【物語の法則】20分、60分、90分
皆様は、『映画』を観ていますでしょうか?
映画は短い時間で、恋愛~SFまでほとんどのジャンルの物語を描ききってしまう魔法の装置です。
ストーリー作家を志している方は、週に1本でもいいので、映画を日常的に観ることをオススメします。
■20分、60分、90分
さっそく、問題です。
シナリオライターが映画を観る時、何を持って観ているでしょうか?
答えは『メモ帳』と『ストップウォッチ』です。
メモ帳はわかりやすいかもしれませんね。素晴らしい登場人物や、特徴的なカットなど記憶の新しいうちにメモして記録しておくためにひつようなものです。
では、ストップウォッチは何をするのか。
もちろん時間を計るためです。
映画というのは、ストーリーテリングという性質上、共通して物語が動く時間が決まっています。
それが『20分』『60分』『90分』。
シナリオライターは、そのタイミングをストップウォッチを使って計って、何分の事件が起点になって物語が進んだと、物語を分解・理解するのです。
……とはいえ、ノーラン監督のメメントや、タランティーノ監督のパルプ・フィクションなどを観たことがある人はわかると思いますが、天才の作る例外は常に存在するのです。この法則に当てはまらない作品なんてざらに存在します。
■20分という〝繰り返される〟日常風景
始まってから20分以内に何が起こるか。
それは主人公の日常的な行動です。
主人公が郵便配達員なら郵便配達。学生なら授業風景。部屋を探す親子なら部屋探し。殺し屋なら殺し……
「主人公」が今までしてきた(すくなくとも数日はしてきた)行動が描写されます。その中で、主人公の哲学、世界の置かれた状況、登場人物達という情報が開示されます。
自分の感覚ですが邦画ではこの〝繰り返される〟日常風景に重きを置き、長めに取っている気がします。それには、変化に躊躇する国民性が関係しているのかもしれません。
■60分という〝今まで起きたことがない〟非日常
次のステップとして現れるのが、
主人公が今まで経験したことがない非日常です。
この非日常が映画としての本編。
すなわち、物語の根幹になる部分です。
運び屋が少女を運んでしまう。真面目な学生がサボって遊びに出かける。我が家に強盗が。殺し屋が少女を助ける……。非日常に飛び込んでしまった主人公が、その世界で何かをするまでを描きます。
■90分というラストバトル
やっとやってきたラストバトル。
エイリアンとの攻防、ロッキーVSアポロ戦、芹沢博士のオキシジェンデストロイヤーなど。ここは、テーマを行動に表すという物語の心臓部分なので、特に注意して観ていきたいです。
しかし、敵がいる映画はいいのですが、人生ドラマなどの場合はバトルにならない映画ばかりです。特に邦画は白黒を付けない映画が多いので、この判定は難しいところです。
黒澤明監督『乱』は、父を見つけ出すところがラストバトルに該当。
大林宣彦監督『さみしんぼう』は、さみしんぼうが雨の中、抱きかかえられ心を通じ合わせるのがラストバトルに該当。
小津安二郎監督『東京物語』は、老夫婦が田舎に帰るところがラストバトルに該当。
山田洋次監督『学校』は、イノさんとの思い出にひたり、幸福を考えるところがラストバトルに該当。
と名作を挙げてみましたが、一筋縄ではいかないところ、理解していただけましたでしょうか?
■物語構成について
物語構成は、手品のタネのようなモノです。
わかってしまうとあっけない。
けれど、扱うにはそうとうな訓練が必要。
そしてもう一つ……
手品のタネのように『星の数ほど』たくさんの種類がある!
ソクラテスの時代から何億何兆の人間が作ってきたものですからね、創作論って。シナリオライターの末席に連なるとして、一つでも多くの創作論を覚えて扱えるようになりたい今日この頃です。
■おまけ ゆるキャン△1話への応用
①〝繰り返される〟日常風景 (10分 アバン+OP抜かし)
『リンちゃんが、テントを慣れた手つきで張って、ソロキャンをしている(主人公リンにとっては日常的な行動)』
②〝今まで起きたことがない〟非日常 (5分)
『なでしこが、リンちゃんのキャンプに混じって、グルキャンのようになった(主人公リンにとっては非日常的な行動)』
③90分というラストバトル(3分)
『なでしこを家に帰して、リンちゃんはグルキャンを意識するようになった(ラストバトル)』
だいたいこんなところでしょうか。
1話だけあって、主人公であるリンの存在を印象づける構成ですね。
「ラーメンがキウイに化けた」というところも、わかりやすい因果応報として評価できます。
■あとがき
と、まあ、創作論といえないくらい短いモノでしたが、いかがでしたでしょうか? いつもは創作論についてはあまり語らないのですが、サークルに入ったということで、短めの記事を書かせていただきました。
この『20分、60分、90分』の法則は、自分がいつもゲームシナリオのプロットを作る時に重きを置いている部分の一つです。
自分はもっぱら映画やアニメという映像作品をインプットとして摂取しています。なので、他のシナリオライター様とはまた違った視点で描いているのかもしれません。
脚本術も独学の野良のシナリオライターなので、ご勘弁の程を。
ではでは、興が乗ったらまたシナリオの話をさせていただきます。