【週末投稿】つれづれ有用植物#213(クロウメモドキ科ケンポナシ属:ケンポナシ)
日本では北海道の奥尻島や、本州、四国、九州まで分布する落葉高木です。
山地の渓流沿いの斜面に自生しています。特に東北地方の野山に多く、中国や韓国にも自生が見られるそうです。
土質を選ばず丈夫に育ち、ほとんど手がかからない事から一部庭木として利用されていた事もあったそうですが、高木になるので現在では公園や寺社に昔の木が残っているケースが多いそうです。
さて、このケンポナシは何が有用なのでしょうか。
まずはこの植物の特徴的なもののひとつに、開花後にできる肉質化した「花梗」が食べられるという事です。
ケンポナシの開花は6~7月で、淡い緑色の両性花が葉の脇に咲きます。
花の直径は7ミリほどで目立ちませんが、蜜を求めて蜂などがよく集まるそうで、ケンポナシの蜜で作ったハチミツは質が良いとして好まれています。
花の後に「花梗」が肉質化し、そこに直径7~10ミリほどの球形の果実ができます。この果実と肉質化した花梗にはナシのような味があり、ニホンザルが好んで食べるそうなのです。その他ハクビシンやタヌキに食べられることで、分布範囲を拡大し種子の発芽率が上昇する戦略を採っている様です。
霜が降りる頃になれば人も生食できますが、その時期になると風で枝ごと飛ばされやすく、食べるタイミングは難しい様です。
自然の甘味料として漬物や煮物、果実酒に利用できるそうで、
さらに葉や樹皮を煎じて茶のように飲む文化もある様です。
民間薬としては、果柄および果実を煎じてのむと酒毒を解し、悪酔、二日酔によく、嘔吐を止める作用があるといわれているようです。
また古くから酒づくりには禁忌とされ、この木で柱を作ると家中の酒が薄くなり、種子などを酒の中に入れると酒が水になるという云われがありました。
■ケンポナシ(玄圃梨)(6分弱)
越前町立福井総合植物園プラントピア 様
また、材はケヤキやクリに似て木目が美しく、程良い硬さがあるため建材、家具、楽器、彫刻、工芸品などに使われています。
■【玄圃梨(ケンポナシ)オイル仕上げ【木の店さんもく】
木の店さんもく 様