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【週末投稿】つれづれ有用植物#53(キク科ヨモギ属:ヨモギ)
都会でも田舎でも、日本で一番馴染みがあって見慣れているがゆえに、雑草扱いされる植物は「ヨモギ」かもしれない。
この草と楽しく付き合うには、秋に花粉症になる方へは配慮が必要だ。
ヨモギはブタクサと同じキク科の植物で、ブタクサの花粉症だと思っていたら、実はヨモギの花粉症だったということもあるようだ。
ヨモギに対してネガティブな印象をもってしまうかもしれないが、自分の生活圏を確保しようと進化してきたのだから、ここからはヨモギの特徴や効能を紹介する事で弁護してゆきたいと思う。
■ヨモギの特徴
ヨモギは日本在来種であり、日本の本州・四国・九州・小笠原に分布して日当たりの良い土手や道端に自生している多年草。もともとは中央アジアの乾燥地帯が原産と考えられている。
春になると芽を出し、それぞれの環境に適する容姿にて(1mほど細長く伸びたり、小枝を沢山横に出して樹木のような容姿になったり)増えてゆく。
地下茎からは、他の植物の発芽を抑制する物質を分泌するアレロパシー(他感作用)による拡大戦略を持っている。
葉の裏面は白い綿毛を密生して白っぽく見える。
この細かな白い毛はヨモギが乾燥地帯の中でも生育していくために、気孔を開いて葉呼吸する際に、水蒸気として一緒に貴重な水分が逃げてしまわないようにするためのものだと考えられている。おお~すごいじゃないか。
花期は夏から秋ごろ(8月から10月)にかけて、茎を高く伸ばして分枝し、小枝に淡褐色の目立たない小花を穂状に咲かせる。
ヨモギと同じキク科の多くの植物は、進化の過程で風媒花から虫媒花へ最も進化したグループだ。しかし、ヨモギは虫媒花をやめて再び風媒花に転換した植物なので、他のキク科のような目立った花びらもなく地味で、風に任せて大量の花粉を飛ばすので、秋の花粉症の原因植物のひとつになっている。
■有用植物としての利用
ヨモギが持っている独特の香りは、乾燥地帯で生える多くの植物と同様に、害虫や雑菌から身を守るために抗菌化物質などの科学物質を発展させてきたものに由来しているそうだ。香りのもととなっている精油成分は、さまざまな薬効成分があるので、古くから利用されてきた。
ビタミンAやCを含む栄養価の高い食材であり、山菜としてはゴマ和え、マヨネーズ和え、汁の実、塩漬,味噌漬などにする。蕾や茎は天ぷらにする事もある。また葉を焙じて塩味を付けてヨモギ茶とすると、香りが良い。
草餅は今でも多くの人が召し上がる機会があるのではないだろうか。重曹(昔は草木灰)を使って短い時間煮る事で灰汁を取り除き、すり鉢で繊維をつぶして白玉に混ぜるなどの製法で作る。
葉の裏の白い部分を集めて作った「モグサ」は、ロウ成分が含まれているので、火をつけるとゆっくりと燃える特徴があり、ヨモギの薬効成分が火の温かさでゆっくりと体に効くと言われ、お灸に利用されている。
根を清酒に半年以上漬けて作ったヨモギ酒は食前酒や喘息の症状を和らげるのに用いられる。
民間では生の葉を揉み、汁を虫による刺傷、切傷に用いたり、乾燥葉は浴湯用にされる。乾燥葉の煎液を足湯、腰湯にしたり、袋に入れた葉を浴槽に入れて温浴すれば、よく暖まり、肌荒れ、冷え、腰痛などに有効と言われる。また生葉を袋に入れ入浴時に使えば、精油の香りでストレスなどの緩和に役立つ。
ヨモギの効力はすごいですね。
ぜひ身近な草に関心をお持ちになって、楽しんでみてはいかがでしょうか。お子様のいるご家庭では、季節行事として草餅を作るのも楽しい思い出になるかもしれません。
同じヨモギ属の「カワラヨモギ」や同種の海外種である「フレンチタラゴン」、「ロシアンタラゴン」はエッセンシャルオイルとして利用されたり、料理の香りづけに利用されます。
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