あなたにしかできないこと。私にしかできないこと。
ヨガマットに寝っ転がって、
足を天井に伸ばして、
足首をくるくる回していたら、
ふと、不思議な感覚になった。
このくるくる回る「足」は、
いったい私のどこが動かしているのか?
脳から指令が行き、
筋肉やら神経やらが刺激されて
この動きを生み出しているのは確かなのだろうけど、
私には、一本一本の指の細かな動きとか、
一周目と二周目のわずかな違いとか、
そんなところまで司令している感覚はない。
…勝手に動いているってこと?
…すご。怖っ。
自分の部屋にいるのに、
一瞬にして、どこか不思議な空間に飛ばされた。
この足は、私が動かしているのだけど(多分)、
私が認識できている私、以上に、
私を動かす何かが私の中にある…。
そんなことを考え始めるとたちまち
ふわふわと浮遊し始めた私の世界に身を委ねて
私は足を観察し続けた。
そっと右足の指先で
左足にちょんちょんと触れてみる。
触れる感覚がある。
感覚があるけど、
その感覚はどこで感じているんだろう?
足の指先の、そこ で感じてるのだろうか?
それとも頭で作り出しているだけなのだろうか?
そもそもどうして私は触れている、
触れられている、と感じるのだろうか?
確かに、この感覚はここにある。
自分の内側にある、と感じる。
だけどそれは、私、なのに、私じゃないような、
もっと大きな何か…。
この身体は誰なのか…
ここにいるのは誰なのか…
不思議な感覚に包まれながら、
しばらく寝っ転がっていた。
その“何か”の正体を掴むことはできなかったけれど、
確かに何かがあると感じた。
少なくともここにいるのは “私” だけではない
と感じた。
考えてみれば私たちの身体は、
怪我したら自然と治る。
1日動いたら眠たくなって、
寝たらちょっと元気になってる。
暑い日は汗かいて、
寒い日は震える。
エネルギーが減ってきたら食べたいと思う。
食べたら消化される。
毎日細胞は生まれ変わっている。
身体は成長して、老いていく…
それには確実に私達の意思以上の何かが関わっているとは感じませんか!
私には到底理解が及ばないほどの
精密で巧妙な身体に、私たちは乗っているだけなのかもしれない。
そして精密で巧妙な割には、多少乱暴に扱っても壊れない。
なんてすごいことでしょう! なんて偉大なのでしょう!
自分のことは自分が管理してる
なんて思っていたけれど、
自分の意志が及んでいるところなんて
ほんの一部なんだろうな。と。
身体を自分のものだと、
もしくはこれこそが自分自身だと、考えるのは
とんだ勘違いなのかもしれない。
だけれども、
この体に乗っているのは私しかいない、
というのもまた確かなのでしょう。
この触れた感覚、色とか匂いとか味とかも、
この身体だから感じられること。
誰も同じものを感じられなくて、
私が今この身体の中に生きているから、
この体で感じられること。
生まれてから死ぬまで、これを感じられるのは私だけだから。
私たち誰もが、この世界に生まれた瞬間から、
こんな不思議な贈り物をもらっていたのだ。
動かしたら動くこと、触れたら感じること、
そんな当たり前のことが、すごく神秘的なものに感じられた。
私が私にしか感じられないものを感じているように、
あなたも。
あなたにしか感じられない世界を感じている。
あなたにはこの世界がどのように見えているのだろう?
内側には、どんな感覚があるんだろう?
どんな道を歩んできて、あなたの世界を形づくっているんだろう?
私もその世界をみてみたいなぁ。感じてみたいなぁ。
なんて思うけど、それは不可能なこと。
だから、
よかったら、自分の体をゆっくりと動かしてみて、
それをぼんやりと眺めてみてください。
あなたの中にあるあなたを動かす不思議な存在を感じてみてください。
何かにそっと、触れてみてください。
どんなふうに感じますか?じっくり味わってみてください。
それは、いくら誰かが奪おうとしても、奪えないもの。
あなたのその感覚、感情はあなただけのもの。
誰も、あなたと同じように
見たり聞いたり、感じとったり、考えたりできないのです。
だから、その身体があるうちは、
思う存分その身体で、見て、触れて、感じて、味わって。
あなたにしかつくれないあなたをつくっていってください。
それがあなたの仕事です。
大事な大事な仕事です。
あなたにしかできないこと
それは、あなたがあなたを生きること。
私にしかできないこと
それは、私が私を生きること。
miwa
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