともない。興味もなく、「へ~」位にしか思っていなかったが、昭和レトロ、確かに魅力的だ。
この空間もゆっくり味わいたい。入口にあったソファで休んで行こうと女湯の のれんを出てフロント近くに戻ってみたら、これまたレトロな貴重品入れとガラスケースに入った飲み物が目に入った。
しかも瓶に入った飲み物がある。おぉ~。今となってはなかなかお目にかかれなくなった瓶だ。せっかくなので水分補給も兼ねて飲んでいこう。
ガラスケースを覗いてみると、フルーツ牛乳にいちご牛乳、コーヒー牛乳等が並んでいる。子供の頃は銭湯でこういう物を飲むのが憧れだったが、歳をとったものだ。もはやそそられない。甘すぎるのだ。
牛乳を飲むことにする。
くぴっと飲んで、ふぅ〜と顔を上げたら、正面に柱時計が見えた。こちらもレトロでかわいい。ご主人の許可を得て写真を撮らせてもらった。
銭湯。お風呂も雰囲気も最高じゃないか。思いがけず癒しの空間を見つけた気分だ。
また来よう。銭湯のはしごなんかも楽しそうだ。