アニメ『オーパスカラーズ』感想
アニメ『オーパスカラーズ』の感想になります。同監督の『黒子のバスケ』や『スタミュ』との比較が多くなります。というより知っている前提で書いています。
スタミュの制作陣の新作アニメということで期待していましたが、結果としては良い点も悪い点も同じぐらいありました。下手したら悪い点の方が多いかもしれません。
微妙なアニメだとは思いつつも、最後まで見たらキャラに愛着も湧いたし、続きがあったら見たいとは思います。
○作画・演出の弱さ
個人的に凄く気になった点です。
スタミュも高品質な作画というわけではありませんでしたが、キャラの細かい仕草や表情などは表現されていました。
しかし今作は動きや表情が硬く、どうしても棒立ちの印象が強かったです。
スタミュならもう一段階キャラを動かしたであろうと思うところで尽くキャラが動かない。
キャラクターの心情が重要なパスカラでは勿体無いことだと思います。そこでもう一つ表情を動かせば、心情がもっと伝わってくるのに。そこで一個仕草を挟めば、キャラクターの実在感が増すのに。
弱いのは演出面もです。私は同監督の『黒子のバスケ』と『スタミュ』の派手な演出が好きですが、パスカラはその点でも期待外れでした。
効果音は前者2作に比べて十分の一ぐらいしか鳴らず、音楽は印象に残らず、ケレン味は少ない。
黒バスとスタミュはミュージカルのように音楽と画面とセリフが調和していて、内容関係無く楽しいアニメでした。
それに比べるとパスカラはいかんせん地味過ぎました。同じ制作陣でこうも変わるものなのか?
○パーセプションアートとは?
パーセプションアートについて詳しい描写は省かれていました。五感に影響を与えるあたり、もはやSFのカテゴリーで作った方が良いアニメだったと思います。
グレーダーの存在やパーセプションアートに対する世間の反感など、個人的にはかなり興味深いです。しかし具体的な描写をしてくれない。
パーセプションアートとは一体なんなのか?
なぜグレーダーが必要なのか。
なぜパーセプションアート学科はアーティストとグレーダーをそうぱっきりと分けるのか。
そういった部分を説明してくれるだけでも、このアニメへの個人的評価はかなり上げたと思います。
ちなみに私はパーセプションアートをかなり危険なものだと妄想しています。
○これはつまりラブコメ
スタミュは話の中心軸に、ミュージカル学科に入る、卒業記念公演を成功させる、などがあったので話がわかりやすかったです。あくまで人間関係はその周辺にあるものだった。
しかしパスカラではパーセプションアートはあくまで舞台装置に過ぎず、話の中心軸は月見里和哉と多岐瀬響の友情、その他の人間関係です。
それを理解するまでに時間がかかりました。途中でこれをある種のラブコメだと理解してところでだいぶ話を受け入れられたと思います。
これはつまり青春ヤキモキラブコメアニメですね。
○キャラはいい
今まで散々文句を言いましたが、キャラ造形は良いです。
スタミュのキャラの特徴として、関係が底知れない、何を考えているのかわからない、心情の密度があるっていう点をあげますが、パスカラもその性質を受け継いでいます。
例えば和哉と純は家族に近い友人関係で、身体的距離感も心理的距離感もかなり近いです。そんな2人も意図的に距離感を保つシーンがあります。お互いに踏み込み過ぎず、しかし一定の距離を空けてずっと近くにいる。
特に純は表面の感情表現と実際に考えていることにかなり差があるんじゃないかと思います。
キャラクターのバックボーンの作り込みもちゃんとされていそうですし、話はともかくキャラは良いです。斑鳩杏寿とかありふれていそうで実際いない絶妙なキャラで面白いですし。
ちなみに私は都築純が好きです。
○良くも悪くもスタミュ上級者向け
パスカラを見ている人でスタミュを全く知らない人がどのくらいいるのか疑問です。
良くも悪くもパスカラはスタミュを見た人向けだと感じました。それもキャラクターの心情について考えまくった上級者。何周も見てセリフ一つ表情一つから心情を読み取ろうとした上級者向けです。
最終的には和哉や響の関係について重要な心情は明かされますが、途中まではスタミュ一期に比べるとセリフに出す心情がかなり少ないです。
何か考えているのは分かるけど、何を考えているのか分からない。特に都築純(どんだけ好きなんだ)。
スタミュ2期以降の心情描写の少なさが最初からされています。私がもしスタミュを知らなかった場合、これについていけたんだろうか?
○ちゃんと決着がついたのでヨシ
パスカラの本筋は和哉が響との友情を取り戻す、というものでしたが、それをちゃんとできていて良かったです。
最初に「こういう話をやりますよ」っていうのを提示してそれをやり切るって、実は難しいことなんじゃないかと最近思いました。
ちゃんと決着がついて良かった。客観的に見て高評価できる部分です。
○一味違う
この監督の他作品を見ているからこそ成立する部分なのですが、パスカラでは今までの天才像とは一味違う天才キャラが出てきたのが面白かったです。
灰島伊織。
なんだ。この地に足のついた天才は。
今までの作品だったら、天才キャラは浮世離れしてフワフワしてるか、精神的に不安定か、無神経で人の心が分からなくて無自覚に人の地雷を踏みますが、灰島伊織は違います。
現実を見ていて、人の心がわかり、狙って地雷を踏みにいき、地雷を踏んだ罪悪感で眠れなくなり、それを反省して安定したメンタルを身につけた。
これが黒バスとスタミュを経て生み出された天才キャラ。
一味違う。
スタミュの後続作品ということもあり、キャラが尽くスタミュ3期を経た精神性を持ち、ストレートな感情表現でコミュニケーションを取っていくのはなかなか味わい深いです。
スタミュと似ているけどスタミュなら拗れに拗れたであろう話をスピード解決していきます。
実に味わい深いです。
○曲が良い
最終話で『Clear』が流れた時あまりに良い曲に呆然としました。
エンディング曲の『New frame』、そのアレンジバージョンの『Clear』、この2曲が暴力的なまでに良い曲です。
この2曲を生み出しただけでもこのアニメには価値がある。
個人的には今年はもうこの2曲を超える曲には出会えないと思っています。
CDを購入して何度も聴いていますが、聴くたびに良い曲すぎてドン引きしてます。
そのぐらい良い。
○ようやく始まった
スタミュもそうでしたが、1クール終わった時点でようやくキャラクター紹介が終わり舞台が整った、という感覚です。2期があったら本格的にパーセプションアートに向き合う話が来るんじゃないかと思わされました。
総評としては微妙だけど、そこそこ好きなアニメなので、2期があったらぜひ見たいです。
おしまい