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【週末投稿】つれづれ有用植物#274(ミカン科キハダ属キハダ)

北海道から九州までの広い範囲に分布する、ミカン科キハダ属の落葉高木(樹高は 10 ~ 25 m)です。山地のみならず平地の林縁や明るい林内に生じ、水辺近くで特に多い様です。日本のほか中国、ロシアの国境(ウスリー、アムール)及び朝鮮半島にも見られます。

成木の外樹皮は淡褐灰色から暗褐色で、縦に深い溝ができます。
内樹皮は濃鮮黄色で厚いですが、若い樹皮はサクラに似て赤褐色で滑らかで無毛です。

【成木の樹皮例】

葉は対生葉序で、長さは 20 ~ 45 cm 程あります。
小葉は 5 ~ 13 枚くらいで、長さは 5 ~ 10 cm の長楕円形、裏は白っぽく、葉縁は波状になります。
枝や葉に独特の臭みがありますが、他のミカン科の植物同様に蝶(カラスアゲハ、ミヤマカラスアゲハなど)の幼虫が好んで葉を食べます。

【若葉】

花期は 5 ~ 7月 で雌雄異株です。蜜源直物としても利用されます。本年生の枝先に黄緑色の小さな花を多数つけます。果期は10月頃。果実は核花で、直径 10mm ほどの球形で緑色から熟して黒くなります。冬でも黒く熟した果実が雌株によく残ります。

特有の芳香と苦味があるものの、中には甘いものがあり生食できます。ヒヨドリ、ツグミ、アカハラ、シロハラ、マミチャジナイなどの野鳥が集まり、果実を食べ尽くす勢いがあります。

【未熟果】
【秋の黄葉ととともに、熟した果実】

春になると、冬芽から芽吹き展開した後から花序が出てきます。

12 ~ 20 年経った成木の樹皮からコルク質を取り除いて乾燥させたものは、黄檗(おうばく、黄柏)という生薬として知られ、樹皮が厚いほど良品とされます。

■【体に良すぎる】植物キハダの樹皮を煎じた薬(8分弱)
葉っぱくんチャンネル 様


また染料としての用途は古く飛鳥時代から用いられたそうで、キハダで染めた布や紙が神事に使われたり、虫除けとして使用されてきました。
黄色に染め上げる以外に、赤や緑色の下染めにも利用されます。なかでも、紅花を用いた染物の下染めに用いられるのが有名で、紅花特有の鮮紅色を一層引き立てるのに役立っているそうです。キハダは珍しい塩基性の染料で、酸性でないとうまく染め上がらないため、キハダで下染めをした後は洗浄を十分にする必要があるそうです。

■奈良の森から作られる染料 キハダ(黄檗)染め(2分弱)
里山文庫 Satoyama Library 様

心材も黄色がかり木目が明確であり、比較的軽く適度な堅さがあるため、建築材、家具材、楽器材、寄木や経木などの器具材として、また水湿への耐性を活かし建築土台や流し場でも利用されています。木材の色や木理が桑に似ているため、桑の模擬材として鏡台や茶箪笥などに用いられることもあります。その場合には本桑と区別して「雌桑(メクワ)」「女桑」などと称されています。

■【真っ黄色な原木】キハダ原木から一枚板を製材しました。(14分強)
木の店さんもく 様




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