【週末投稿】つれづれ有用植物#172(スイカズラ科スイカズラ属:スイカズラ)
5月くらいに平地や山野を歩くと、ふと甘い香りがする。周囲を見渡すと、白とクリーム色の花々を見かける事がある。
この植物はツル性で、周りの低木やいろいろな植物、フェンスなどにからみついて生息してるスイカズラだ。長さは 10m ほどに成長します。
細長い花筒の奥に蜜があり、古くは子どもが好んで花を口にくわえて甘い蜜を吸った事にちなんで、「スイカズラ」という名称になったそうです。砂糖の無い頃の日本では、砂糖の代わりとして楽しんだ文化があった事から、意外と日本人に馴染みがあった植物と言えるでしょう。
庭や垣根にも利用されています。
果実は10月~11月頃出来ます。
液果で球形の実が2個ずつならせます。果実の直径は5 - 7 mmほどで、若い果実は緑色をしていますが、後に黒く熟します。
スイカズラの面白い特徴としては、
葉の根本から花が2個ずつ並んで咲き、夕方から甘い香りが漂わせます。
つぼみは薄紅色で、咲き始めの花は白色をしていますが、受粉するなどして徐々にクリーム色から黄色になります。そのため一つの枝に白い花と黄色い花が同居する事が多い様です。
スイカズラは、金銀花、ミツバナ、スイバナなどとも呼ばれ、英名はジャパニーズハニーサックルと言います。中国名は忍冬(ニンドウ)と呼ばれます。園芸種なども含めて、ハニーサックルと一般には呼ばれています。ヨーロッパで品種改良されたものは、オレンジやピンクの花があります。
日本では比較的、他のつる性植物に比べて穏やかに繁茂してゆくのですが、
帰化したアメリカやヨーロッパでは畑や森林で繁茂し、有害植物になっているそうです。
薬用にもなります。
棒状の蕾は金銀花(きんぎんか)という生薬。秋から冬の間の茎葉は、忍冬(にんどう)・忍冬藤(にんどうとう)という生薬で、ともに利尿や健胃、解熱作用、浄血作用があるとされています。
金銀花にする花は春の開花前の蕾が良いそうで、日乾燥させます。また忍冬は、葉がついたままの茎を花期から盛夏までに切り取り、水洗い後1 cmほどに刻んで日干しするようです。
食用になります。
新芽や若葉は山菜として食用になります。摘み取って、軽く茹でたあと水にさらして下処理をした後、お浸し・和え物・油炒めに利用されます。
葉は日陰で 3 ~ 4日 ほど陰干し後に、乾炒りしてお茶がわりに、花はそのまま酢の物やリカー漬けして楽しむ事もできます。
三河から徳川家康公が浜松城に入城する元亀元年1570年、スイカズラを日本酒に漬け込んだ「忍冬酒」を醸し、家康公に献上したところ大いに喜ばれたそうです。江戸時代になると国学者である賀茂真淵も愛飲し、浜松の名産品にまで発展したそうです。
薬効を期待した薬味酒としての忍冬酒は、基本的に葉と茎を利用して作られます。これを米や米麹と本みりんに漬けこみ、エキスを抽出します。
徳川家康が愛飲した忍冬酒に、花や蕾が漬け込まれたのは不明。
今ではいわゆる、いろいろなお酒に花も含めて漬け込んだものを「忍冬酒」とか「ロニセラ酒」と広く呼ばれている様です。
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