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【週末投稿】つれづれ有用植物#266(イチイ科イチイ属イチイ)

九州南部及び沖縄を除く日本全国に分布するイチイ科イチイ属の常緑針葉樹です。中国東北部、シベリア東部及び朝鮮半島にも自生が見られる様です。
雌雄異株ですが、まれに雌雄同株や雌雄を転換したと思われる個体もあるそうです。

北海道や東北北部などではアイヌ語名あるいは東北地方の方言に起因するするオンコと呼ばれることが多いです。

【冬の寒さに耐える イチイ】

葉の長さは 1.5~2.5cm、幅は 1.5~3mm ほどで、枝先では螺旋状に生じ、それ以外の場所では二列に並ぶように左右互い違いに生じます。
形状が似ている植物としては、カヤ、メタセコイア、センペルセコイアがありますが、イチイは柔らかでチクチクしません。

【似た葉の植物:カヤ】
【似た葉の植物:メタセコイア】
【イチイの葉】

高さ 15 m ほどの高木になりますが、暗い場所で育つため成長は遅く寿命は長い特徴があります。まっすぐに伸びる幹と綺麗な円錐形になります。

【比較的薄暗いところに生えるイチイ 画面左側】

花はサクラが咲く頃(3~4月)です。
雄花は肌色をした球形で多数つき、雌花は卵形で先端に小さな受粉孔が開いています。

【雄花】
【雌花】

雌の木の葉陰に生る赤い果肉のような部分(仮種皮)は甘く食用になり、生食や焼酎漬けにして果実酒としても利用されます。

中に包まれる種はタキシンというアルカロイドを含む有毒性であり、飲み込むと痙攣を起こし、最悪の場合、呼吸困難で死に至ることもあるので注意が必要です。しかしヤマガラ、ムクドリ、ツグミ、アトリなどの野鳥はこれを採食します。生き物によって違うのですね。

中国ではイチイの実を「紅豆杉の実」と呼ぶようです。
以下の動画は、イチイの実をつかってお菓子を作る動画になります。

■紅豆杉餅を作る

紅豆杉果實掛滿了枝頭,正是摘來做紅豆杉米糕的季節,好看又好吃

Posted by 美物计 on Friday, November 15, 2024

イチイの木材は年輪の幅が狭く堅く緻密で雨や雪にさらされても狂いが生じずらく、それでいて加工しやすい特徴があります。さらに光沢があって紅褐色をした美しい心材が多いという言われます。
そしてヒノキよりも堅いとされることや成長が遅い事から希少性があり高価な様です。昔アイヌ人は、矢を作る材料として利用したそうです。

表札、硯箱、寄木細工、仏像などの彫刻材にも使われたり、日本の木としては珍しく鉛筆の材料としては最高級とされています。板材にしても割れや反りが少なく、建材(床柱、框、床柱、天井板)に利用されます。

製材直後の材はオレンジ色ですが、年を重ねると赤みを帯びた明るい茶色になります。心材と呼ばれる幹の中心部は、赤色の染料として使うことが出来ます。

【Wiki Pedia 引用画像】

紫のくすんだ赤色のことを『蘇芳(スオウ)』と言い、昔は位の高い人しか使えなかった高貴な色ですが、繊維を蘇芳色に染める時にはこのイチイの染料『山蘇芳(ヤマスオウ)』を代用として使われていたそうです。山蘇芳は、中心部の赤い部位の水浸液や鋸屑からとれます。

もともと蘇芳は、ミャンマーやインドなどアジア南部が減産のマメ科の低木の事で、その幹を切り砕き煎じて染料が採られていたそうです。それが転じて染めた色の名前としても使われています。
かなり貴重だった為その代用としてイチイも使われてきたそうです。そのような経緯もあり、地方によってはイチイの事を『スオウ』という名前で呼ぶところもあるそうで、本来のスオウに対して一歩引いた意味で『山蘇芳』と呼ぶこともあります。

耐陰性、耐寒性があり刈込にもよく耐えるため、北海道など日本北部の地域では庭木や生垣に利用されます。刈り込みに強い性質などから、しばしばトピアリーの材料に用いられ、日本でも鶴や亀などの刈り込が作られたり、盆栽としても親しまれています。

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