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【週末投稿】つれづれ有用植物#154(レンプクソウ科ガマズミ属:ガマズミ)
秋になりますと、赤い実を付ける木々が目につきます。
赤い実は鳥が好んで食べますが人も同じで、愛でるだけではなく何かに利用出来ないものかと、試し、その知識や知恵が今に活かされています。
赤い実はいろいろな種の木にありますが、有用なものから、毒が有るものまで有りますから注意が必要になります。
また食べるにしても、「美味しく利用できる」、「とりあえず利用できる」という人の味覚に左右されるものから、「まずい」というおそらく万人共通の分類もあると思います。
ガマズミは落葉広葉樹で、北海道の南西部から九州までの山野に自生します。樹高は3mくらいまで伸びます。
従来は「スイカズラ科」に分類されていましたが、分類体系である「APG 分類体系」ではレンプクソウ科にまとめられました。
5~6月頃になると香りの良い白い花が咲き秋になると南天のような赤い実がなります。
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晩夏から秋にかけて3 ~ 5mm 程度の果実をつけ、食用となります。果実は赤く熟し、最終的に晩秋の頃に表面に白っぽい粉をふきます。
この時期がもっとも美味しい時期と言われています。
冬になっても、赤い果実が残っていることがあります。
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■観賞用として利用される
丈夫で枝葉が分岐し樹形良く、春の白く香り豊かな花で、夏頃から紅い実を付け、秋には紅葉にもなるこの木は、観賞用として庭木としても利用されます。
鑑賞用に「ビバーナム」というものがあります。
名前はガマズミ属の学名ですが、園芸的にはガマズミやオオデマリなど日本に分布する種を除く、外国産ガマズミ属の樹木を指すのが一般的です。
主に地中海地方原産のビバーナム・ティヌス種(Viburnum tinus)と、中国原産のビバーナム・ダビディ種(Viburnum davidii)との事です。
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■束ねる材料として利用された
枝は柔らかく折れにくいので、昔から何かを束ねる時に使われたそうです。枝をよって縄をつくり、刈柴などを手際よくまとめる為に利用されました。
■実を利用する
昔、青森県三戸地方では獲物を求めて一日中歩き回る「マタギ」たちが、山中で食べるものがなくなるとガマズミを探し出して口にし、身体を休めたと言われています。実は酸っぱく、酸味を好まない人は生食として食べるのは厳しいですが、好きな方もいらっしゃる様です。
実はポリフェノールの一種であるアントシアニンを数種類含んでいます。この量は赤ワインと同じくらいであると言われており、ジュースやキャンディ、酢、ポン酢、果実酒、ジャム、ゼリー、「ジョミ」というガマズミ100%果汁の健康ドリンクなどに商品化されています。
大根の「赤漬け」は長野県戸隠村では、酸味がついた大根漬けとして利用されます。
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実は葉が落ちた12月頃に採ると良いでしょう。この時期になると、程よい酸っぱさとなります。さらに1月になると、水分がなくなり、ドライフルーツのようになります。酸っぱさも少なくなりますが、噛み応えを楽しむことができます。
実には小さな種が入っているのでジャムにするには裏ごしが必要になります。一番簡単な利用方法としては、ホワイトリカーと砂糖に実を漬けておき、果実酒に加工すると長期間の保存も可能です。
★ガマズミ属の植物たち
他のガマズミ属の植物たちの特徴を簡単にまとめました。
・サンゴジュ
秋に真っ赤に熟す果実が柄まで赤いので、この姿をサンゴに見立てたのが由来となっています。厚く水分の多い葉や枝は、火をつけても泡をふくばかりで燃えにくい特徴があり、防火・防風・防音の機能を有する樹種(防火樹・防風樹・防音樹)としても知られています。実は食べられるのか否かは、私が調べた範囲だと文献がみあたりませんでした。
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・ハクサンボク
葉は大きく、ガマズミと異なり光沢があります。花は白くて小さく、秋に赤い実がなります。果実は食べることができ、秋の頃は酸味があるりますが、冬に向け甘くなります。冬に紅葉します。
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・カンボク
材は白色で香気があり、日本では楊枝や房楊枝の材料として使われてきたそうです。また枝葉を煎じた液は止血効果があるとされ、切り傷や打ち身を洗う民間薬として利用されてきたそうです。
寒さに強く、本州の中部以北で自生し、実をつけたまま越冬するので小動物の貴重な食糧減になっています。
果実は、毒ではありませんがとても不味い為、食用には適さないでしょう。
■併せて読みたい(Let's Green LIfe)
・雑木林を彩るガマズミ、果物、着色、手芸いろいろ。
・園芸改良でより美しく。ビバーナム(ガマズミ)。
・防風、防火、防音樹として利用される、赤い実のサンゴジュ。
・白い花、実は赤く美しいが不味い。生き残りの戦略。カンボク。